第62話 必要なこと
「さっきも聞いたけど〜、メニュー決めって大事なん?」
「じゃあ、クレハに質問」
「おん?」
「何を食べたいか……頼むのに、既にわかっているものがある方が便利だと思わない?」
「……にゃぁ。食いたいもんぅ?」
「クレハは先に知っているけど。逆に知らない相手は何を頼めばいいのかわからないでしょう?」
「……せやな」
納得してくれたのか、クレハもうんうんと首を縦に振ってくれたわ。
「ヒロはぁ、こっちの文字書けんのー?」
「はい。そこは大丈夫でした」
「じゃ、そこはいいけど……絵は?」
「絵、ですか?」
「にゃー?」
いきなり、ザックさんに聞かれた意味がわからなかったけど……少し考えてみると、思い当たることがひとつ出来たわ。
「字を読めない、モンスターが多いからかも……?」
「そうそう。人間も一部はあるけどぉ、クレハ以外で読めるモンスター……きっと少ないと思うよー」
うっかりしていた。
クレハや長老おじいちゃんが文字を読めることが出来るから……モンスターにも文字は通用するとは思っていたところで、この事実。
だけど、私にはひとつ問題があった。
「……絵心、全然ないんですよね」
自他ともに認めるくらい……日本では、絵が全くと言っていいくらい描けないのだ。全部、悪筆並みに酷いものしか出来上がらないのである。
「えー? 見せて見せてぇ?」
一応言ったのに、やってみせろと言わんばかりに……ザックさんが紙とペンを出してきたので。
仕方がない……と、テーブルに置かれたそれを手に取り、実際に描いてみたのだが。
「……にゃぁ」
「これは……」
「あー……ごめんぅ。これは、ねぇ?」
一応、卵焼きを描いたつもりなのだが……どう見ても、なにかのモンスターぽいものしか出来上がらなかった。
治った利き腕で描いても……これは直らないのね!? 美女神様!!
「……見ての通りです」
「んじゃ、俺描くよぉ。それを複写して、木の板とかに貼り付ければいいし」
「こ、コピー出来るんですか!?」
「職人なら扱える魔法だけどねぇ?」
なんでもありだな、魔法って。
私は……出来るのだろうか?
異世界に飛ばされたら、なんちゃら〜とかあるけど。料理の腕が戻った以上に感心の余地がなかったわ。絵心は全然ダメだけど。
「えっと……まずは、お客さんにこう言うものがあるとだけ。って言うのが良いですよね?」
「そうだな? 下手に品数が多過ぎるのも良くない」
「にゃぁ。焼肉ドンがあちきは好きやわぁ」
「うーん……一応小料理屋なんだけど。いっか?」
主軸は決まっていても、まずは人間相手じゃないし。
どんな料理を作れるか……お客さんであるモンスターには知って欲しい。
なので、絵をザックさんに描いてもらうのに……まずは数種類、料理を作ることにしたわ!
次回はまた明日〜




