第55話 卵の価値とか
お待たせ致しましたー
「なんやて、ヒロ!?」
様子を見に来たのか、クレハがババーンと登場してきたのだ。
「クレハ? 終わったの?」
「おん。ザックが見に来て欲しい言ったんよ。設置する前に確認して欲しいんやと。って、そうやない!?」
ツッコミがこっちの世界にもあったのか、クレハは『なんでやねん』って私の前で手を振ったわ。
「? そうじゃない?」
「卵や! 卵が必要なん!?」
「え、うん、出来れば……だけど」
どこから聞いていたのかな? だけど……この様子だと何か心あたりでもあるのか? もしそうなら、期待が高まっていく!!
「卵やったら、そのまま食う奴らが屋台で売り買いしとるで? まあ、ちぃっと高いけんど」
「え!? あるの!?」
「……卵を主食とする魔物やモンスターはいると聞くが」
「せや! あちきが買ってくるで! どんくらい必要なん?」
「……えーっと」
「とりあえず一つでいいはずだ」
個数を決めようとしたら、スインドさんから指摘が入ったのだ。
「え? でも……一個じゃ」
「……見ればわかる。クレハ、それだけ頼む」
「ええよー。ほな、行ってくるわ!!」
と言って、獣人姿のまま……ジェットコースター移動をささっとしたクレハは。
数分後に、また同じようなスピードで戻ってきたわ!? 速すぎて、本当に買ってきたかどうかは……と思ったが、魔法使い収納から両手で取り出したのは!!
「……言った通りだろう?」
「……………………そうですね」
思わず、ひくってなるくらい……スインドさんの言ってた意味がよーくわかった。
鶏サイズとかの卵じゃなくて……ダチョウも度肝を抜くくらいの……クレハが両手で一生懸命持ち上げられるくらいの、めちゃくちゃ大きい卵だったから!?
あと色も瑠璃色に斑点模様って何!?
「これでええのん??」
「……充分だ」
「……どう、割るんですか?」
「……俺もあまり扱ったことはないが。たしか、木槌などで割ると聞く」
「あちきが一発ぶちかまそうか?」
「中身がダメになる!?」
「そないに阿呆なことせんわぁ!!」
「なになにぃ?」
ぎゃーぎゃー言い合っていると、ザックさんがこっちに来てくれたのだ。
あ、そう言えば呼ばれていたの忘れてたわ……。
「……器用さなら、ザックに頼めばいいな?」
「へ?」
「そうです! これ、綺麗に割ってくれませんか!?」
私が何かのモンスターの卵に、クレハを押さえながらお願いをすれば……ザックさんは、また機嫌良さそうに口笛を吹いたのだった。
「へぇ? 樹木ルリカの卵じゃぁん? 質も良さそうぉ」
「……モンスター、ですか?」
「そそ。人間には凶暴になるけどぉ、アヤカシとかの魔物相手になら対価次第じゃ無精卵を提供してるって、俺は聞いたことあるけどぉ」
「せやな? その一部やでぇ?」
「これ使うの? ヒロ?」
「はい。ちょっとしたおやつに……揚げ物って言うのを作るんです」
「……何それぇ?」
「とっても美味しいものです!」
「んじゃ、それなら!!」
と、収納から取り出した……例の指揮棒を使って。
まるで、剣のように持ったかと思えば……床を蹴って、卵の上を薙いだ。
そこが、ぱかっと離れて……床に殻が落ちたんだけど、丈夫なのか割れなかった!?
なんか凄い!!




