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フェーズ6。撃夢の銀鎧。 パート1。

「くそ、なんだこいつ。硬い。

デスタニアのサタニックメイスだって言うのに手応えが薄い……!

ほんと、何者なんだ、こいつは」

 

 巨大な棒状の武器、サタニックメイスを構え直しながら、

 黒をベースに銀の入った配色の、プライムローダー・アルターの

 パワー重視の鎧、デスタニアフォームの直樹なおきは、

 苦々しい声を発する。

 

「おまけに攻撃が重い。拳圧だけで、当たったらまずいってわかるわよ」

 もう一人の戦士である、異世界から現れた存在の一人。

 直樹とは正反対に、銀の盾の描かれた皮鎧で身軽な装備の、

 黒い猫耳に黄金の瞳の、黒に近い紺色の髪の少女、カグヤ・ツクヨミ。

 

 こちらも、僅かに焦りを帯びた声色で言うと、

 軽く左手の人差し指で、少し乾いた唇をなぞる。

 

 

 二人は金色こんじきのローダーと、遭遇して以後戦い続けているが、

 一向に有効な打撃を与えることができていない状況である。

 

 

「残念だよ。君たちでも、このオルトロンに

満足に傷をつけることができないのか」

 本当に残念そうに言う金色こんじきのローダー、オルトロン。

 しかし、その声色は二人の闘志に反骨心と言う火を投げ込んだ。

 

「いいぜ。そうまで言うなら、お前に傷をつけてやる」

 口に出した直樹だが、カグヤは目付きを鋭くしただけである。

「それには賛成だけど、いったいどうすんのよ?」

「一撃の重みで駄目なら、数で押す」

 

「どうするつもり?」

 カグヤに答えるように、サタニックメイスを雑に、

 右腰にひっかけるようにマウントするアルター。

 

「こうするんだ」

 続けて左二の腕のタッチパットに、0 0 0を入力し、

 フォームチェンジの準備をする。

 九つの顔アイコンが並ぶ画面に切り替わると、

 滑らせるように真ん中の三つに触れる。

 

『カグヤ、ディアーレ、百鬼姫なきりめ!』

 

「に、ニャたし?!」

 自分の名前を、予想もしなかったところから呼ばれ、驚くカグヤ。

 その声に答えるようなタイミングで、サタニックメイスを含めたアルターを

 緑の光が包み込んだ。

 

『パニオン!』

 

 ドライバー音声が終わると緑の光が、弾けるようにして消える。

 光の中から現れたアルターは青を基調とした、デスタニアとは対を成す

 スピード重視の鎧、パニオンフォームへと姿を変えた。

 

 

「かわった?!」

 フォームチェンジに驚愕したのは、勿論カグヤである。

「ぐ。また、力をひっこぬかれた感覚……!」

 

「悪いな、借りてる。このローダーは他と比べて特殊でな。

様々な異世界の力を借りて、こうやってフォームを切り替えるんだ」

「なるほどね。で、黒いのよりは身軽そうだけど?」

「ああ、こいつは今さっきも言ったとおり手数で押す、スピード重視なんだ。

お前は、どうやら速度に優れる存在として選ばれたらしいぜ」

 

「ふぅん。素早き者の一角として選出されたのは悪い気はしないけど、

かわりに力を引っこ抜かれるってのは複雑だわ。

って言うか、その耳とか緋色の目とか。

ニャたしみたいじゃない。緋色の目は状況限定だけど」

 

「言われてみれば、そうだな」

 パニオンフォームの見た目の記憶とカグヤの顔を見比べて、

 似たパーツがあると気が付いた直樹だ。

 

 

「さて、その手数で押すスタイルでどうするつもりなんだ?

一撃の重みが通用しないのに、攻撃力を下げたら

ますます通用しないだろう?」

「好きに煽ってろ」

 余裕を含んで言い返すと、直樹は再びタッチパットを操作する。

 

『トゥー、ゼロ、ゼロ』

「チェック」

『フェイタルオーダー!』

 ドライバーの声を確認し、アルターは、再びパニオンフォームを入力する。

「ロード」

 

『ぶっ壊すぜーっ!』

 

「えっ?! 分裂したっ!?」

 カグヤが驚愕するのに、「分身なんだけどな」と直樹は小さく言うと、

 バックルを右手で叩く。それに答えて、

 複数のパニオンフォームのアルターたちが、一斉に動き出した。

 

「なるほど。そういうことか」

 期待するように呟くオルトロン。

 その声の直後、分身したアルターたちが攻撃に移った。

 

「え……えげつないわね」

 一斉に分身アルターたちが飛び蹴りを放ち始めたのを見て、

 カグヤは思わず目をそらす。

 一蹴り毎に数が減って行くとはいえ、あまりの数に入る隙間がなく

 見ることしかできない。だが、それでも少女は構えを解いていない。

 

「嘘っ、あれだけ魔力込めた蹴りを叩き込まれてるのに、なんともないの?!」

 カグヤはアキロノス粒子のことは知らないらしく、

 アルターたちが蹴り足に纏った緑の光を、自身の見知った特殊な力である

 魔力だと認識しているようである。

 

「くっ、化け物が。ノーガードで平然としてやがる。

それなら、こいつはどうだ……!」

 憎々しげに言うと、右の二の腕に左手を添えるアルター。

 すると装甲が開く。そのまま中身を取り出すと、それは小さな、

 おもちゃの銃のような物。

 

 装甲が閉まる。それを気にも留めずに、おもちゃのような銃

 アルタートリガーを右手に持ち帰ると、

 それをバックルの右側面のくぼみに差し込んだ。

 

『シャドーブランチャー!』

 

 高らかにアルタードライバーが宣言すると、

 それに答え再びアルターはバックルを右手で叩く。

 

『フェイタルオーダー!』

 

 ドライバーの声を受けて、ジャケット装甲の内側に腕を突っ込む。

 カチャリと言う独特の音が鳴った。

 

 

「さて、どうかな?」

 オルトロンは複数のアルターたちから、ひたすら攻撃を受け続けているが、

 自身の言葉の通り、数だけではダメージになっていないのか、

 未だに平然としている。

 

「硬いにもほどがあるだろ。同じとこ蹴ってるってのに、かすり傷かよっ。

全部フェイタルオーダーなんだぞ、あの蹴り……!」

 仮面の裏で驚愕しながら歯噛みし、腰を深く落とすアルター。

 残り五人になった分身たちを飛び越える構えか。

 

 その体勢で両腕を勢いよくジャケットから抜き放ち、

 二本の刀カクシ・ブレードを、抜刀する勢いのまま跳躍した。

 その刃は、緑の光 ーーアキロノスエネルギーを帯びている。

 

「こっのおおおっ!」

 大上段にカクシ・ブレードを振り上げ、気迫の叫びと共に、

 それを敵に向かって、二本同時に振り下ろした。

 鈍く、だが高い金属音が辺りに響く。

 

 

「なっ!?」

 驚愕の声を上げたアルター。

 今の一撃と同時に、分身たちは全て攻撃をし終わったため、

 現在の戦場は、元の三人に戻っている。

 

 とどめとは行かずとも、これまでの膠着状態よりは

 これを叩き込めればましになると思った、アルター変身者である直樹。

 

 なにしろフォーム最強の一撃、フェイタルオーダーである。

 シグマドであれば、この斬撃によって吹き飛ぶ。

 並みのローダーであろうとそれはかわらない。

 それほどの強力な一撃だ。

 

 

 しかしあろうことか。

 

 今直樹は。

 

 プライムローダー・アルターは。

 

 

 ーー二本の刃を受け止められ、空中で制止させられているのだ。

 

 

「我々ローダーのフェイタルオーダーは、

大量のアキロノス粒子を相手に流し込み、

肉体の粒子許容量を超えさせることによって、

相手を自爆に近い形で撃破する物」

 

 悠然と。まるで全てを知るかの如く、悠然と語るオルトロン。

 掴む刃からはアキロノスエネルギーが霧散し、

 その色は鈍く輝く銀色になっている。

 ただの刃に戻ってしまっていたのだ。

 

 

「ぐ、ううう……!」

 力を籠めるアルターだが、受け止められたカクシ・ブレードはびくともしない。

「だがそれが、相手の許容量に収まってしまえば!」

 オルトロンは、刃を掴んだ状態で両腕を勢いよく振り下ろした。

 

「がはっ?!」

 無防備に、強く背中を地面に叩きつけられたアルターは、

 たとえ防御力の低いパニオンフォームであろうと、

 装甲に身を包んでいるその状況で、体に走る痛みに悶絶し、

 カクシ・ブレードを手放してしまった。

 

 カランカランと、得物が転がる乾いた音が、この場にいる者の鼓膜を打つ。

 

「こうなる」

 これぐらいできて当然だと、オルトロンは解説を終えた。

 声色に少しの乱れもなく。

 

 

「ニャんたたちの強さの上下関係はよくわかんないけど、

金色こんじきの方。ニャんたが、とんでもない奴だって言うのだけはわかったわ」

 構えたまま、異世界からの来訪者であるカグヤは相手を見据える。

「お嬢さん。その余裕、隠し玉を期待してもいいのかな?」

「さあね」

 

 余裕の裏で、カグヤは考える。

 月に一度訪れる、自らの暴走状態である『発作』の時ならまだしも、

 力を奪われているような状態では、この金色こんじきの戦士に

 余計に勝ち目がないと、これまでの殴り合いで理解している。

 

 だが、共闘している銀色の戦士の実力を判断しかねる現状では、

 まだ手を見せるには早い。

 魔力を開放する戦いを、自意識のある日常ではまずしないカグヤにとって、

 早計な力の開放は戦力の低下を招きかねない。

 

 この世界にいかなる危険があるのか知る由もないカグヤであるが、

 少なくとも自分の力を多く使っているこの敵を倒すことで、

 己の日常に訪れる、力を抜き取られるような違和感を

 減らすことができると見ている。

 

 なにより、魔力泥棒なんぞに負けることは、己のプライドが許さない。

 ゆえに、最良のタイミングで手の内を見せることにしているのだ。

 

 

「おいおい。まだ、俺は一発もらった、だけだぞ」

 痛みから回復したアルターは、起き上がりながらそう言うと

 カクシ・ブレードを回収、立ち上がり、

 ジャケット状の増加装甲の、内側の鞘に納めると臨戦態勢を取った。

 その右腕は、タッチパットへと伸ばされようとしている。

 

「どうやら俺は、勘違いしてたみたいだな」

「勘違いって?」

 カグヤに促すように問われ頷くと、直樹は答えを返す。

 

「俺はプライムゲートクラスの力を持った奴は、

カグヤ お前だと思ってたんだ。

けど、リアンさんが教えてくれてたのは。目の前のこいつのことだった」

 

 言い終えると直樹は、流れるように右手を左腕のタッチパットへと延ばす。

「このいかんともしがたい性能差が、それを認識させた」

 そう言うと、

 

『ゼロ! ゼロ! ゼロ!』

 

 三度みたび表示をフォームチェンジ画面へと移行した。

 

「少しは、楽しませてもらえるか」

 フォームチェンジ先を読んでいるのか、

 また、期待するように呟くオルトロン。

 

「楽しむ暇があればいいな」

 並ぶ九つの顔アイコン。その中には勿論、カグヤの顔もある。

「さっさとけりつけないとな」

 決意するように呟くと、アルターは、

 

『竜馬!』

 三つのアイコンに

 

『カグヤ!』

 一つずつ、

 

『ディバイナ!』

 自らへと覚悟を促すように、ゆっくりと触れた。

 

 全てのアイコンが直線で繋がった表示に切り替わる。

 

「ロードッ!」

 右手をグググと音がするほど、強く握りながら叫んだ。

『レディーゴー!』

 これまでは、変身が始まるとローダーを緑の光が包み込んだ。

 

『一か八かの諸刃のつるぎ

 しかし今回は、その光の色が濁っており、

『死なばもろとも、プライマライズ』

 一目見ただけで、変身者に危険が付きまとっていると想像させる光だ。

 

 ドライバー音声の内容もその声色も、

 恐怖を煽るように低くゆっくりとした物になっている。

 

『カオストリーム』

 

 一文字一文字、刻み付けるかのような言い方で、

 そうドライバーがフォーム名を発し、濁った緑の光が弾け飛ぶ。

 光の中にいたアルターは、また新たな姿となっていた。

 

 

 黄色い二本角、銀色のボディ、黒いストリーマーが体を走る。

 デスタニアフォームの色合いが反転したカラーリングになっている。

 デスタニアの時には一枚しかなかった翼は一枚増えて一対となり、

 その色は白から赤になっている。

 握る拳は青く変化し、その額に血のような色のCHの文字。

 

 二本だったカクシ・ブレードが合体した大刀だいとう

 リョウダン・ブレードを背中に背負っている。

 

 

「パワーだけでもスピードだけでも駄目だって言うんなら、

両方備えたこいつで勝負するしかないからな」

 体の調子を確かめるように、アルターは左右の拳を言葉の後に数度振る。

 そのスピードは秒間六発、パニオンフォームと同等の早さである。

 

「へぇ。さっきの黒いのみたいなかっこうのわりに、

ずいぶん早くなったじゃない」

 

「そうだな」

 カグヤの感想にオルトロンは同意し、そして

「頼りにさせてもらうわよ」「やはり、楽しめそうだな」

 二人は全く違うことを同時に発した。

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