フェーズ4。夢の悲劇に繋がりし者。 パート2。
「悲劇の主人公語り、子供相手にしてるんじゃないわよ。
それもそんな、生々しい大暴れの感触なんて伝えて。困ってるじゃない」
「誰、だ?」
突然、アルターの左腕のタッチパットからコール音が響いた。
『直樹君っ、、そっちにプライマルゲートと同等の反応が!?』
受信するや否や、初めの戦場に向かう直前に会話していたのと同じ
女性の声が流れて来た。それも、ひどく慌てた様子の。
「リアンさん。ああ、そいつは今、目の前にいる」
『そう。気をつけて』
それだけを答えると、女性リアンは通話を終えた。
「誰か、ですって? 人の力引っこ抜いておいてよく言うわよ」
ウェアラブル端末に僅か驚いた様子だったが、声の主は落ち着いた調子で
アルターの問いに答えた。
「力を、ひっこぬく?」
「ニャんたでしょ。ニャたしの力、ひっこぬいてるの」
「なに……言ってんだ、お前?」
「猫耳?」
声の主の姿に、一番に反応したのはみくる、ドラゴンシグマドだった。
「それに、皮の鎧……まるで、物語から飛び出して来たみたい」
「ドラゴンのニャんたに言われても、説得力に欠けるわよ。
まあ、ニャたしの世界、ドラゴン日常的に見かけるけど」
「世界。と、言うことは呼ばれし者なのか。
その妙なかっこうも、コスプレじゃないってことだな?」
「こすぷれ? ……そういえば、初めて顔合わせた時、
アクトも似たようなこと言ってた気がする。うろおぼえだけど」
「アクト?」
名前と思しきその言葉を聞き、アルターはもしやと思い
今は左二の腕に集約されている、プライマライズフォンを変身待機モードにし、
猫耳の少女に見せる。
「なに、これ? アクトに、ニャたしの顔まであるじゃない」
乱入者は、九つ並ぶ顔アイコン見て驚愕している。
「アクト、それに……ほんとだ。お前、カグヤか?」
「ええ、カグヤ・ツクヨミよ。初めてあった鎧の化け物に、
一方的に知られてるのは気味が悪いけどね」
「んじゃ直樹」
「みくる」
「て……てきとうね。ドラゴンの方は、かわいい名前じゃない」
「そ……そう?」
驚いたらしく、ドラゴンシグマドみくるは、一歩後ずさる。
そんな様子を見た、黒猫耳に黄金の瞳の少女カグヤは、
一つ柔らかに微笑。その後、視線を直樹、アルターに向ける。
「で、やっぱニャんただったわけだ。ニャたしの力引っこ抜いてたの」
そう自分の言葉を、大仰に頷いて納得したカグヤだが、
「けど」と疑問を続けた。
「納得したんじゃないのか?」
「納得はしたわよ。けど、ニャんただけじゃ、引っこ抜かれる力の具合が足りないのよ」
「どういうことだ?」
「もっと、たくさん引っこ抜かれてるの。ニャたしの魔力が」
「その通り」
カグヤとは別の、新たな第三者の声が響く。
「流石は異世界の住民」
ゆっくりと、ゆっくりとアルターの正面から、その第三者は歩いて来る。
「私達とは、力に対する感覚の鋭敏さが段違いだな」
はっきりと姿の見えたその存在は、
「なに、その派っ手ーっな鎧?」
カグヤを困惑させ、
「迫力、すごい。なんか、空気が重たい」
首を向けたみくる、ドラゴンシグマドを、ゆっくりとその者の方へと
反転させるほどに警戒させ、そして。
「出たな、金色のローダー!」
アルター、直樹に戦う意欲を、その身体と共に立ち上がらせた。
プラチナブロンドの仮面に紫の目、灰色のマスク。額に鮮やかな赤の無限マーク。
黒い耳の上がとがっており、頭には黄色い角のようなセンサーアンテナが二本直立している。
金色の武者鎧のようなボディ。
体の前後にXの字に、灰色と紫、二本の太いアキロストリーマーが走る。
黒い肩パット、仮面 首 腕と白いストリーマーを要する。
右二の腕に灰色地のタッチパットが、アルターを鏡写しにしたように配置されている。
腕の色は左右共通で二の腕が白く前腕が黒い。
拳は青い手甲に赤い手。黒い脚のサイドに銀のストリーマー。
足が赤銅色になっている。
見た目の派手さと呼応するかのように、放たれる威圧感は充分な重みを持っている。
「逃げなさい、みくる」
真剣な声音でピシャリと言うカグヤ。
「え、でも」
またくるりと、カグヤと直樹の方に体を向ける。
「ナオキだっけ? こいつに歯が立たなかったんでしょ?
ならこいつには、もっとどうしようもないわよ、ニャんたじゃ」
「そんなのやってみなくちゃ」
「わかる。俺に歯が立たなかったお前じゃ、
こいつに傷一つ負わせるのもむりだ」
「どうして言い切れるの」
威嚇するように睨み付けるみくる、ドラゴンシグマド。
「それじゃあお嬢さん。その答えを、身を持って知ってもらおうか」
そう言うや否や、金色のローダーは、まるで邪魔な物を追いやるように
掬い出すような左足による蹴りを放った。力は殆ど入っていないとわかる動作だ。
「がっっ?!」
なんの前触れもなく放たれた攻撃に対応できず、
小さな竜は左へと文字通り蹴り飛ばされてしまった。
一斉にその方向を見たカグヤと直樹は、どうにか着地した小さな竜を司会に捉え、
安堵の息を小さく吐いた。
しかし、ドラゴンシグマド、みくるの表情は困惑しており、
今にも涙が溢れそうになっている。
「わかったかなお嬢さん。君は私達の戦場には不要なんだよ。
死にたい、と言うなら話は別だが」
金色のローダーは、気取った調子で死を強調する。
「く、うぅ……!」
歯噛みで涙を押し殺し、波間みくるはそのまま飛び去って行った。
「ずいぶん優しいのね」
睨み付けながら言うカグヤに、相手はかぶりを振る。
「雑魚に用がないだけだ。私が求めるのは強者だけだからね」
「自我のある戦闘狂か」
吐き捨てるカグヤは、苦々しさを隠さない。
満月に訪れる、自らの発作と言う名の暴走を思い、
自我を残したままで戦いを求める、その姿勢を嫌悪しているのである。
「お前、何者だ。ちかごろのシグマドの強化と関係あるのか?」
「さてな。知りたければ私と戦え、プライムローダー・アルター、倉沢直樹。
私が教えるに足ると判断すれば、教えてやろう」
「狂ってやがる」
吐き捨てるように呟くアルター。
「そっちのお嬢さんもどうかな? 二人まとめてかかって来ては」
「いいわよ、力泥棒の親玉。後悔させてやるんだから」
仮面の裏でニヤリと笑った、そう声色から表情を判断したカグヤは、
グッとオープンフィンガーグローブを鳴らし、戦闘態勢を取った。
「叩き壊す」
デスタニアフォームのプライムローダー・アルターは、
右腰のサタニックメイスを左手で引き抜き、
前半身の、鎖のような銀色のアキロストリーマーに、
なにかを読み取らせるようにスライドさせた。
すると、掌より少し長い程度だった棒状の物体は、
みるみる巨大化 長大化して行き、一本の打撃武器へとその姿を変えた。
「えええっ? なにそれ?!」
巨大化したサタニックメイスに驚愕するカグヤを後目に、
直樹、アルターは得物を右手に持ち替えた。
「いくぞ、気障野郎!」




