フェーズ1。夢を鎧う者たち。
この作品に登場する、ぷちミント他作品の人物の状況は
この作品オリジナルであり、イフの展開になっています。
アキロノス粒子。
眠って見る夢。その中には、夢を見ている当人から見て
どう見ても異世界にしか見えない場所で繰り広げられる、そんな物がある。
その時にだけ観測できる、特殊な粒子を発見した者たちがいた。
彼等の研究では、通常我々の暮らす世界では、
その粒子の動きが早過ぎて観測できないが、
夢と言う限定的な条件でのみ、眠っている人間の脳の電気信号と
結びつくことで観測できると言う。
その、普段見えないほどに早い粒子を観測した彼等に、
流れ続ける「時」と言う物を操作できるのではないか、
と言う考えを生み出し、研究に没頭させることになった。
この粒子は、早さと時を合わせて、神話の英雄と神の名から、
アキロノス粒子、と名付けられた。
研究が進んだ末、そのエネルギーを取り出すことに成功する。
アキロノス粒子が取り出せたことで、タイムマシンの開発へと
飛躍した研究者たちの思考であったが、アキロノス粒子は
同じ方向にしか動かない。
つまり、進むことはあっても、戻ることはないと判明してしまう。
人類のロマンの実現はロマンに終わってしまったが、
そのかわりにアキロノスエネルギーは、「異世界」の存在を
証明することとなった。そしてその数が無数であることも。
なぜなら、このエネルギーを取り出す際、
物語でしか見たことのないような物が、モニターに映し出されたからだ。
サブリミナル効果のように僅かな時間表示される
異世界の光景、人物を彼等は調べて行くのと同時に、
更なるエネルギーの取り出し効率の向上に努めた。
そうして、一定の世界からのエネルギーの取り出しを可能にした研究者たちは、
自分たちの研究が、自分たちの世界に変革をもたらしていたことに
気付くことができなかった。
異世界の力。
可能性の力とも言うべき、アキロノス粒子を取り出し続けたことで、
世界にアキロノス粒子が霧散し、その可能性の力は、
特撮ヒーロー作品で言うところの、怪人に近い物を
生み出してしまっていた。
シグマドと呼ばれるその怪人は、映像作品がそうであるように
圧倒的戦闘能力で、人々に恐怖を与えていたのだ。
そして、それに対抗するために、アキロノス粒子は
「力に対する力」を生み出すためのエネルギーとなっていた。
******
『直樹君、近くにシグマド反応、座標は送ってあるわ』
「わかった」
女性との電話を終えると青年、倉沢直樹はスマホを持ったまま駆け出した。
走りながら地図アプリを起動、赤い点を確認する。
「青い点が他の赤に向かってるな。ちかごろシグマドよく出るから、大変だぜ」
ふっと軽く溜息を吐き、進行方向に視線を向けて、
いったん緩めた走る速度を、元の速度に戻した。
「しかし、複数同時はまだしも、強化されてるのは
どういうことなんだ? こないだ見かけた金色の奴か?」
思考を巡らせていると、人の悲鳴が聞こえ始めた。
「やれやれ、ちょっとは慣れてくれないかね、一般人の方々は?」
愚痴りながらも、直樹は混乱の中へとそのまま走り込んでいく。
「シグマドがいる周辺は、風がピリピリしてるからすぐにわかるしな」
よく晴れた昼間。景色だけを見れば、なんの変哲もない日常。
最早この世界では日常化している、
怪人と、それに対抗する者との小競り合いである。
「わざわざ死にに来るとは、バカな奴だな」
いかにも調子に乗っていると言う風な怪人、シグマドの言い方に、
直樹はニヤリと笑う。
「ほう? ずいぶん余裕じゃねえか。この多勢に無勢なのに」
腕を広げる、二足歩行で素手の狼が鎧を着た、
狼闘士とでも形容できる姿のシグマド。
直樹が腕に視線を導かれると、そこには大量の人型がいた。
その量産型のような人型は、全身黒尽くめながら
白い兎ののっぺらぼうを描いたような顔をしている。
「それはどうかな?」
あくまでも余裕を崩さず、直樹は不敵に口角を吊り上げる。
そして、ゆっくりとスマホに手を伸ばす。
『ゼロ! ゼロ! ゼロ!』
ボタンをタッチするのと同時、妙にテンションが高いスマホからの声。
それに答えて、直樹はチェックと発する。
直樹の声に、『アルター!』と答えるスマホ。
音声の後、タッチパネルが数字から顔アイコンに切り替わった。
九つあるアイコンのうち、番号で言う4の位置に指を置く。
『カグヤ!』
隣り、5の位置に指を置く。
『ディアーレ』
更に隣り、6に指を置く。
『百鬼姫!』
「ロード」
『レディーゴー!』
「まさか、お前?」
驚愕するシグマドに、「気付いたところで遅い」と静かに答える直樹、
徐にスマホを、左手だけに持ち替え、右手でバックルを叩く。
すると、バックルの左側面が開いた。
「変」
呟くように発しながら、スマホを今開いたバックル、
アルタードライバーの左側面、その真横に持って行く。
「身!」
そのまま左手だけで、スマホをバックルに叩きつけるように滑らせる。
すると、バックルにガチャリとスマホが噛み合い
そのまま蓋のように、バックルの左側面が閉じた。
『お前がかわる!』
直樹の回りに、まとわりつくように闇が生まれる。
『俺が変える!』
様々な色の光がその闇を塗り替えながら渦を巻く。
『プライマライズ!』
その光は少しずつ色を少なくして行き、
そうして一人の戦士の装甲へと変化した。
『パニオン!』
青い卵型の顔に、黒い猫耳にしか見えない部分がある。
緋色の細い瞳をしており、額には新円形の黄色地に青いPAの文字。
太い黒い線、アキロノスエネルギーを供給するアキロストリーマーが、
満月を繋ぐように額を一周しており、
額当てとハチマキのような形になっている。
黒いマスクは大きく、顔の下半分を覆う。
そのマスクとハチマキを繋ぐ形で、
白いストリーマーが、両方の側頭部を縦に走っている。
首の四隅にも白いストリーマーがあり、腰まで繋がっており、
更に腰から足首まで続く。
左胸に白文字で、PR01とデザインされた
緑のジャケットのような装甲を羽織っている。
青い上半身には、五本の銀色のブレード型が、
前後の同じ位置にデザイン。
灰色の両腕。その左の二の腕には、白地のタッチパット。
左右の首から肩を通って手首まで、黒い太いストリーマーが
腕の外側 内側に走っている。
脚部装甲は全部黒で、内側に螺旋形の線が紺色で四本走る。
拳は茶色で、足は灰色。
アキロノスエネルギーを用いた、対怪人用装甲、その最初の一体。
プライムローダー・アルター、そのスピード特化型フォーム、パニオンである。
『トゥー、ゼロ、ゼロ』
左二の腕のタッチパットに、右手で触れている。
「チェック」
『フェイタルオーダー!』
この声を確認し、直樹 プライムローダー・アルターは、
再びパニオンフォームを入力する。
「ロード」
『ぶっ壊すぜーっ!』
「なにぃっ?! 分身した!?」
狼闘士シグマドが驚愕するのもむりはない。
スマホ ーースマホ型ツール、プライマライズフォンが発した声の直後、
複数の、パニオンフォームのアルターが出現したのだから。
「一体一体、そののっぺらぼうの相手をするのはめんどうだからな」
言うと、アルターは右手でバックルを叩く。
すると分身たちが動き始めた。
「なっ!?」
一斉に量産型人型、異世界でラグナレイドと言う人類を滅ぼそうとする存在の
雑兵として召喚される者たち、ヘリアルに対して、
分身アルターたちが飛び蹴りを放ち始めて、シグマドが驚愕したのである。
「お前は、俺が相手してやるぜ」
言うと、右の二の腕に左手を添えるアルター。
すると装甲が開く。そのまま中身を取り出すと、それは小さな、
おもちゃの銃のような物。
装甲が閉まる。それを気にも留めずに、おもちゃのような銃
アルタートリガーを右手に持ち帰ると、
それをバックルの右側面のスロットに差し込んだ。
『シャドーブランチャー!』
高らかにアルタードライバーが宣言すると、
ジャケット装甲の内側に腕を突っ込むアルター。
カチャリと言う独特の音が鳴る。
「こ、この。なにするつもりだか知らねえが、
シグマドの俺を、簡単に倒せると思うなよ!」
急激な状況の変化にどうにか付いて行った感じのシグマド。
「受けきれるかな?」
仮面の裏でニヤリと不敵に笑い、
分身とヘリアルたちをうまくさけながら走り込み、
両腕を勢いよくジャケットから抜き放つ。
そこに握られていたのは、
緑の光 ーーアキロノスエネルギーを帯びた二本の刀、カクシ・ブレード。
カクシ・ブレードを抜き放った勢いを利用して、
地面を蹴って敵に向かって跳ぶ、プライムローダー・アルター。
「でやあああ!」
大上段にカクシ・ブレードを振り上げ、気迫の叫びと共に、
それを敵に向かって、二本同時に振り下ろした。
「ぐあああああ!!」
耐え切るつもりだったのだろう、逃げずに構えていた狼闘士型シグマド。
しかし、その威力が想像を超えていたらしく、耐え切れずに吹き飛ばされ、
派手に地面に背を打ち付けて、二度ほど余力でバウンドした。
「人に戻れシグマド。今の一撃でお前のアキロノスエネルギーは
肉体の限界を超える。爆死するぞ」
華麗に着地したアルターは、そう言葉をかけながら、
カクシ・ブレードを、一度で二本とも納刀する。
「こ、の、ダメ、ジで、か。んぬあああ!」
気合の声と共に、狼闘士から緑の光が弾け飛ぶ。
光が収まると、そこにあったのは一人の少年の姿だった。
「ぜぇ……はぁ……」
「間に合ったか」
安堵するアルターは、しかし姿を変えないままだ。
「くそ。覚えてろよ!」
言うと少年は、悔しさに歯噛みした、どこか悲痛な表情を見せて
アルターに背を向けて駆け去って行った。
「最近多いな、俺より年下のシグマド化」
ふぅと、一つ長い息を吐く。
「さて、援護に回れそうな戦場は」
言って、アルターは左腕のタッチパットを操作し、地図アプリを起動する。
「ちょっと遠い、か。ならこのまま行くか」
プライムローダー・アルター、倉沢直樹は地図アプリを終了すると、
速度に優れるパニオンフォームのまま、次の戦場へと走り出した。
「まだだ。まだ、足りない」
そんな直樹の姿を見て、一人呟く声があることを、
直樹は知らない。




