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第20話 まずは綺麗に

 翌朝。


 異世界に転移させられてから……はじめての朝なんだけど。



「んにゃぁ〜……」



 布団の上には、猫又ちゃん姿のクレハ。


 窓の外を見ても……木の実の灯り以外は真っ暗だ。この里などの、集落を含めた森の中はだいたいこんな風景らしい。


『アヤカシ』の集落は森のあちこちに点在しているらしいが、ネコマタの長老おじいちゃんがいるここは結構大きいと本人が言っていた。


 そのお孫さんであるクレハと、今日から少し旅に出るのだ。


 まだ異世界ではあるかわからない……私が扱えそうな調味料などを探しに。


 せっかく、貸し店舗を与えられても……許可者である長老おじいちゃんに、まだ可能性があると料理への評価をもらえたんだもん!



「クレハ〜、起きようよー」



 朝早く出かける約束はしてないが、スッキリと目が覚めた私は……ここでの身支の方法を知らない。


 昨夜は、お互いに狩りや解体を含める料理をしまくったので……クレハにここを紹介してもらった後に爆睡してしまったのだ。


 だから、お風呂にも入っていない。



「んにゃぁ〜、ヒロ〜……あちきに、もっと美味いのを〜」



 夢の中まで、あの串焼きを美味しくしたのを食べているのだろうか? 実に平和な夢なのでいいことだが。



「クレハ、起きて〜? シャワーかお風呂教えてー」


「……んにゃ、風呂?」



 ゆさゆさとゆすぶったことで、何とか起きてはくれたけど。


 クレハは、前足で顔を何回か擦ったあとに……不思議そうに私を見上げてきた。



「どうかした?」


「……わざわざ朝に風呂入るん?」


「昨夜、ここで寝ちゃったじゃない?」


「……せやな。あちきも忘れとった」



 と言って、とん、とベッドから降りてこっちだと手招きしてくれました。


 ベッドは二階の寝室にあったけど……お風呂は一階みたいだ。


 脱衣所はきちんとあるが、クレハは猫又ちゃんの姿のままお風呂に入るようだ。



「クレハは獣人姿にならないの?」


「別にどっちでも風呂は入れるで? せやけど、今はヒロもおるやん? 二人やと狭いやないか」


「あ、そっか」



 と言うとここは一人暮らし用なのかな?


 と思って、クレハの言われたように服を脱いで浴室に入らせてもらったんだけど……私が住んでた一人暮らし用の部屋より断然広かった。洗い場も、浴槽も。



「ほな、教えるからここの椅子に座り?」


「……うん」



 お嬢様っぽいところがないわけじゃないけど……人間でもないから、価値観違うとこが多いかも。色々諦める事にした。


 体を綺麗さっぱり洗えた時に思ったが、入院してた時とは違って……介助無しに自分で髪とかを洗えるのはやっぱり嬉しい。


 途中から、鼻歌を歌いながら……シャンプーぽい薬品で髪の汚れもしっかり落として。


 浴槽に浸かる前に、クレハが尻尾の魔法? で、髪をまとめてくれた。そこまで長くないけど、クレハも髪ゴムみたいなのは持ってないらしい。


 準備が出来て……浴槽に、クレハを抱っこして浸かれば。



「「生き返る〜!!」」



 と、ハモってしまうほど、気持ち良かった。


 お湯はクレハが魔法でさっと用意してくれたのに、すっごく適温だったわ。



「今日から頑張ろうね、クレハ」


「せやなあ。おじぃの提案もやけど、もっとヒロの料理が美味くなるんなら……あちきは助力を惜しまんよ?」


「ありがとう」



 貸し店舗予定もあの建物は、長老おじいちゃんがしばらく管理してくれるから……誰も近づかないと思うって。


 せっかくの建物だけど……料理については、美女神様にお願いされたってまだまだ未熟なとこが多くて仕方ない。


 だから、修業も兼ねて……調味料探し途中でも技術を上げなくちゃ!

次回はまた明日〜

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