フェーズ5。夢の鎧のオ嬢様。 パート2。
「及びでござリーナ覇司魔?」
「「猫が喋った?!」」
驚くてんまと和也、どよめく剣塚店内。
しかし目をまん丸くしているてんまたちとは対照的に、
「けど、たしかに。ボコキュアには、こうして喋るマスコットが必ずいるな。
変身するための、その時のボコキュアの力を担ってたりする奴が」
とまるで演義で驚いたかのように冷静に銀色の喋る猫の存在を、
キャラクターとして受け止めた様子の和也だ。
そうすることで、驚きっぱなしを回避したようである。
「そうなんだ。わたしの世界じゃこういうのは、シリーズって呼べるほど
同じ名前を冠してはやってないなぁ」
和也の冷静さに驚きが冷めたか、てんまも落ち着いた様子で
世界の違いに感心している。
「にしてもそいつ、変な語尾だな」
変な語尾と言われ、銀の体に緑の目をしたヘンカワリーナは、
「フゥゥ!」とまさに威嚇する猫のような声をあげた。
「つきものじゃございませんか、ボコキュアシリーズのマスコットの語尾が
特徴的なのは」
「たしかに、そうだったな。わりい」
さして悪びれもせず軽口で謝る和也に、ヘンカワリーナは
「いいでござリーナよ。覇司魔も変な語尾って言ってるでござリーナし」
と、すねたような声色で、和也から顔を左にプイとそむけて答えた。
アハハと苦笑してから、
「で? 今さっきの口ぶりからするに、そいつはお前が考えたのか?」
と覇司魔に問いを投げる。
「ええ。指輪の中に隠れると言うのも、実際ボコキュアになった時、
周りの人間にマスコットの存在を隠せるように、と考えたものですの。
コンパクトと言う伝統アイテムに考えが及ばなかったのは、
今にして思えば未熟でしたけれどね」
心から楽しそうに語る覇司魔。
そんな様子を見聞きし、和也とてんまは、同時に驚愕の表情で言った。
「この人。本気でシュミレートしてたんだ「こいつ。ガチで考えてやがったんだな」」
「けっこう窮屈でござリーナんよね」
ヘンカワリーナの、隠さない少し愚痴っぽい言い方の本音を、
「我慢してくださいな」と宥めるような調子で、
猫の創造主はたしなめる。
「なるほど。ヒーロー、か」
覇司魔たちのオモシロイやりとりを見て、勇大はしみじみと呟く。
「ほんとに、お前らにとって、変身して戦う奴ってのは
物語の中の存在なんだな」
感慨深い様子で、改めて感想として口にした。
「憧れのヒーロー。なんか。気が引き締まる思いだぜ」
「気負いすぎてやられないでくださいね、ヒーローさん」
覇司魔に右肩を軽く叩くのと同時に言われ、
「お前が言うなよ、それを」
と苦笑する勇大だが、それでもその目に嫌悪はなかった。
「この世界の空気、できれば、みちさんと章子さんにも
感じてもらいたかったですわね。
扉に入った時、みちさんには『あっ! こら、バカ!』、
章子さんには『はしまちゃんっ!』って、
驚かれてしまいましたけれど。
きっと今頃、心配しながら怒ってるんでしょうね」
異世界の友人のことを思って、覇司魔は自嘲めいた溜息を静香に吐いた。
「あら、電話ですの?」
耳をビクっと立てたヘンカワリーナに僅かに驚きつつ、
まるで警報のような着信音を聞いた覇司魔が尋ねると、
ああと答えるのと同時に、勇大は通話ボタンを押す。
『勇大君、今どこ?』
「リアンさんか。剣塚だけど、どうしたんだそんな慌てて?」
聞き耳を立てる異世界の者たち。しかし、剣塚にいる人々は、
またかと言った様子で平然としており、
誰もその内容を気にするそぶりを見せない。
『直樹君が戦ってるのは知ってるわよね?』
「把握してるぜ。それがどうしたんだ?」
『それが妙なの』
「妙?」
『ええ。戦ってる相手は、プライマルゲートクラスのアキロノス反応がある、
それはそれで危険な相手なんだけど』
「いやいや、その段階でヤバイだろ。なんで『そっちはおいといて』みたいな言い方なんだよ?」
『だって、直樹君と共闘してる人の反応が、
アルターのパニオンフォームと似てるんだもの。
そっちの方が気になるじゃない』
「……なんだって?」
『敵の側の反応が、まったく弱まらないのも気になりはするの。
直樹君は弱いローダーでも使い手でもないわ。
もう一人の実力はわからないけど、反応が弱まってないから
無鉄砲に共闘してるんじゃないはずなのよ』
「なるほどな」
『そうなると、シグマドって線は薄いかなって思うの。
直樹君なら、シグマド相手にこんなに苦戦することはないだろうからね』
「そうだな」
『もしかしたら、直樹君が追いかけてる金色のローダーかもしれないわ。
勇大君、援護頼める?』
「勿論だ。ついでに妙な反応って奴も確かめて来る」
『おねがい』
リアンはその言葉の後に通話を切った。
「オペレーターってところか。反応一つで、それだけの戦況予測が立てられるって、
リアンって人、すごいな」
和也の感心した表情と声に頷くてんま。
「ああ、いつも助かってる」
しみじみと勇大は、和也の言葉に頷いた。
「あの。プライマルゲートとは、なんですの?」
「簡単に言えば、あんたらをこの世界に呼びつけた扉のことだ」
「「扉?」」
「なるほど、あの扉のことですのね」
「そっか。わたしだけが、ちょうどその扉に当たってたんだ。
でも、テレポーテーション中に、なにかにひっかかるなんてこと
あるのかなぁ?」
「なんの疑いもなく、ゴーレママの扉だと思って開けたら、
まったく同じ場所に、そのゲートとやらがあったってことか」
この場にいる、異世界の人間であるてんまと和也は、
覇司魔と違い、自らの意志でプライマルゲートを開けたわけではなかったため、
扉の存在を認識すらしていなかったのである。
すぐに納得したのが覇司魔だけだったのは、当然のことだろう。
しかし多少の疑問符はあるものの、二人からすれば、
長くない異世界滞在時間だが、遭遇した出来事は
異世界への扉をくぐっていたと言う話を納得するのに、
充分な内容であった。
「この世界は、可能性の力に満ちた世界だ。
その力が一点集中してある程度の域を超えた時、
異世界からなにかを一つ、呼び寄せるゲートが現れる。
それがプライマルゲート……なんだそうだぜ」
最後の最後で歯切れが悪くなった勇大に、
「脳内コピペだったのかよ」と和也が思わず突っ込む。
「しょうがねえだろ、こんなこと覚えておく以外じゃ、
まともに頭に入らないぞ」
「たしかに、そうかもな。設定としちゃ面白い話だけど、
実際その世界に暮らす人からすりゃ、設定で片付けるわけにもいかねえし、
資料的に記憶するのがセオリーになるのか」
和也はそう納得し、「悪い」と小さく頭を下げた。
「いや、気にしてないぜ」
「そっか、よかったぜ。けど、俺の場合、
資料で片付けられない状況だったんだよな」
いきなり自分のところに現れた、掌サイズの自称大魔王少女を思い浮かべて、
和也は小さく苦笑した。
「なるほど。そんな一定の領域を超えた力を取り込んでいる相手。
状況としては、いわゆるボス戦と言うところですわね」
「ゲームもたしなむとは、お前さん。サブカル大好きお嬢様と見た」
和也の推測に、一つ力強く頷くと、
「お友達には、『オタクのお嬢、略してオ嬢』って呼ばれていますしね」
と胸を張って自信満々に答えた覇司魔である。
「その自信やよし、だな」
「って、のんびりしてる場合ですか。勇大さん、わたしたちも手伝います。
こうして呼び出された以上、なにかやらなきゃ収まりが悪いですから」
「流石は戦隊メンバーですわね。わたくしも、お手伝いいたします。
戦える力を、超常の力を得たんです。
その力を使いたくなるのがオタクと言う物ですし、
なにより、義を見てせざるは勇無きなり、ですわ」
「物好きだなぁお前ら、特にオ嬢」。
覇司魔の熱血っぷりに呆れて苦笑いする和也は、
「とはいえ、このかっこのまんまサテンでぼーっとしてるのも気まずいし、
サラっと一色たにされたけど乗り掛かった舟だ。俺もいくぜ」
そう力強く言葉を続けた。
「あ、ごめんなさい。つい勢いで数に入れちゃいました」
「戦える奴が複数いたから、か?」
「みんなで力を合わせて戦う、すっかりしみついてるみたい」
苦笑いで返したてんまは、
「職業病、みたいなものかなー。なんて」
そう続けた。
「職業病出るほど戦隊やってんのか?」
と驚く和也である。
「まあ俺が行ったところで、そんなやべー奴相手に戦えるのかは
わからねえけどな」
自分の装備と右手に視線をやって、和也は軽薄に続けた。
「呼ばれし者三人、それもその中には変身者。心強いぜ。
相手はプライマルゲートクラスのアキロノス粒子を扱う奴だからな。
よし、じゃあ、水一杯飲んで景気付けたら戦場にとんぼ返りだ!」
勇大の気合一発。
それに答えて、てんま 覇司魔 そして和也は、
「「「おお!」」」
と右腕を揃って振り上げ、ヘンカワリーナも三人と同時に
「ござリーナ!」と気合の声をあげた。




