第35話 特許のために②
お待たせ致しましたー
「こちらの厨房で、先程の調味料に合う『サラダ』を作っていただけないでしょうか?」
エイドさんが、冷蔵庫らしい扉の中から……次々に食材を取り出してくれた。
野菜もだけど……肉とか魚も切り身の状態で保管されていた。呼び名がわからないままだが……玉ねぎがポルネギという名前以外は食べ方は間違っていなかった。
と言うことは、これらは日本と扱いはほとんど同じかもしれない。
ただ、ひとつ!
私はこちらでの食材の名前を知らないのだ!!
さっき、スインドさんのお店で文字と一緒に確認すれば良かったぁ!?
「……リーア、オーク肉、パステとかか」
心の中で嘆いていたら、スインドさんが……先に名前を口にしてくれた。しかも、目線で追うと言うオプション付きで。
今の仕草で、わかったものを見ていくと。
・レタス → リーア
・オーク肉 → 豚肉ぽいの
・パステ → きゅうり
この後に、トマトはマトトとか色々教えてくれました。さすがはスインドさん! 超絶イケメン!!
「……では、ポン酢に合うように……オーク肉と生でも良い野菜で『冷しゃぶサラダ』を作らせてください」
「……れい、しゃぶ?」
エイドさんもだけど、他の二人も当然知らないので……異世界用語をあまり出さないように、注意しながら説明しよう。
「オーク肉には当然火を通すのですが……かなり薄切りにして、さっとお湯の中にくぐらせます。それを少し、氷水につけて適度に冷やしたものを『しゃぶしゃぶ肉』と言うんです。あとは切った野菜などと一緒に……ポン酢をかけたら出来るサラダだと想像していただければ」
「……マヨン以外に、肉のサラダでそのような手法が」
多分だけど……マヨンってマヨネーズかな? みりんのミーナとネーミングがちょっとだけ似ていた。
「……とりあえず、作らせてください」
「人手加わってええんなら、あちきも手伝うでー?」
「あ、はい。大丈夫ですよー」
と言うことで、クレハと一緒に作ることになった。
クレハには、野菜を洗ってもらうところからお願いした。アヤカシの里でもあったけど、水道管設備とかはファンタジー世界なのに……日本とあんまり変わらないんだよね? おかげで、エイドさんには変な目では見られないけど!!
ザルとか他の調理道具は……スインドさんのお店ではチラッと見たけど、人間の街のはきちんとした調理道具だった。でも、せっかくだから……クレハが買ってくれたあの包丁でオーク肉をスライスすることにした。
なんだけど、
「そ、それは!!?」
「……何故、それを!?」
男性陣二人が、不思議形状の包丁を見た途端……大声を上げたんだよね?
「……これが何か?」
「これ、ではありませんよ!?」
「タタラ刀工の名作だぞ!? 流麗の包丁シリーズの傑作……何故、ヒロが持っているんだ!!」
「あちきの里で、普通に買っただけやでー?」
「「……獣人の里で?」」
「正確には〜、『フルリ』のアヤカシの里や」
「「……なるほど」」
簡単なクレハの説明だけで、二人はものすっごいダメージを感じてのか……がっくしと肩を落としたのだった。
『……これ、そんな凄い包丁なのかな?』
『あちきも詳しく知らんわ〜。あそこの商人も良いもんしか言っとらんかったし』
『……だよね?』
解体にはおすすめ! とくらいしか言っていなかったもの。
とりあえず、男性陣は置いておくことにして……オーク肉をスライスしていく。解体の時と同じく、素晴らしく扱いやすい切り心地だったわ!
「ヒロ〜、野菜はどう切るん?」
「レタスはちぎるだけで、きゅうりは上と下を少し切ったら……斜めに薄く切るんだけど、わかる?」
「んー? 見本見せて?」
「いいよー」
少しお手本を見せたら、クレハはすぐに理解してくれたので……そっちは任せたら。古い酒こと、セイシって料理酒をお湯が沸いたお鍋の中に……少量加えて、軽くアルコールが飛んだタイミングで薄切り肉をくぐらせていく!!




