051 ― 過酷な世界で ―
お久しぶりです。約一ヶ月ぐらいぶりですね。
残暑が厳しすぎる今日この頃。いかがお過ごしでしょうか。自分はシんでました…。というか、すっごく悩みに悩んで書いてました。なかなか納得できる出来にならずに四苦八苦していました。なので、また書き直すかもしれませんが…そこはご容赦を…。
では、どうぞ。
ここは兵士たちが集まる駐屯地。
日が落ち暗くなったそこでは、そこかしこで火が焚かれ、最低限の光源は保っている。
あの後、遥たちと騎士団たちは早急にここに帰還した。
怪我をした遥と亜衣、重傷だった兵士のエディンをすぐに治療班へ引渡し、治療を受けさせることとなった。
治療班と言っても“回復魔術”を扱える者は少数に限られる。魔術属性の中でも上位に位置づけられるそれはとても数が少なく、個々の能力の強さもまちまちだ。
遥たちの怪我は比較的軽微であり、回復薬などの併用でどうにかなるものだった。しかし、重度の傷を治すのには道具も魔術も到底至らないものであった。
「彼の命は…あと数日だろうね」
そう告げられた時のショックは相当なものだった。
「ど、どうにかならないんですかっ? ミスティさんっ」
「手は尽くすと彼らは言ってくれたけど、望みは薄いだろうね。魔術は便利なものだけど、万能じゃない」
「そんな…」
彼女の厳しい言葉を聞き、遥は愕然とする。
魔術があったとしても、地球ほどの医療技術はここにはない。もしここにそれがあれば…と遥は考えたがそれは所詮、無い物ねだりに過ぎなかった。
「戦い行く者たちに死は付き物です。今回はまだ一人だけでよかった」
ミスティアと遥が話している横から、ふいに嫌に落ち着いた声がかけられる。
「あ、ジュリィ。怪我は大丈夫だった?」
「私は大丈夫です。これくらいの怪我は問題ありません」
声の主は騎士団長のジュリア・ルミナリーその人。彼女は遥たちが魔族と相対していたのと同時刻に、別の場所に出現した“異形の魔物”と戦っていた。パッと見、大きな怪我はしなかったようだが、美人の枠に当てはまる彼女の額には白い包帯が巻かれており、それが少し痛々しく見える。
遥は彼女の言葉を聞くと唇を噛みしめ、不満を露にした。
「そんな冷たい言い方…ダメだと思います」
「冷たい…ですか」
「はい。だって、人が一人亡くなるかも知れないんですよ? それなのに一人だけで良かったなんて…」
遥はジュリアに食って掛かる。彼女には一人の命が消えようとしている時に、死ぬのは仕方がないと諦めているように思えたのだ。
「優しいですね。さぞや平和な世界で暮らしてきたのでしょう」
「──っ! それは…」
「別に貴女を咎めている訳でも、その世界を非難している訳でもありません。ただ、この世界ではその考えは甘過ぎる」
うぐっと言葉を詰まらせる遥。彼女も馬鹿ではない。そんなことは前々から分かっていた…理解していた筈だった。しかし、面と向かって言われてしまうと自身の甘さを痛感してしまう。
「ここは戦場です。人の死なんて日常茶飯事。次誰にそれが襲いかかるかなんて分かりません。明日は我が身だと気を引き締め、生きていくしかないのです」
淡々と述べた彼女の言葉は遥には計り知れない程の重みがあった。これは実際にこの戦場を生き抜いてきた彼女だからこそ言える言葉なのだろう。
遥はそれについてついに押し黙ってしまい何も言えなくなってしまう。
「貴女ももう休みなさい。魔術で傷は治したとしても体力までは回復しないでしょう。明日はまた何が起こるか分かりませんから…」
「…はい」
意気消沈した遥はジュリアに促されるままテントの出口へ足を向ける。
その姿が消えたところで、ジュリアは口を開いた。
「───話は変わりますが、あの地揺れの原因は分かりましたか?」
ミスティアたちが魔族と相対していた時に突如起こった“地揺れ”はジュリアたちにも届くほどのものだった。まるでこの都市全体が振動しているかのように錯覚を起こすほどのもの。それは、決して楽観視できないものだった。
「いいえ。残念ながらはっきりとした原因は分かってないわ。兵士たちに聞いた限りだと、この一帯は全て揺れていたらしいよ。地下迷宮から呻き声のような声を聞いたって言う兵士もいたみたいだし。…見通しは暗いね」
「そう…ですか。魔族はいったい何を…」
「その件なんだけど。その魔族が去り際に気になることを言っていてね」
ミスティアはあの時のことを思い出す。
“この調子なら明日には復活するでしょう”
彼女の脳裏に焼き付いたこの言葉。不穏な雰囲気があからさまに溢れ出ているその言葉をミスティアはジュリアに伝える。
「…復活?」
「確かにそう言ってたよ。ここの地下に何かがいるような口ぶりでね」
ジュリアは眉根を寄せ、怪訝な表情で黙り混んだ。
この都市は一千年前の戦いで滅びた都市だ。王都と並び立つほどに栄えた筈の大都市は何故か一夜にして滅び去った。しかし、その理由は今だに判明していなかった。魔獣や魔物が暴れたらしき痕跡から、それらの群れがここを襲ったのではないか?と、言われているが、ここまでの大都市が一夜にして滅びるのはやはり可笑しい。
ここには自分たちが知らない…いや、知らされていない何かがあるのか。
「彼女たちを避難させるのも難しいですね…」
「そうね。もう外は日がほとんど落ちているし、今から急いで出立してもそう遠くない場所で足止めをくらうのが関の山。そこで襲われでもしたら手も足も出ないだろうね」
「打つ手なしですか」
結局の所、今自分たちが出来ることは、何が来ても対処できるよう、身体を休めておくことぐらいだった。
魔族がその言葉通りに明日に仕掛けてくるのか、確証はない。しかし、こちらから打って出ることも出来ない以上、無駄に精神を磨り減らすことは悪手だと思えた。
「私はもう一度ヘリオ総隊長に会ってきます」
「どうする気?」
「あの魔導器の許可を得るためです。試作品と聞きましたが、こちらの手札が増えるに越したことはないでしょう」
そう言ったジュリアは出口へと歩き出す。ミスティアは黙ってその後ろ姿を目で追っていたが、彼女が出口に差し掛かる直前、ふと声を掛けた。
「ねぇ、ジュリィ。少し厳しくない?」
ミスティアの言葉に足を止めた彼女は顔を向けずにこう述べる。
「それぐらい承知の上です。ですが、彼女たちはもう引き返せないところまで来ています。この程度で音を上げてしまっては困ります。特に彼女には…この世界の命運がかかっているのですから」
「そうね…」
ミスティアが反論できずに口を閉ざすと、ジュリアは少し悩んだ末にぽつりとこう溢す。
「ミスティア。彼女たちのことは任せます。私はそういうのに向いてませんから…」
「…ふふっ。もちろん」
ミスティアの頼もしい返答を聞き、ジュリアは早々にテントを出た。
ーーー
治療班専用のテントから出た遥は案内役の兵士に連れられ、仮住まいとなるテントへと戻っていた。
「はるはるーっ!」
「はるにゃーんっ!」
「うひゃっ!?」
テントの弾幕を開けると、内側から飛び出てくる二つの影。
「亜衣麻衣! もう動いて平気なの!?」
「あたしはもう大丈夫だよっ。身体は頑丈だからね!」
「わたしもだいじょーぶっ。軽いかすり傷程度だったからね~」
いつもの仲良し二人組。亜衣と麻衣は元気良く身体を動かしてアピールしている。魔術で治したもらったとはいえ、彼女らの丈夫さには脱帽する。
出入口近くで二人と話していると、奥から慌ただしく駆けてくる足音が聞こえた。
「遥ちゃん!!」
「勇二くん!───って、え!? どうしたのっ!?」
泣き腫らしたかのように目を真っ赤にさせた彼。勇二は急いで遥に近づくと肩を掴んで涙ぐむ。
それに彼女は驚き、目を見張る。
「け、怪我はっ!? 怪我はだいじょっ、大丈夫なのかっ!?」
「だ、大丈夫だよ勇二くんっ! 落ち着いて落ち着いてっ」
いつもの平静さを失ったように取り乱した彼は自身の目で確認するように身体中を見回すと、突然へなへなと力が抜けたように地面にへたりこんだ。
遥は彼の変わりように目を白黒させていたが、その様子から自分たちのことで相当な不安と心配をかけていたことを悟る。
「よかった…本当に…よかった…」
「勇二くん…」
「大丈夫だって言ったんだが…自分の目で確かめないと気がすまなかったらしくてな」
横から声をかけてきたのは田中武司。彼は取り乱した勇二の傍でずっと声をかけ宥めてくれていたようだった。
「勇二くん。わたしはもう大丈夫だよ。心配しないで」
「…ああ、ごめん。本当に…ごめん。君まで居なくなってしまったら…と、考えたら止められなくて…」
勇二はそう言って唇を噛みしめ遥を見やる。
遥にはその言い分は十分に理解できた。
一年前に親友だった“彼方”がなくなって、そしてまた“遥”がいなくなってしまったらと考えるといても立ってもいられなくなったのだろう。
(わたしは…負けられないんだ…)
こんなにも心配してくれる人がいる。この世界もこの世界の人たちも守らなくちゃいけないけれど、それよりも負けてはいけない理由がここにあった。
遥はぎゅっと手のひらを握る。少し痛みを感じる。そのズキズキとした鈍痛は先ほどの魔族との出会いを思い出させる。
(明日…何があるかは分からない。だけど、次は…)
今日出会った魔族の女性。その力量は計り知れないもので、今の自分自身との差は相当なものだと感じた。
(聖剣の力を、本当の力を引き出せなきゃ、勝てっこない相手だった)
“聖剣の使い手”。それはただ持っているから使われる言葉ではなくて、使いきってこその呼び名なのだ。
「勇二くん」
遥は彼の名を呼ぶ。
「わたしはもう負けない。未熟者だし、魔法だってまだ使いきれてないけど。必ず帰ってくるから。だから、心配しないで」
「遥ちゃん…」
少しの間無言で見つめ合う二人。
「ごめん、遥ちゃん。最近はホント…迷惑かけっぱなしだね」
「迷惑なんかじゃないよっ」
「そっか。…ありがとう」
調子を戻したらしい勇二は立ち上がって、傍らにいた武司にも声をかけている。
そこでふと遥はここにいない彼女らのことを思い出した。
「あれ? そういえば美衣たちは…? それに天楼院さんも高間くんもいないね?」
「ああ…えっとそうだな…」
姿が見えない彼女たちの名前を出すと、事情を知っているらしい武司が妙に歯切れ悪くこう答えた。
「新井や高間たちについては心配いらない。ただ…天楼院はな…少し危ういかもしれない」
「えっ? 危ういって…」
「先ほどのことで、凄く…落ち込んでいるんだ」
予定では、次次回ぐらいに大混乱に陥る予定。カノンの街以上にやりたい放題になるかもしれません。というか、次回のほうが書くの難しいんですよね。誰だこんなストーリーにしたの…自分だ…。勢いだけで書くからこんなことに…。計画性がない…。
あ、そういえば伝えておくことが一つ。
“カクヨム”の方でまた書き直そうかと思っております。まだ準備段階なのでどうなるかは分かりませんが…。
最近、既に投稿しているものを書き直したりしていたんですが、プランをたてずに触りまくっていたのでよく分からなくなってしまったんですよね。自業自得ですが。なので、いっそのこと一からやるかと思い至りまして。
まあまだどうなるかは分からないので、そうなのかーぐらいに思っておいてください。“なろう”の方を止めるとかそんなことはないので。
ここまで見てくれてありがとうございました。また次回もよろしくお願いします。




