第59話 青い卵焼き①
お待たせ致しましたー
白身と黄……青身? をしっかり混ぜて。
そこに、醤油とみりんを入れて数回混ぜて。
卵焼き用のフライパンはないが、小ぶりなフライパンはスインドさんのお店で購入したから……これで大丈夫だと思う。
けど、ヘラはないし木ベラじゃ形を崩しちゃうから……菜箸で頑張るしかない。
メンチカツを揚げたのとは違う油を……フライパンに多めに流して、釜戸の火は少し弱めに。みりん入れているから、少し焦がしやすいのよね?
これは……いつか作りたい、『かえし』でも同じようになっちゃうから。
菜箸で混ぜ具合を確認して、次に先端につけた卵液を……フライパンでじゅっと音を立たせて、線を引くように動かす。すぐに卵液に火が通って、薄い青色の線が出来た。
「一気に入れるのではなく……少量をクレープの時のように流しては広げて」
気泡が出来たら、菜箸でつついて潰して。
火が通り過ぎないところで、くるくると巻いていく。
そして、上に寄せたら……油を軽く敷いて、隙間にまた卵液。キッチンペーパーとかがないから、ちょっと雑になるかもだけど……そこはご愛嬌。
どんどんどんどん巻いて……卵液が無くなるまで繰り返したら。
ちょっと丸っこいフォルムの……薄青色の卵焼きである棒が出来上がった。
「……これが、卵焼き?」
「切って断面を見ますね?」
スッと切れた感触が心地良い。
断面は、白と薄青のコントラストが美しい仕上がりになっていたわ!
「……美しい」
スインドさんには、どうやら気に入ってもらえたようだ。
「ヒロ! めっちゃいい匂いすんねんけど!? おじぃにはよ持ってきてや!」
「はいはーい!」
たしかに、卵焼きは出来立てが美味しいもの。
人数分のフォークと取り皿などを、スインドさんと手分けして運び……クレハ達がいるテーブルの上に置いたら、『おお!?』と声が上がったわ。
「へぇ? きれーじゃぁん?」
「ヒロ、卵を焼いたん?」
「ふぅむ。……美しい層じゃのぉ?」
「これは、名前はそのままですが……卵焼きと言います」
味見はしてないけど……端の不恰好な部分も全部載せたしね? 味は……大丈夫だと思うけど、長老おじいちゃんはどうだろうか?
と、彼を見たら……フォークで既に刺して口に運ぼうとしていた!?
どんなけ、お腹空いていたの!?
「ううむ!?」
ひと口で頬張り、ほふほふと言っていたけれど。
目尻が緩んでいく様子を見て……私はほっと出来たわ。
「にゃ〜! ちょっと甘いんやけど、ええ塩気もあるわぁ! メンチカツとはちゃうふんわりかげ」
「クレハ?」
ほっとしそうになったが、クレハが爆食いしそうだったので……すぐに注意すると、びっくりして猫耳をたたんだわ。




