表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

50/108

第50話 自分の厨房

 しっくりくる。


 馴染むと言ってもいいだろうか?


 初めて使う厨房だと言うのに……自分がこれからここで仕事をする場となると、ただ立っている場所だけなのに……扱いやすいのだ。


 チルットから出発する前に、ちょっとだけザックさんから物差しで腰の高さとかは計られたが……それだけで、このような場所を作ってくれるだなんて。


 だから、気合を入れて料理を作ることにした。


 道具とかは、クレハの魔法使い収納から出して……だいたいを調理台や棚に仕舞っていく。その間にも作る料理の構想は練っていた。



(……お好み焼きは、材料が色々足りないし。たこ焼きは道具がないわ)



 粉物とは決めたけど……どんなのがいいか。馴染みのある日本食で作ろうにも、色々材料もだが時間もない。


 お好み焼きのソースは醤油で仕上げてもいいが、せっかくの粉物の最初はソースが美味しいと思う。自論だけど、ソースの方が絶対美味しいから。


 なら、他の粉物ときて手軽に食べられるとすれば。



(……クレープ!)



 和食とは程遠いが。


 生地だけなら……なんとかなるかもしれないわ。


 具材はおかずクレープにすれば、腹持ちにいいかも!


 そうと決まれば、と粉類とザルを手にした。



「……何しとるん、ヒロ?」



 空腹だけど、私の作業が気になったのかクレハがこっちにやってきたわ。


 私が粉類をふるいにかけているのを見て、不思議そうに覗き込んでいた。



「これをね? 生地って言うものにするの」


「きじ?」


「服じゃないわよ? リーガのように、主食みたいなのにするんだけど……どっちかと言えば、パンに近いわ」


「パン? なんなんそれ?」


「……パンも食べたことないの?」


「おん」



 スインドさん達の方を見ても、苦笑いされるだけだったわ。ただ、スインドさんが鞄……魔法鞄(マジックバック)って凄いの……から、ロールパンのようなものを出してくれた。それをクレハに見せても、彼女は首を傾げるだけ。



「……こう言うものだが」


「……なんや、その茶色いの」


「小麦で作った主食よ? ふんわりしていて美味しいの」


「ふんわり?」


「アヤカシだとぉ、ほとんど食わないだろうなあ? んで、ヒロは何作ってんのぉ?」


「パンではないんですが、薄く焼いた生地に……朝食べたようなお肉を包もうかと」


「うーん?」



 想像がつかないと言うことは、こっちにはパンはあっても『クレープ』はないかもしれない。もしくは、呼び名が違うと言う場合もあるわ。


 粉類をきめ細かくふるいにかけて、ボウルに……入れたところで卵がないのを思い出したけど、無いバージョンで作ってみるかと決めた。泡立て器がないので……不恰好だけど、菜箸を数本持って水を少しずつ入れながら混ぜていく。


 ねっとりから、とろーんとなったらとりあえず生地の完成だ。



「……このまま食うん?」


「……クレハ。違うから」



 お腹が限界なクレハは、お米の時と同じような質問をしてきた。


 そうじゃないと首を振ってから、彼女には釜戸の火をつけてもらうようにお願いしたわ。

次回はまた明日〜

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ