第116話 頑張るあなたのために
「ね、ねえ、アリスちゃんっ。ホントにこの格好でするの?」
私は何度目になるか分からない質問をする。
「もちろん! そのほうがモチベーション上がるもん!」
「で、でも……」
姿見で自分の格好を確認し、赤面する私。
チアガールの衣装なんて、初めて着る。なんだか落ち着かない。
すこしちいさなサイズだからか、スカートは短いし、おへそは見えそうだし……うぅっ。
「お姉ちゃん、私がんばって勉強するから! お姉ちゃんもがんばって応援してね!」
「う、うん……」
私のちいさな返事の背に、アリスちゃんは机に向かう。
うぅ、ほんとにしなきゃダメかなあ……
未だ躊躇いつつ、私はどうしてこんなことになっているのかを思い返していた――
「お姉ちゃん、お願いがあるの」
朝食のあと、いきなりそう言われた。
こういうとき、決まってアリスちゃんは変なお願いをしてくる。
だから、今回も……
最初からそう思ってはいた。いた、んだけど……
「これを着て、私を応援してほしいの」
そんなわけで、私はチアガールの衣装を着てアリスちゃんを応援してる。
テスト勉強をしているところを、応援してほしいんだとか。
それは分かったけど、でも……
「あの、アリスちゃん。平気? これ、逆に気が散ると思うんだけど……」
「そんなことないよ!」
アリスちゃんはシャーペンをノートの上に走らせながら、キッパリと言った。
「私、お姉ちゃんに見られてるってだけですっごいことができるからっ!!」
「そ、そっか……」
それならいいんだけど……
いや、よくない。
危うく騙されるところだった。
私はチアなんてやったことがないから、完全に見様見真似。
足を上げたり上を上げたり……そのたびに服の裾が引っ張られて、スカートの裾は翻って……
ちらりと姿見を見ると、見えちゃってた。スカートの奥の下着も、おへそも、腋も。
そんな自分の姿に、妙にドキドキした。なんか変な気持ちになってきた。アリスちゃん、そろそろ終わらせてくれないかなあ……
「もう、ダメだよ、お姉ちゃんっ!」
突然そんなことを言われたのでビックリした。アリスちゃんは至極真面目な顔をしている。
「そんな応援の仕方じゃ、みんながんばれないよ! 私はがんばれるけどっ!」
「うえぇえっ!?」
そ、そんなこと言われても……
「だから、私が教えてあげるね。応援のしかた」
そう言うと、アリスちゃんは私の後ろに回り込んできた。
アリスちゃんの手が、そっと私の腕に触れる。
「ほら、こうやってやるんだよ」
言いながら、アリスちゃんは私の腕をきびきびと動かしてくる。
けれど、動きが大きいからか、一人でやっていたときよりも、腋もおへそも見えてしまっていた。
「ぁ……っ」
それを見たとき、カァっと頬が赤くなる。ブラまで見えちゃった。
「どうしたの?」
「な、なんでもない……っ!」
サッと視線を逸らして、目を瞑る。
すると、今度は足に違和感があった。なんだろう……
「……っっ!!」
姿見に映った私は、大きく足を上げていた。
スカートでそんな恰好をしているわけだから、私の下着は丸見えになっていた。
「やっ、ダメ……見ないで……っ」
必死に裾を引っ張って隠そうとするけれど……ダメ、短すぎて隠しきれない……っ。
「ダメなのはお姉ちゃんだよ。ほら、こうやって……」
アリスちゃんに言われるまま、私は足を上げたり、腕を上げたり、ジャンプしたり……
そのたびに、私の脇とかおへそとか下着とか、普段は隠れている場所が見え隠れする。
私は恥ずかしくって、もうろくに姿見を見れなかった。
「ふふ、お姉ちゃんかわいいっ」
吐息みたいに甘い声が、私の耳をくすぐる。そのあとで、耳を甘噛みされた。
「あぁんっ、やぁ……ん……あっ、あっ、だめぇ……っ」
バランスを崩した私は、アリスちゃんを押し倒すようにしてベッドの上に倒れこんだ。
すぐ横に、アリスちゃんの顔がある。
雪みたいに白い肌。金色に輝く髪。青いサファイアの大きな瞳……
本当にキレイ。大好き。大好きな、私の従妹。恋人。婚約者。
一緒にいると、私まで輝いているような気持になる。
「愛してるよ、お姉ちゃん」
「うん、私も。愛してる」
お互いの気持ちを確かめ合うように、私は唇を交わし合った――




