第36話 ジビエ冷しゃぶサラダ①
氷水でしっかり冷やしたら……予想以上にオーク肉がプルプルの仕上がりに!!
豚肉ぽいけど……オーク肉って、元の生き物はどんなものかな?
お肉扱いだから、多分モンスターだとは思うけど。あんまり、ラノベとかアニメを見て来なかったから……ファンタジー知識もだいぶ偏りがあるんだよね?
これはあとで、クレハやスインドさんと確認を取らなくちゃ。
しゃぶしゃぶ肉の仕上がりがうまくいったので……次は、盛り付けだ。
箸はないから……しゃぶしゃぶ肉を作る時にも使った、小さめの木製トングを使って、出来るだけ綺麗にお皿に盛り付けていく。
「……こう見ると綺麗やんなあ?」
「これに、ポン酢を適量かけて」
出来上がりました!
『オーク肉と野菜の贅沢冷しゃぶサラダ』!!
初めてのお肉だけど……冷しゃぶサラダは、小料理屋でもまかないで作らせてもらったから定評はあったんだよね?
こっちの人達の舌に合うかはこれから確認しなきゃだけど!
「……美しい」
エイドさんに食べてもらおうと思ったら。
彼はそれだけ呟くと、扉を開けて急ぐ勢いでどっかに行っちゃった? 何かあったのだろうか!? と、少し心配になっていると……スインドさんに頭をぽんぽんされた。
「……おそらく、呼びに行ったのだろう」
「だ、誰を……です?」
「……待てばわかる」
「え?」
わからないでいると、物凄い足音が聞こえてきて……エイドさんが誰かを引っ張って戻って来た。
「早く! ギルマス!!」
「ちょっと!? 僕忙しいんだけど!?」
連れて来たのは……私の腰くらいしかない背丈の、『子供』だった。
でも、普通の子供じゃなくて……耳がとんがっていた。ファンタジーに詳しくない、私でもわかる人間じゃない種族。
「エルフ……さん?」
「ん? 君誰?」
ギルマスと呼ばれた、エルフの男の子は……私を見て少し不思議そうにするだけだった。
「……ギルマス。彼女が、こちらの料理を作った本人なんです!」
「へ? 料理?」
エイドさんが調理台にある冷しゃぶサラダに……ギルマスさんの意識を向けさせれば。
彼は、すぐに顔を輝かせてくれたのだ。
「あちきとこっちのヒロとで作ったサラダやで〜?」
「なにこれ!? 宝石みたいで綺麗!!」
クレハが私のことを伝えると……ギルマスさんは、さらに見た目通りの少年が興奮したような笑顔になってくれた。
宝石……って、ちょっと言い過ぎだとは思うけど!?
「……はじめまして、ヒロと言います。ギルマス……さんですか?」
「うん! 僕がこの生産ギルドのギルドマスター! ラインって言うんだ。よろしくね、ヒロ!」
挨拶すれば、ギルマスさん……ラインさんは、きちんと自己紹介してくれた。マスター……と言うことは、見た目はともかく……このギルドの管理人さんと言うことかもしれない。
下手な態度は取らないように……注意して接しようと決めた。
「……ギルマス。この料理に使われた調味料の……特許を得るのに、彼女らをここに連れて来た」
「へー? スインドがわざわざ……食べていーい?」
「も、もちろん」
ラインさんは、どこに持っていたのかフォークを手にしていて……迷わずに、サラダにあるお肉と野菜を刺して口に運んでいった。
次回はまた明日〜




