フェーズ7。緑の夢光に集う強者たち。 パート2。
「ところで、ケータイのナビなしで目的地に行けるんですか?」
勇大に追いついたてんまと覇司魔、合流しざまのこの言葉はてんまの物。
「おいおい合流しざまにそれかよ? お前、バカにしてるだろ」
不満を隠さず抗議の声を返す勇大に、「だって。ねぇ?」と
覇司魔に同意を求めるてんま。覇司魔は迷うことなく、ええと同意の頷きをする。
「雰囲気で人を見るんじゃねえよ、まったく」
「それしかあなたの判断基準がないんですから、むりもないですわよ先生」
「大層な敬称つけてるわりに、その態度なんだからなぁ」
やれやれ、と冗談めかした疲労の声を続ける勇大。
それに女子二人は楽しげな笑いを返す。
「そこの団欒、待て!」
第三者の声に、三人は先頭の勇大から順に速度を緩めて止まる。
「声?」
「響いていますわね、上から?」
「出てこいよ、隠れてるんだろう?」
「そこで素直に止まってくれるのは、こっちとしてはありがたい。とあっ!」
勇ましい声と同時、何者かが覇司魔の推測の通り飛び降りて来た。
「そいや!」
続けてもう一人飛び降りる声。降り立った二つの影に、覇司魔と勇大は驚いた。
「よう、さっきぶりだな」
「シグマドが二体かよ。けど、なるほど。あっちにいるヘリアルだっけ?
あれの数が、ザックリシグマド二体分程度いたのに納得できたぜ」
「あなたは、わたくしたちが逃がしたトカゲ怪人ですわね。
どうしてまた出て来ましたの?」
「こいつといっしょに、あんたらを足止めするように頼まれて、な」
「おい、青いのはどうした?」
二足歩行の狼が、青黒い鎧を付けた姿のシグマドは、
トカゲシグマドを無視して、標的を探して三人を見回す。
「わたし、あなたになんて合ってない」
青いのと言えば、この三人の中ではてんまである。
ゆえに自分のことだと思い、てんまは困惑の表情で発したのだ。
「お前も青いのか? たしかに、頭青いしな。
けど、俺が探してるのはお前じゃねえ、青いローダーだ。
俺を一撃で変身解除させやがった奴。変身してたのは男だったぞ」
「たぶんそれ、アルターのパニオンフォームのことだな。
悪いけど、そいつは俺達が向かってる場所で、とんでもねえのと戦闘中だぜ」
「そうか、しかたねえ。頼まれごと、するか。
怪我の直し方教えてもらった恩もあるしな」
「怪我の直し方だって?」
「お前らには関係ねえ話だ。さ、遊んでもらうぜ」
「今回は、俺の実力、見せてやる!」
「おいおい元気だなぁ、二対一で尻尾巻いてた奴がさ」
「う、うるせえ! いくぞ!」
「まったく。人の都合を考えないだなんて、嫌われますわよ」
「やかましい!」
「こっちも時間がねえ。みんな! 変身するぞ!」
気合の声で促す勇大。しかし女子のリアクションは、二人とも笑みである。
「ノリノリですわね、先生」
「戦隊リーダーみたいですね、勇大さん」
「こういう時は、『おお!』ってノってくるもんじゃないのかよ?」
力の抜けた声で言う勇大に、少女たちの表情は再び緩む。
「みんな、だと?」
驚くトカゲシグマドだが、一方狼闘士シグマドは
「へえ?」と面白そうに状況を静観する構えだ。
「トカゲ怪人さんも驚いてくださっていることですし、いきましょうか」
「そうですね」
「お前ら、俺の気合を返せよな」
「ったく」と言うのと同時に勇大は、鯉口が右側に来るようになっている
鞘のデザインされたバックルを、力強く右手で叩いた。
『プライマライズ、オーダー』
ベルト型ツール、キャリバードライバーから女性音声が流れた。
それを聞き、少年は左手を右腰のプライマライズキーへと延ばす。
てんまは右の拳を握りしめ、その腕をゆっくりと肋骨の高さまで上げ
めいっぱい左に伸ばす。そしてブレスレットの宝石に左手で触れると、
宝石が青い光を淡く放ち始めた。
その青は銀の色を纏い、てんまの体を包み込んだ。
覇司魔は、指輪の宝石トゥインクリスタルに左の人差し指で触れる。
すると、カーンと言う甲高い音が指輪から鳴る。
「トゥインクルチャージでござリーナ!」
覇司魔の左肩のヘンカワリーナの力強い声。
シグマドはそれに驚くが、
それに構わず覇司魔は続けて、トゥインクリスタルに二回、三回と触れる。
すると徐々に音のトーンが上がるのと同時、クリスタルが放つ光が、
赤 緋 そして金色へとかわった。
「コーディネート、スタンバイ!」
ヘンカワリーナの宣言、それと同時に銀の小さな猫の色が金色へとかわる。
その色は、輝く光。太陽の輝きの色。
相棒の言葉に答え、覇司魔は指輪 トゥインクリングを外すと、
刀のグリップエンドのくぼみに
トゥインクリスタルが相手に刃を向けた時に正面を向く角度ではめ込む。
すると、ガチリとロックがかかった。
手の甲をシグマドに向けていることで、ブレスレット
ーーグレイルチェンジャーの装飾を見せたまま、動きを続けるてんま。
「神杯装甲」
肩幅まで足を開くのと同時に右腕をめいっぱい右へと薙ぐように振るう。
「開放展開!」
下腹部前に移動した右腕を、拳を開き指をくっつけた形で
今度は天へと振り上げた。
それが完了した直後。てんまが青い光に包まれた。
掴んだプライマライズキーを、
「変身!」
の声と同時に居合いのように、勢いよく真上へと放り投げる。
落下して来る小さな剣を、右腕を思い切り上へ延ばしてキャッチ、
そのままキャリバードライバーの右から、
納剣するようにガチャリと差し込んだ。
『レヴォリュート、マイロード』
ドライバー音声が終わると、少年の周りに、まとわりつくように闇が生まれた。
『プライマライズ、ローディング』
様々な色の光がその闇を塗り替えながら渦を巻く。
『モディフィケーション』
その光は少しずつ色を少なくして行く。
「トゥインクル」
覇司魔はその言葉に合わせて二度手を叩き、
「フュー」
両腕を広げて一回転。
「、ジョン!」
両手を打ち合わせる。それと同時にヘンカワリーナが飛び上がり、覇司魔の頭に乗った。
その動作が終了すると、刀にはまったトゥインクリングと
輝くヘンカワリーナが、刀共々覇司魔を包み込む形で黄金の光を放った。
ヘンカワリーナが、正面に真っ赤な太陽をあしらったティアラに変身。
ポニーテールがほどけており、髪型がロングヘアに。
髪色が黒から金髪に。まつ毛と目の色が金色に。
両耳には星のイヤリングが一つずつ。
鎧の星は全て銀から金に。
ペイルブルーのアームカバー兼グローブが現れ、
足は光を反射しない金色のロングブーツに代わり、
最早葉月寺覇司魔の面影が見えないほどに、文字通り「変身」した。
刀の刃も銀から白金色にかわり真の力を開放。
光彩刀サムライトブレードに変化した。
「姫侍」
手でハートを作り、
「剣」
一回転。
「斬!」
正面に戻りつつ右手で手刀。
「トゥインクルサムライ」
手刀のまま刀を掴む直前の位置まで手を下ろし、抜刀の真似事をする。
「ステラコーデ」
その手を開いて振り上げる。
「参りますわ」
右手を胸の前に置きつつ、右目でウィンクした。
てんまの光が収まると、そこには。
青い上下に、赤いフリルが肩 腕 ロングスカートと多数についているゴスロリファッション。
胸の部分には髑髏を逆さにした聖杯、そこから炎が吹きあがっているデザイン。靴は赤い無地のスニーカー。
グローブは赤。顔は青い仮面に赤く丸い目 額にチェンジャーの装飾である勾玉。
左腰には大型の銃型の物を、ローライドに装備した、
そんな姿になったてんま。
「銃王」
両腕でチェンジャーと胸の髑髏を隠し、
「聖圧」
自分の体で十字架を作り、
「グレイル」
左腰の銃器 ヤキウチガンを両手で抜き放ち、そのまま正面に構える。
「ブルー!」
声と同時にヤキウチガンの銃口内に、紅の光が充填されて行き、
名乗り終えたところでてんま ーーグレイルブルーは両手でトリガーを引いた。
引かれたトリガーを受けて、紅の光は一条の線となって敵陣へと飛翔した。
エネルギーチャージを見ていたおかげで、二体のシグマドは
どうにか左右に飛ぶことで回避する。
『キャリバーセットアップ、コンプリート』
ドライバー音声が終わり、石ノ森勇大は
可能性の力を纏いし一人の戦士へと姿を変えた。
プライムローダー・キャリバー。
アキロノスエネルギーを用いた、対怪人用装甲プライムローダー。
その二体目に完成した鎧である。
「不意打ちとはずいぶんな戦隊ヒーローがいたもんだなぁおい!」
狼闘士シグマドは、ヤキウチガンによる名乗り直後の射撃に猛抗議である。
ただでさえ鋭い目が細められ、最早一本の線だ。
「しょうがないの、これがわたしたちの変身なんだから。
これがヘリアルたちを減らすのに効率的だから、
変身のパワーの余剰を攻撃に使おうって、そうなったの。
背景に放出するんじゃもったいないからって」
ばつが悪そうにてんま、グレイルブルーが答えた。
「衝撃ですわ。まさか、名乗った後の背景爆発に、
そんなメカニズムがあったなんて」
最早このリアクションを見なければ、お前誰だと言われることは必死な覇司魔、
トゥインクルサムライ・ステラコーデが、言葉通り驚愕の表情と声で言った。
「しみついた変身ポーズってことか。しかたねえ、よけられたから許してやるよ」
諦めた声で狼闘士シグマドは、投げ捨てるように言う。
「さて、トカゲさん」
「な、なんだ?」
覇司魔があまりに別物に代わりすぎて、
自分も別物になっていることを棚に上げて、動揺するトカゲシグマド。
「どうしてわたくしが、あなたにまた出て来たのかを尋ねたか
おわかりですか?」
「単純にびっくりしただけじゃないのか?」
「いいえ。違いますわ」
「なら、どういう理由なんだよ?」
「あなたがご存じかはわかりませんが。わたくしの元々の世界、
特に仮面ヒーローにはお約束がありますの」
「お約束?」
「ええ。それは」
「それは?」
もったいぶった言い方に、ついペースに乗せられてしまっているトカゲシグマド。
それに気分をよくしているのか、覇司魔 トゥインクルサムライは、
勝ち誇ったドヤ顔で力強く言い放った。
「再び出て来る怪人は、瞬殺される」
「なに!?」
「ですから、心配したんですの。
あなたは戦いたがるような方ではないと感じましたので。
だって、わざわざやられに出て来ることはありませんもの」
「くそっ、そんなことわざわざ言うなよな。ちくしょう」
なにか思うところがあるのか、トカゲシグマドは噛みしめるように、
呟くように言葉を発した。
「まじめに受け取んな。そんなのは映像作品での話だぜ。
俺達がそうだとは限らねえだろ」
狼闘士シグマドに注意され、「あ、そ、そっか」と持ち直すトカゲシグマド。
「こ、こいつ。なんて心理戦を」
同様冷めやらぬトカゲシグマドは、覇司魔を睨み付ける。
その闘志を見て、覇司魔は一つ、ゆっくりと頷く。
「現在、お互いに戦力が一人増えているとはいえ、
わたくしはこの通り変身しています。さて、お約束、
覆せるかしら?」
挑発的な笑みで言われ、トカゲシグマドはグググと自らの右拳を
いらだちに握り込む。
「事実は小説より奇なり、ってこと。見せてやる」
トカゲシグマドの言葉に、逡巡した覇司魔こと
トゥインクルサムライ・ステラコーデは、指摘せずに空気を読んで
「いらっしゃいな」と、刀は抜かずに構えを取った。
「お嬢。自分の力がわかってるんならかまわねえけど、やりすぎるなよ」
「わかっていますわ。言うまでもないかもしれませんが、お二人もご注意を」
「わかってます」
「敵を前にして手加減の相談とは、ずいぶんと余裕だなぁお前ら!」
狼闘士シグマドも、トカゲシグマド同様、三人の態度に闘志をみなぎらせる。
「あの超連打分身攻撃喰らわなきゃ、あんな速攻でやられるわけがねえんだ。
いくぞ!」
「よし。いくぞ二人とも!」
「はい!「ええ!」」
ここにまた一つ、異世界を巻き込んだ戦いが始まった。




