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4・イッツ、オブローディング!!

 本格的に冬が到来し、あたり一面雪景色となった。


 盆地、辺境という条件から伯爵領より雪深く寒さ厳しいものと考えていたのだが、雪の量に大差はない様に思われる。


 そして、そんな状態だからこそ分かるものもあった。


 それは、南北へと真っ直ぐ伸びた一本の道。正確には、ローナン街道であった痕跡だ。


 ここは過去に開発された土地とあって盆地の大半には大木が存在せず、比較的開拓には向いている。

 とくに北へは山がなだらかに高さを下げ、拓けているので交通の便は悪くない。


 しかし、南は山が険しく高さを増していき、今では南へ繋がる道は無いとされる。

 そんな行き止まりの場所をわざわざ開拓する需要は長らくなかったのだが、伯爵領に残る手頃な未開拓地として、この度開拓が始められたのである。


「なるほど、これがローナン街道か」


 下草が枯れ、雪により稜線がハッキリ判る様になると、その姿に驚きすら覚える。


 その道幅は楽に馬車がすれ違える広さを有し、通行の支障となる高低差もほぼ取り除かれている。


「これは南の果てが気になる光景だ」


 盆地の先に道は無い。


 正確には、今はという但し書きが必要だが。


「では、探索してまいりましょう!」


 オットがそう叫び掛けるが、脳筋に任せられる任務ではない。


「いや、一人に任せる様な事ではない」


 私は言葉を選び、そう否定した。


「川は南へと流れています。ならば、きっと道も存在しているはずです!」


 なぜかオットがらしからぬ事を口にして来る。


 だが、山間を流れる川と言えば渓谷が付き物。既に流れに呑まれたか崩れて道跡すら追えないと見て良いのではなかろうか。


 そんな説明をすると、流石に納得したらしいのだが、そこに爆弾を投下したのは執事であった。


「ネーレ山脈には迷宮と呼ばれた場所があったとか。この先が渓谷ならば、迷宮はそこであったのやもしれませんな」


 その言葉に目を輝かせるオット


「なんと!でしたら私の出番です!巨獣であろうと倒してご覧にいれましょう!!」


 要らん一言からもはや引き返せない程に盛り上がる脳筋。


 そして、私も気になる。


 そんな訳でさっそく探索の準備が行われ、二日後には出発となる。


「旦那様が直接向かわなくとも宜しいかと」


 そう苦言を呈す執事を振り切り、まだ見ぬ迷宮を目指す旅が今始まる。


 荷物持ちを加えても5人という小規模な探索隊だが、この開拓村にとって5人は多い。

 これが冬で無ければ、まず実施出来なかっただろう。


 一日目は単調だった。


 ただ雪の上を進むだけに終わり、オットの指揮でカマクラを作り暖を取る。


 二日目は既に見えている渓谷へと足を踏み入れたが、道は川に呑まれずシッカリその形を残している。 

 ただ、これが緑豊かな時季であったなら、足の踏み場もないほどの草に覆われていただろう事が、雪から覗く枯れた長い草から覗えた。


「出やがったな!」


 オットがそう叫んで森を睨むこと暫し、ガサッという音で熊の姿が一瞬見えた。


「どうやら去って行ったみたいだな」


 口惜しそうなオットに代わり、私がそう口にした。


 二日目もそれ以降は何もなく、この道を再整備すれば使えるのでは?と思う様になっていた。


 まだ迷宮らしいものは現れていない。


 三日も渓谷を進む。


 川幅もあって水かさも知れているが、雪解けを迎えれば途端に増えるであろう事を川原が教えてくれる。



「む。これは無理ではないか?」


 昼を過ぎた頃、渓谷は急に明るさを増した。


 それはこの先に崖が存在する前兆なのだが、道に逃げ場はない。 


 そう思ったのだが、川が滝となって落ちる寸前、道は緩やかに曲がり、崖に穿たれた方洞門となって続いていた。


「これは凄い」


 余裕をもって馬車が行き交える幅を持ち、崖側は一段高く路肩が作らられ、転落防止が図られている。


 さらに進むと完全にトンネルとなり、僅かな明かり窓から明かりが射し込むだけとなっていた。


「なるほど、これは迷宮だ」


 等間隔に並ぶ明かり窓のみが頼りのなだらかなカーブを描くトンネルは、まさしく迷宮に相応しい雰囲気をもっていた。


 しばらく歩くと行く先が明るくなり、出口となった。


 かなりの長さを歩いたはずで、ふと振り返れば見上げる高さをから滝が流れ落ちるのが見える。

 さらに、雪もほとんど無くなっていた。


 気候も違うのだろうか、それとも岩肌が露出した地形からだろうか。木は疎らとなり、視界は広いが目の前には道の終わりも見えていた。


「橋が落ちていますな」


 石造りの立派な橋が途中から崩れている姿が見える。


 他の道筋を探そうにも、岩肌が露出したやや広がった渓谷が続いており、容易に歩ける場所はなさそうなだった。


「あの橋を直せませんかね」


 オットがそう呟く。


 直せるかと問われれば、間違いなく錬金術で直せるが、村の事で手一杯な現在、街道をここまで整備し、人を揃えて橋の修復に当たるなど、到底無理な作業である。


「無理があるな」


 私はハッキリそう口にした。


 トンネルにしても魔力の感じからしてきっと魔法で掘られている。それが地属性魔法によるモノなのか、私の知らない錬金術の術なのか興味があるが、それを考えるのは今ではないだろう。



 


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