第54話 ボア肉メンチカツ①
小料理屋だけど、客席などはこちらの世界に合わせて……酒場と言うより、カフェ風のテーブルや椅子。
カウンターとか、料理提供のところは厨房から見やすいように。
二階も造ってくれたザックさんは……本当に、私のお家も兼ねて、店を造ってくれたわ。
看板まで、クレハと協力して『ヒロの料理屋』って作ってくれたし。
看板は魔法を使わずに、工具を使ってそれらしい板に文字を彫っていくのは……さすが『職人!』と言いたくなったわ。
なので、ザックさん達が頑張ってくれている間に……私は私で、スインドさんと『おやつ』を作ることにしたわ。
「……菓子か?」
「半分お菓子みたいなのは、お昼で食べましたし。ここはひとつ、『揚げ物』と言うのを作ります」
「……あげもの?」
「…………油で調理することです」
「……焼くだけじゃないのか?」
「さらに美味しいものになります!」
材料は皆で協力して、業務用冷蔵庫に移してあるので……まずは材料のピックアップからだ!
ボア肉
ポルネギ
固めのパン
小麦粉
「……全く想像が出来ん」
「うーん。本当に揚げ物ないんですね? お芋って使います?」
「……茹でて、塩を振るだけだ」
「……蒸す方法は?」
「むす?」
「……今度、試食してください」
「それはもちろん」
拒否されないことが嬉しい。
同い年もだけど、気を許した人に喜んでもらえるんだもの。だから、気合を入れて作ろう……メンチカツを!!
スインドさんには、力仕事なので……肉を包丁でとにかく細かく叩いてもらうのをお願いした。なにに使うのかをすぐ聞かれたので。
「焼肉やサラダより、もっとふんわりした仕上がりにしたいんです」
「……想像が出来ん」
「一度知ったら、病みつき間違いなしですよ?」
「わかった」
クレハと似て……よっぽど、私が作った料理が気に入ってくれたのかな? イケメンの活力に貢献出来ているのなら嬉しいわ! 私は私で、ポルネギを刻んでから……さっき、ザックさんに即席で作ってもらった道具で!
「これで『パン粉』を作ります!」
「……パンコ?」
「小麦粉ほどではないですが……荒い粒状にしちゃうんです。パンを」
スインドさんが持っていたパンなんだけど、ちょうど固いものがあったから使わせてもらうことにした。普通だと、スープに浸して傘増しにするんだって。じゃあ、パングラタン的なのかな?
「……それが美味いのか?」
「実際に見せますね?」
スチールに似た鉄板に……私がお願いして、小さな突起が不規則に並んだギザギザしたのをつけてもらい。
そこに、固いパンを遠慮なく擦りつけていく。
数回擦ったら……さらさらしたパン粉が出来上がったわ!!
これを受け皿に、たっぷりになるようにためていく!!
「……粉、だな」
「これに小麦粉……あとは、卵があると最適なんですが。卵ってあります?」
「……なくはないが、高いぞ?」
「……高価なんですか?」
「ここいらの森なら……手に入らなくもないだろうが。危険を伴う。ボア以上に強い魔物の卵だからな。畜産などで得られるのも……数に限りがある。相場は、冷蔵庫くらいするな?」
「……なるほど」
では、今回は仕方ないから……卵無しのメンチカツを作るしかない。
次回はまた明日〜




