第46話 言えることとか
「う……美味!? めちゃくちゃ美味い!!」
翌日、アヤカシの里に戻る日となったのだが。
ザックさんに……一度、ジビエ料理と言うか私の料理を食べてもらった方が良いとスインドさんが言ったので。
朝も同じものになったが……ザックさんをスインドさんの家に呼んで、私が焼き肉丼を振る舞ったのだ。
朝からガッツリご飯だけど、ザックさんは食べ方がわかれば……どんどんかっこんでいくわ。実に気持ちのいい食べっぷりだ。
「せやろ? ヒロの料理は美味いねん!」
クレハはクレハで、まるで自分のことのように喜んでくれた。ちょっとだけ……こそばゆいわ。
「……うん。まーじで、美味い! こりゃ〜、アヤカシが認めるのもわかる」
米粒ひとつ残さず、ザックさんは器の中身を綺麗に食べてくれた。見習いの料理でも……やっぱり完食してくれたのは嬉しいわ!
「……ありがとうございます。お口に合ったようで何よりです」
「ほーんと、美味いよー。けど〜……アヤカシの里でか。俺ぇ、通っていいなら通おうかなぁ?」
「あんさんの腕前次第やんな? ザック」
「……うーん。ま、手は抜かねぇけどぉ」
タレ目には、やる気が満ち溢れていたわ。その活力となる料理になったのであれば……嬉しいことこの上ないわ。
けど、ザックさんには私がまだ異世界から来た人間だとは……言うことは出来ない。
スインドさんとも出会ったばかりだけど……彼とは違い、どこまでこの人を信用とか信頼できるかは……今日から仕事をする上で決めようと思う。
頼ることが出来る人が多いのはいいことだけど……失敗し過ぎもいけない。
自分のお店を作っていく段階次第だ。そこはきちんと見極めたい。
「……ザックさん、随分と身軽ですけど」
片付けも適度に終えたあと……ハーフティーでひと息吐く時に私は気になっていた事を聞いてみた。
「んー? あー、魔法使い収納会得してっから〜、俺」
「あちきと同じさね?」
「……なるほど」
クレハお得意の収納魔法は、扱える人は人間でもやっぱり可能なようだ。ちょっとだけ意外な人だったから驚いたけどね?
「……ザックほどの腕前であれば、可能だな」
「スイは、そこんとこ不器用だかんな〜?」
「え、そうなんですか?」
不器用どころか、完璧超人のイメージが強かったけど……私が尋ねると、首を縦に振ったのだ。
「……どちらかと言えば、魔法は苦手な方だ」
「簡単な種火程度の魔法が、こいつやっとなんだよ〜」
「……得手不得手があるのは仕方がない」
たしかに、私に出来て他の人が出来ることだってたくさんある。
クレハの狩りが上手なのは、私にはちっとも無理だもの。
「全部出来ないのは私も同じです。私も魔法使えませんし」
「えぇ? そなのぉ?」
「狩りはほとんど、クレハのお陰ですし」
「……意外だ」
「せやなあ? そこはあちきの出番や」
スインドさんのちょっとびっくりしたお顔を見て、少し胸があったかくなったところで。
準備をきちんとしてから……私達はアヤカシの里へ行くことにした。スインドさんも一緒に来てくれるんだって!
知っている人が来てくれるのは、心強くてとっても嬉しかった!!
「ね、ね、クレハ。あれで移動しない?」
「その方がええなあ? この兄さんらなら大丈夫やろ」
「……何をだ?」
「なーにぃ?」
「移動の魔法です!」
検問所はともかく、街道から地味に歩いていくと半日以上かかるので。
ひと目がつかない場所に移動してから……ジェットコースターばりのお決まり移動魔法で、私達は里の入り口まで飛ぶことにしたのだ!!
次回はまた明日〜




