第64話 こっちは自覚
色々あり過ぎた。
だが……どれもが、新鮮な気持ちになれるほど……良き出来事ばかりだった。
「……んでぇ? スイ」
ヒロ達をひと休みさせるのに、彼女にはクレハの家で休んでもらっている間。
俺は、古馴染みのザックと……ヒロの店で改装作業をしていたのだが。
ザックが、ひと段落してから……俺に詰め寄ってきたのだ。
「……なんだ」
「なーんだ、じゃなぁい! おっ前、わかってんのぉ? いんや……わかってないかもねぇ?」
「……だから、何をだ?」
変に含みを感じる言い方はよして欲しい。
逆に、こいつに見透かされていると言うことは……嫌な予感しかしない!
俺が返事をすると、奴は『ニタァ』と音が聞こえそうな、変な笑顔になった。
「おっ前……ヒロ、気にかけているんじゃなぁい?」
「……普通じゃないか? 異世界の人間であるし」
「そぉじゃなぁい!!」
魔導具の、細いステッキを俺に向けて……左右に軽く振った。だが、俺はこいつの言っている意味がわからなかったのだ。
ヒロほど、興味深い人間の事を気にかけるのは当然じゃないのか?
「……わかりやすく言え」
「んじゃ、言うけどぉ。……………………ヒロんこと、好きじゃねぇの?」
「…………は?」
好き嫌いで言うなら、当然、好きの部類にはなるが。
もったいぶって、ザックが言うのだから……それだけじゃないはず。
つまり……だ。
俺が、ヒロに……敬愛以上の感情を抱いているかもしれないと、こいつは言いたいのだ。
そこに行き着くと……顔が変に熱を帯びるのを感じた!?
「あっはっは!? 無表情ばっかのスイが慌ててるぅ!!」
ザックは腹を抱えて笑い出したが……俺はそれどころじゃなかった。
俺は……まさか。
大柄な自分よりも……華奢で、外見は少し子供寄りだが。
実は俺達と同年の……あの女性のことを。
まだ出会って二日目であるのに……思慕を抱いた??
そんなまさか!? と頭を抱えた俺に……ザックはステッキで軽く肩を叩いてきた。
「…………まさか」
「まさかのまさか。本気の本気じゃん? あん子が、すげー人間だと知っても……俺を紹介してくれたんだろぉ? 俺の性格知っててぇ、ヒロの役に立ちたいと思ったんなら……それこそ、本気じゃね?」
「…………」
ザックの言う通りだ。
その言葉を踏まえて……改めて、ヒロの嬉しそうな顔を思い出してみれば。
胸の奥に……異常な熱さを感じた。
つまりは……本気で、出会ったばかりの……しかも、異世界から来た女性に。
俺は……どうやら、一目惚れと言うものをしてしまったらしい!?
次回はまた明日〜




