第49話 改装作業②
お待たせ致しましたー
ザックさんが指揮棒を振るたびに、さらに色んな道具が出てきた。
『揃え、揃え、揃え!』
釜戸以外にも、コンロにも使える調理台だったり……包丁などを扱う方の調理台とかも。
ひとつ……またひとつと増えていき、浮いてはどんどん……奥の方に配置されていく。
それらが、きちんと当てはまる場所へと……綺麗に並んで行くのだ。
「……すごい」
月並みな言葉だけど、それしか言えない。
魔法だろうけど……こんな風に楽しげに仕事をしていく『職人』さんもいるんだなって思えた。
「……ザックはほぼS級職人だからな?」
「え、S?」
スインドさんが口にしたランクは……おそらく、最高級のランクじゃないだろうか? ファンタジー知識が乏しい私でも、なんとなく凄いと思えた。
「にゃー? 伝説級やないけど、なかなかやないのん?」
「……実際は試験を受けていないだけだが」
「試験?」
「一定のランクに見合う経験値が伴えば……ランク上げの試験を受けることが出来る。ザックは……A級以上は面倒だと言っていてな」
「……いいんですか?」
「いーんだよぉ?」
私達が話している間に、設置などが終わったのか……ザックさんが肩をゴキゴキ言わせながら、こっちに来たのだ。
「……終わったか?」
「とりあえずぅ、厨房だけにしといたー。ヒロ、確認よろしくぅ!」
「あ、はい! ありがとうございます!」
「あちきも見る〜!」
選手交代とばかりに、厨房となったスペースに向かう。
そこは……何もなかった場所ではなくなっていた。
釜戸が。
調理台が。
換気口が。
収納棚まで!
なんと、業務用冷蔵庫まで揃っていたのだ!!
「す……っごい!」
「にゃー。あのギルドより凄いにゃー? スインドんとこで買った冷蔵庫……どないするん?」
「それは、家用にしよう」
なくて困らないもの以上に、生活必需品だもの!
考えたら……まだ私、自分のお家持ってないもんね?
くまなく点検していくと、より良いものだと実感出来て……早く、ここで料理をしたい気持ちが高まっていく。
とここで、
ぐぎゅるぅうううううううう
ぐぅうううううううううううう
きゅぅううううううううううう
三方向から、お腹の虫の音が聞こえてきたわ。
「……あー」
「……腹が」
「……にゃぁ」
どうやら、朝の丼もの以降もほとんど食べてきていないので……皆お腹が空いてしまったようだ。
聞こえた後に、私の方からも『キュル』っと音がしたので……これは、とお昼ご飯を作ろうと決めたわ。
「んー……米も使いたいけど、手軽がいいだろうし」
小麦粉や米粉も、スインドさんのお店でとりあえず買えたから……ここはひとつ!
粉物を作ってみようと決めた!!




