第65話 雪の長老
お待たせ致しましたー
「…………は、はじめ……ま、して」
ザックさん達が、きっと朝ご飯を食べずに……お店のどこかでごろ寝してるだろうと気づいたのは……翌日の早朝になってから。
なんだかんだ、疲れてクレハと爆睡してしまっていたのだ。
ただ、お店にクレハと急いで行くと……入り口で、白い人が立っていた。後ろ姿だけでも、もの凄い美人さんとわかるくらい! 一瞬美女神様かと思ったけど……あの人は綺麗な黒髪だったから、違うとわかった。
で、声かけたら……かなり緊張しているのか、おどおどと挨拶をしてくれた。
顔は、髪が結構長いので……よく見えない。けど、声でやっぱり女性だとはわかった。
「おん。雪の長老やないかぁ?」
「へ? 長老……様?」
クレハの言葉に、思わずびっくりしてしまう。
だって、声だけだと私達とそんなに変わらないトーンなのに……長老おじいちゃんのようなしわがれたものじゃないもん!
あ、けど。髪が真っ白だから……逆に結構お年なのかな?
「は……はい! わ……若手……ですが。雪……のちょ、長老です。ネコマタの……長老、から……お、お話は……聞いて、います」
緊張なのか、もともとの話し方がこうなのか……随分とゆっくりと、もどかしいしゃべり方だ。だからって、それだけで相手の印象を決めつけちゃいけないけど。
「はじめまして、ヒロと申します。こちらで、今度料理屋の店主をさせていただく者です」
「……は、はい。わ、私……は、ユキ、トと」
「……名前でお呼びしても?」
「そ、その……長老でも……まだ、せ、千年しか……生きて、ないので」
いや、十分高齢過ぎるけど。
でも、クレハの正確な年齢も知らないし……これがモンスターとかでは普通なのかな?
ユキトさんは……見た印象もだけど、だいたい二十か三十くらいの年齢層に思えた。
「にゃぁ。おじぃと来んと先に来たん?」
「は……い。その……い、良い匂いが……昨日からしたので」
「良い匂いですか?」
焼肉丼はここでは披露してないし……あとは、卵焼きとか?
卵焼きの匂いは結構淡いのに……と思ってから、思い出した。この女性は人間じゃなくてモンスター。だったら、クレハと同じように嗅覚に優れている。
それなら、卵焼きの匂いも遠くにいたってわかるはずだ。
「か……芳しくて……ね、ネコマタの長老から、お……お話を聞いて、気に……なったんです。来て……みたいと」
「極度の恥ずかしがり屋の、あんさんがよー来たなあ?」
「…………は、はい」
「そうですか。とりあえず、中に入りませんか? 朝ご飯、これから中にいる人達の分も作るんで」
「! い、いん……ですか?」
「もちろんです」
長老おじいちゃん以外で、初めてのお客様かもしれないわ。
まだ金銭を得るわけじゃないけど……クレハの接客練習も兼ねてなら、知っている相手が居たら気が楽かもしれない。
中を開ければ……隅の方で、ザックさんとスインドさんが毛布にくるまって眠っていたわ。




