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9・世界観?そんなものは知った事ではない

 隠れ里で天糸やルチル鉱石を受け取り、我々は帰途に就いた。


 村へ帰って里の存在を伝え、天糸を執事や鍛冶師にも見せると大変な驚き様であった。特に鍛冶師など顎が外れそうな状態である。


「ななな・・・、天糸だと」


 そしてしばらくすると、鍛冶師は機織りを呼び寄せると言い出す。


「そいつが定期的に手に入るというなら鎧着に仕立てるべきだ!」


 と言って聞かないのだが、私はまず自分の鎧に使いたかった。


 そのために合間を縫ってルチルからチタン塊を練成している。ただ、チタンが鉄より軽いと言っても相当な重さになるので、フルプレートは諦めた。アレは無理だ。


 かと言って、せっかくあるチタンを使わないのも口惜しく、鍛冶師も興味を示したが手に負えなかった。


 三度目の春を迎える頃にはせっせとオットや有志達による街道再生組が隠れ里までの整備に精を出している。目的は言わずと知れているし、私も訪れたいのはやまやまだ。


 その間にも岩塩を求めてあちらからの来訪も受けた。


 その時にも新たに染めた天糸を持って来ていたが、鍛冶師はそれがお気に召さない様子だった。


「天糸とは綺麗な白であるべきだ。染めてしまっては・・・、染める?!」


 お気に召さない以前に、その価値を測りかねているといった方が良いかもしれない。


 今回持ち込まれた天糸は濃い紅色と藍色であった。この糸とチタンであればよく似合う色合いになるだろう。

 そこでふと思いついたのが、前世の甲冑である。鎧下を兼ねて天糸を使うのはもちろん、小さなチタン板をこの糸で繋ぎ合わせれば、高い防御力と鮮やかな色合いが両方とも得られはしないだろうか?まあ、重いのに変わりはないが・・・


「鎧なら作っちゃるがよ。え?おんしも手伝う?」


 私が作ろうとしているのは具足と呼ばれるモノなので、金属や皮、さらに布を組み合わせて作ることになる。鎧下だけを作って来られても困るのだ。


 という訳で、鍛冶師が呼ばずともこちらで機織りを確保することは出来そうだ。


 さて、鍛冶師が機織りを呼ぶだとか、隠れ里の機織りを村に迎えるだとか言っているが、私も当初は反物などに仕立てた織物を隠れ里で織り、それを村に持ち込めばよいではないかと提案した。

 しかし、隠れ里ではそれは出来ないと言われた。理由は簡単である。防刃布を一体何で裁断するというのだろうか?刃物で斬りつけられても切れない布を・・・


 と言う事で、糸として持ち込み、必要とする場所でそのまま服に加工するのが常識だと言われてしまった。


 なるほど道理だなと、糸のみを持ち帰ったのである。そして、白い天糸はそのまま伯爵家へ送ることとした。私が使うのは染められた糸である。そちらを使う限り、我が国で目をつけられることもないだろうと考えたからだ。

 そんな事もあり、里から訪れた者たちには岩塩だけでなく、荷車や圧縮木材を用いた弓、鋼製農具なども持たせることにした。

 さすがに機織りを寄こすと言っている相手に岩塩だけではつり合いが取れないと思ったからだ。


 そうしてやって来た機織りに甲冑のデザインを指示し、それに沿って織りあげてもらう。私もそれに間に合うようにチタン板の練成を行った。

 完成したチタン板は機織りの元へと渡し、板を縫い合わせて鎧の形に仕上げてもらった。


 完成したのは夏を迎えた頃だった。


 藍色の鎧下や青紫に輝くチタン板を紅色の糸で縫い合わせた甲冑は見事な色合いをしており、眺めているととても綺麗だった。


「さすがに重さを感じるな」


 確かに鉄製に比べてはるかに軽いのは確かだろうが、それでも重量を感じる。


 完成した私の鎧を見て羨ましそうにしているオット。


 彼にもフルプレートの下に着る天糸製の鎧下は用意したのだが、藍や紅の糸に青紫に光る鎧と言うのはかなり羨ましい様だった。


 さらに、簡易な革鎧しか身につけない兵士たちの事も考えると、似たような鎧を揃えるべきではないかと思えて来てしまい、オットには大鎧風な大型の袖を持った私の鎧とは仕様が異なる、より当世具足風な鎧を鉄板を用いて作り、兵士たちにも藍糸で織った袖と圧縮木材の胴に革の小札を紅糸で重ねた草摺りを垂らした腹当、さらに見栄えも兼ねて革にチタン鋲をあしらった鉢金を用意する事にした。

 以前より兵の数は増え、今では50人に達している。私を含めて全員の鎧が揃えば、世界観と時代を間違った武士団が出現する事になる。


 さらに機織りから村の鎧の事が伝えられた隠れ里でも製作依頼があるとかで、軽快性重視な隠れ里用に、さらに腹当てが100ほど製作されることになった。

 そして、ダナ用にとチタン板を用いた腹当てと鉢金の注文が来る。ここってどこの世界の戦国時代なのだろうか?

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