第56話 ボア肉のメンチカツ②
「「おおお!!」」
思わず、クレハとパチパチって拍手してしまう!
けど、クレハから見てもザックさんの捌き方は驚くんだ? じゃあ……クレハが乱暴にせっかくの卵を割ってたら悲惨な状態になっていたかも。
お店の内装も出来たばっかりなのに、大掃除はご勘弁願いたい!!
「こーんなとこぉ? ヒロ、ちょっとこっちこっち」
来い来いと手招きしてきたので……ザックさんのとこに近づくと。指揮棒をひょいと動かして……私を浮かせてくれた!?
いきなりでびっくりしたけど、クレハの時よりゆっくりめだったから……慌てずに、上へ上へと卵の割れた箇所まで上昇していく。
覗き込んでみると……水のようでそうでない、透明な液体の中心に……丸くて大きな『何か』が沈んでいた。
木の実の灯りは、クレハとザックさんが内装にも適度に配置してくれたが……光量が足りずに中がよく見えない。もっと、灯りが欲しかったわ。
「……中央の部分がよく見えないです」
「ほいほーい。ちょいと待ってぇ?」
少し下で、ザックさんがまた指揮棒を振ったのか……急に上の方が明るくなった。そっちを見ると……電球ではないが、頭くらいの大きさの光が出来ていたわ。お陰で、白身の部分がよく見えたので……黄身も見えたんだけど!?
「……青?!」
黄身の色が……殻くらい綺麗な真っ青だったのだ!?
食欲激減以上に……綺麗だけど、これを生のまま食べるのが……モンスターだと普通? いや、人間じゃないし普通か?
「普通やろ?」
「違うのか?」
「青以外だとぉ、緑もでしょー?」
異世界食事情……ピンクのお米がある以上に、色違いの食材があって当然らしい。
「赤っぽいとか、薄い黄色はありますけど……私のいたとこは、基本的に濃い黄色なんです」
「そうなん?」
「へぇ? 面白ーい」
「……料理には不向きか?」
「いえ、何とかしてみせます!」
せっかくの高級食材を無駄にしたくない!!
ただ、取り出すのはこのサイズだと普通のボウルじゃ入らないので……殻が丈夫だから、クレハやザックさんの魔法を借りて中で撹拌してもらい、必要な分だけをボウルに入れてもらうが。
綺麗な瑠璃色だけど……こんな卵液、ファンタジー世界ならではの代物ね?
「これ、どう使うん?」
「焼くんじゃなくて、『揚げ物』って料理に使うの」
「「アゲモノ??」」
ザックさんもわからないようなので……やっぱり、こっちの世界じゃ『焼く』か『茹でる』以外じゃ、『そのまま』が普通らしいわ。
なので、実際に見せた方が早いだろうと……二人にも手を洗ってもらってから作業に加わってもらう。看板は後で見ることにした。
疲れてはいるが、成果を見てもらうよりお昼ご飯の時のような空腹が……また二人から聞こえてきたので。
「クレハは、このお肉にポルネギ刻んだのをこねて?」
「こねるって??」
「混ぜるんだけど、手でしっかりと具材を馴染ませるの。重要よ?」
手本を一回見せたあとは、面白いと思ったのか……しっかりとこねこねしてくれたわ。
ザックさんには、小麦粉を振るうのを。
スインドさんには、油の火加減を見守ってもらう。初めての油料理で……鉄鍋の半分も入っている油の量を見たのは、私以外全員の目が点になったわ。メンチカツがどんなものか説明した時は、唾を飲み込んだけど……。
「ヒロ〜! こないでええんかー?」
「こっちも粉出来たぁ」
「……油が爆ぜてきたが」
「はいはーい。じゃ、そろそろ揚げるために」
クレハがこねたタネを、薄いコロッケのように全員で形作るのだ。いびつになったのも面白いが……衣をつけにくいので、私が最後に整えた。
そして、いよいよ衣の部分だけど……青い卵液をつけるのに、少し勇気がいった。
薬品のように見えるそれを……粉をまぶしたタネの周りにつけたが。最後にパン粉をまぶした時に、少し綺麗に見えたのだ。
次回はまた明日〜




