第58話 長老がっかり
「……儂にはないんじゃと!?」
メンチカツを堪能してから、少し後に。
お店のだいたいが出来上がったことを、長老おじいちゃんに知らせるのに……クレハが例の移動魔法でおじいちゃんを連れてきたんだけど。
鼻がいいので、油の香りと香ばしい匂いに何か食べれるかと思った長老おじいちゃんに……材料がないことを告げたら、獣人姿のまま、その場で『orz』のポーズになっちゃった。
それほど、残念に思ってくれたのは嬉しいが。
「……すみません。美味し過ぎて、全員で食べちゃって」
卵の方はまだまだあるけど……メンチカツのタネとかパン粉は、全部使ってしまったのだ。全員が夢中になっちゃって……ソース無しでも美味しかったが、醤油であるサイシをかけただけでもいけるとわかると……おかわり合戦になってしまい。
なので、つい……材料のほとんどを使い切ってしまったのだ。
「……はよう、呼ばぬか!? クレハも!!」
「せやかて、美味かったんやで〜? あ〜〜、もっと食いたいわぁ!」
「ひとつ……ひとつだけでも!?」
「……すみません。時間かかっていいなら、作れなくないですが」
「…………どれくらいじゃ?」
「えーっと……一時間は」
「待てんわ!!」
ですよねぇ? とここは苦笑いしか出来ないわ。
だから……代わりに、とひとつ提案したいものがあるのだ!
「長老様。ひとつ、提案が」
「……なんじゃ」
「樹木ルリカの卵はまだたっぷりありますので……別の美味しい料理を作らせてください。それはすぐに出来ると思います」
「やってみせよ!」
と言うことで、ザックさんとクレハも長老おじいちゃんと一緒にテーブル席で待っててもらうことに。
スインドさんは、調味料の使い方が気になるからと私と一緒に。
卵液だが、殻に入れたままだと衛生的によろしくないと思うので……大半はクレハの魔法使い収納の中に、殻に入れたまま仕舞い込んでもらった。使う時だけ、卵液を玉の状態で取り出せると言うから……魔法様様、クレハ様様だ。
「お出汁があればいいんですが……今回はシンプルに醤油とみりんで味付けします」
「……興味深いな?」
「卵自体の味が濃いので、風味を壊さないように気をつけます」
「……味の想像が出来ん」
「ちょっとだけ、甘いものです。これを油を使って焼きます」
「……卵を焼くのか。ヒロの料理を知るまで、わからなかったが」
「……卵も基本生なんですか?」
「裕福な階層だとそうだと聞く」
「……うーん」
それだと、お米の炊き方がわかったし……『卵かけご飯』もありかも? 醤油の味もほとんど似ているから、合わなくないと思う。
是非とも、近いうちに食べようと決めたわ。
とりあえず、今は卵焼きを作らなくちゃ!
次回はまた明日〜




