第60話 青い卵焼き②
クレハに再三の注意をしてから、私も食べることにしたわ。
スインドさんとザックさんと同じタイミングにフォークを刺し、持ち上げた感触はやっぱり『卵焼き』。
薄青って異色過ぎるけど、味は高級食材であり……日本で言う烏骨鶏くらいの味わいだとわかってるから、遠慮なく口に運んだ。
「「「んん!?」」」
ほんの少し冷めたことで食べやすくなったが……味が、味が濃い!?
二種類の調味料以外は……私の拙い焼き加減で仕上げた卵焼きだけど。
ふんわりした卵の層が、歯で噛むと適度にほぐれ……そこから旨みや塩気などが口いっぱいに広がっていく!!
卵本来の、濃厚な旨みやクセはあるけど……これ、出汁がうまく出来たら……立派なだし巻き卵が作れるくらいの美味しさだわ!!
あと、茶碗蒸しに親子丼とかも!!
「うんめぇ!?」
「……火を通すだけで、ここまで美味いとは」
「俺これ好きぃ。ヒロ〜、凄いねぇ?」
「いえいえ。素材がいいからですよ」
師匠達の匠の技には、到底及ばない。
そこはまだ……自画自賛するには到底早いのだから。
首を横に振ると、ザックさんは気を良くしたのか……にんまりと笑顔になったけど。
「ほんと。看板とかぁ、作り甲斐あったよぉー。あ、そろそろ見てくれるぅ?」
「あ、そうですね?」
せっかくなので、全員で表に出て見にいくことにした。
玄関の外には……普通の長方形の板ではなく、不規則な凹みなどを一枚の板にした木の板が地面に置かれていたわ。
「こーんな感じぃ」
ザックさんがそれに指を向ければ……こちらの世界の文字だけど、ちゃんと『小料理屋ヒロ』って読めたわ!!
私の……お店の看板だわ!!
炙り加工もしたのか、文字の部分だけカッコよく黒くなっている! 彫ったところの陰影がすっごくいい!!
「ありがとうございます!! かっこいい!!」
「へへーん! 美味い料理くれたから、気合い入ったよぉ!」
「……ほぉ? 良き腕前じゃな?」
「……ども」
私にはちょっと鼻高々に答えたけど……長老おじいちゃんにはかしこまってた。まあ、生きた年数違い過ぎるから、敬意の質が変わるのは仕方ないか。
とりあえず、看板は設置することになり……ザックさんが指揮棒で浮かせたら、既に作っていたはめる箇所の凹みにドッキングさせたわ。
「……お店。私の……」
まだまだ営業はすぐに出来ないけど。
でも……でも!
ちゃんとした建物に、自分の名前がある看板が出来たのだ!!
また一歩、前進出来たのよね!
次は、営業するために……仕入れ先の確保やメニュー決めをしなくちゃ!!
次回はまた明日〜




