第57話 ボア肉のメンチカツ③
お待たせ致しましたー
菜箸で、油の温度をだいたい確かめて。
タネを……そっと鍋肌に滑らせて、油の中に沈めていく。
途端、私には馴染みのある……揚げ物特有の爆ぜ方が、全員をビビらせてしまって、全員私から距離を置いちゃった!?
「な、なんなん!?」
「ば、爆破!?」
「大丈夫か!? ヒロ!!?」
三者三様とは日本でもあったが、反応が見ていて飽きないわ。
「大丈夫ですよ? こうやって、油の中に入れて火を通すんです。爆ぜるのも、ほら、だいぶ落ち着いてきましたし」
「……にゃぁ?」
代表してクレハが来てくれたんだけど、鍋を除いてもまだ『ひっ』とか声を上げたわ。
「大丈夫よ? これで美味しくなるの」
「……ほんまなん?」
「サクサク、カリカリの衣に……肉汁たっぷりのジューシーなお肉と出会えるわ!」
「……サクサクってなんなん?」
「……本当に、今まで生食だったんだね」
野菜も苦手にしていたからか、クレハの食事事情って本当に動物と同じだ。もともとがアヤカシって種族のモンスターだって言うのもあるし。
とりあえず、菜箸でひとつだけ沈めたメンチカツもタネを上下にひっくり返しながら……丁寧に揚げていき。
いい感じにキツネ色……じゃなく、烏骨鶏の卵の殻の色合いに近い……不思議な青色の揚げ物が出来上がったわ。
「にゃー? これなん? アゲモノ?」
「多分大丈夫だと思うけど。これは、『メンチカツ』って種類」
「メンチカツ?」
「スインドさんに叩いてもらった、ボアの肉をひき肉って状態にしたの。それを皆で仕上げてくれたのを、揚げたらこうなるわ!」
「ほへー?」
「とりあえず……味見も兼ねて試食しましょう」
他男性二人は……出来上がったメンチカツに興味は持っているようだけど、色合いが色合いなので……すぐに食べたいとは言ってくれなかった。
卵自体が高級食材だから、クレハが買ってこなきゃ……チルットとかじゃ口にしてなかったと思うわ。
もしくは……食べ方が全然違うかもしれない。
新鮮な卵であれば……たしか、調理でも生で食べられるのは、ジビエ系でもスッポン料理であるから。
とは言え、真っ青な卵は私も初対面ではあるけど!?
まな板の上に乗せ、菜箸と普通の包丁で等分にして。
中のお肉にしっかり火が通っているのを確認してから……誰も食べようとしないので、私が代表して、菜箸を使って口に運んだ!
……サクッ。
馴染みのある……パン粉がからりと揚がった食感。
続いて、味付けは塩胡椒以外に少量の醤油を入れた……クレハがこねてくれたミンチがふんわりしていて。
肉汁はどんどんあふれてくるわ!!
玉ねぎことポルネギの甘味もすっごくいい!! これは……市販のコンビニパンにあるような、キャベツを入れればさらにボリュームが高くなるかも!?
臭み消しに、生姜とかニンニクを入れた方がいいかもと考えたけど……適度なクセがある以外、最初の捌きと収納への時間停止で腐敗が進んでないから気にならない!!
ひとつじゃ足りないわ……。
いくらでも食べたい!!
卵の味も……何回か師匠に食べさせてもらった、烏骨鶏の卵の味そっくりだわ!! これは……色はともかく、だし巻き卵とかにしたい!!
「……そ、そないに美味いん?」
私が味に浸っていると、クレハが恐る恐るって具合に聞いてきたわ。
「うん!! 絶対、クレハも好きだと思うわ!!」
「……ほな」
まだ少し熱い切れ端をひょいとつまんで、自分の口に入れたら。
ほふほふしてたけど……すぐに、恍惚って表現が似合うくらいの蕩けた表情になったわ!
それを見ていた、スインドさん達もこっちに来てくれて……同じように、口に入れてくれた!!




