第30話 何でも屋で②
とりあえず、調味料の瓶をひとつずつ見せていただくことになった。
「……これは、古い酒だが。地方に寄っては、臭み消しのために……料理に使うことがある」
見た目は透明の液体が入っている瓶だけど……匂いを嗅いでいいか聞くと、スインドさんはすぐに渡してくれた。
「……うん」
ワインとかではなく、純米酒とかの香りだ。と言うことは、この世界には『米』が存在していることが確定された!!
米があれば……ひとつどころか無限なくらいに料理の幅が広がって行く!
次に渡されたのは、薄茶色の液体の瓶。
「そちらも酒に近いが……不思議と甘い。女でも好んで飲むやつはいるな。使い方は……砂糖の代用にも」
「ヒロ?」
料理酒の次に、今度はみりんまで!?
異世界の食事事情……どこまで類似点が多いんだろうか!?
声を大にして言いたいけど……クレハはともかく、スインドさんの前では言えないから……我慢我慢!!
その代わりに!
「こ、これの名前は!?」
「……ミーナと、呼ばれている」
「人の名前みたいやんなあ?」
「……これが、ミーナ」
みりんがミーナ。似てるけど、サイシよりは覚えやすいわ。
これも匂いを嗅げば、たしかにみりんそのものの独特な甘い香りがしてきた。
「こちらは、酢だ。酸味の強い……そのままでは食べにくいものだが」
「……ヒロには、そうじゃないようやんな?」
お酢まであるのもびっくりしたけど……なんと、赤酢!!
お寿司でも……師匠が得意としてた江戸前寿司ぽいのが、米をゲット出来たら作れるかもしれない!!
酢飯の仕込みは手伝ってたから……完全再現じゃなくても、私みたいなのでも作れるかも!!
「……目が、輝いているな」
「……ヒロ。さっきのもやけど、他のも買うん?」
「うん! あ……スインドさんの試したいと言うのは?」
購入もだけど……わざわざこのお店に連れてきてまで、何かしたいと言うことを忘れかけていたわ。
私の質問に、スインドさんはひとつ頷いた。
「……ああ。複数を組み合わせる調味料とやらを……何か作ってくれないか?」
「え?」
「可能であれば、購入したいものを半額で売る」
「え、え? わ、私……見習いですよ?」
「あの堂々とした言い回しと串の味……可能性を俺は見出したんだ」
「……わかりました」
そこまで言われると……やらないわけにはいかない。
半額はともかく……そこまでの提案をしてくれるんだもん。何か……出来ることがあるとすれば。
ジビエにも合う調味料探しなので、出来れば和食でもそのジャンルのにしたい。
とくれば……だ!
私はスインドさんに、果物がないか提案した。
「果物を……調味料に?」
「ソースじゃないんですが……ここで作っていいですか?」
「……構わない。すぐに戻ってくる」
お願いしたのは……レモン。
これを使うだけでも、全然違うんだよねー?
「……これの絞り汁に、サイシとほんの少量のお酢を加えて」
味見をしてみれば、さっぱりした口当たりが特徴的な。
『ポン酢』の出来上がりだ!!
次回はまた明日〜




