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異端ノ魔剣士  作者: 如月 恭二
三・五章 滅亡ノ鐘
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急襲

ミシェルは厳重な警備の網をくぐって、領主の居室へと侵入。

暗殺者一行の行く末は近い。

 (はり)の上から、ミシェルはでっぷりと肥え太った領主を追跡していると、長柄を携えた重装の兵士二人が目についた。斧槍(ハルバード)である。当然の如く帯剣してもいるが、特殊な重心を持つ長柄だというのにも関わらず、泰然としていた。


 (……出来る。戦うことは避けたいわね)


 斧槍は、有り体に言えば扱い辛い代物だ。単に使うだけならまだしも、一定以上の力量となる為には時間を要する上、穂先が重い。各部の使い分けという特徴もある。通常の槍とは運用が根本的に異なるため、熟達が困難となる。

 即ち、そもそもが儀礼用としてか、余程の実力者でない限りは使わないのだ。それをわざわざ屋内で使うという事は、自信の顕れに他ならない。柄も短くしてあり、取り回しの改善が図られている。得物が単なるお飾りでないことは明白だ。更に、板金鎧(プレートメイル)を着込んでいた。


 ──逃げている時、出会い頭に戦闘へ入らなければ良いけれど。


 それに対して彼女の装備は、鍵縄二本に短く(こしら)えた長剣。護身用にエストック──刺突(しとつ)することに特化した細身の剣──と、投擲(とうてき)用のナイフが六本と言ったところだ。不意討ちであれば勝機を見出だすことも不可能ではない。とはいえ、攻撃や防御に関しては最低限の物しか身に付けていないのだ。エストックにしたって、腰や脇の動きを阻害しないよう、比較的短いものにしている。しかも、(よろい)通しとは言うものの、それが機能するのは鎖帷子(くさりかたびら)に対してのみである。やはり、武装にはかなりの不安が残るところだ。彼女の防具は、厚手の外套(がいとう)程度でしかない。刃を防ぐには、あまりに心許(こころもと)なかった。


 敵を仕留め損ねては元も子もないのは勿論、戦闘時に身動きが取れなくては話にもならない。ナイフの本数も同様の理由だった。

 決定打を欠けているのは詮方(せんかた)ない事ではあるが、最悪の状況が否応なしに思い浮かんだ。

 槍の間合いと、剣の間合いにはかなりの(へだ)たりがある。斧槍の遣い手ともなれば、鉤爪で足を払うなどの崩し技も予想された。詰めを誤れば、一方的になぶり殺しとなるだろう。ミシェルは、険しい目付きで見張りと領主を(なが)める。


 領主は一人で部屋へと入っていった。扉が空いた時、香でも()いているのか、微かに甘いような匂いが感じられる。黙礼し、彼を見届けた二人は巡回へと戻っていった。念のため観察を続けると、衛兵が通路へ消えてすぐに別の兵士が回ってくる。厳重な守りから察するに、居室と見て間違い無いだろう。

 兵士をやり過ごしてきた甲斐はあったと、ミシェルは安堵(あんど)した。

 遮蔽(しゃへい)を取りつつ、扉へ近づく。逃げ出せるよう、下肢に力を入れて押すと鍵が掛かっていない事が分かる。そのまま、音を気遣って静かに侵入。

 調度品の類は、それなりだ。通路と同様に立ち並ぶ柱の白亜が目に明るい。品々に目をやれば、全て()や金など、派手な色で彩られていた。統一されていると言えば聞こえは良いが、それぞれ微妙に色彩が違っている。巨大な寝具も必要性を疑う程に装飾され、持ち主の性格を表しているかのようだ。


 「──ッ!」


 思わず、息を飲む。

 布団の上には、半裸の少女が二人転がっているからだ。茶髪と金髪の娘である。胸が上下しているところを見るに、死んではいないようだ。だが恐らく、心は無事ではない。茶髪の娘は彼女に目を向けていた──が、その瞳は虚ろに光っている。


 束の間動揺が走り、覚悟が鈍った。自身が同じ立場に在ったならばと、投影してしまったのである。彼女らの顔に残る僅かな陶酔と、絶望の色にたじろいだのだ。


 「──誰じゃ貴様! 何処から入った!?」


 ざらついた声が投げ掛けられる。振り向くと、五間(ごけん)先に領主が居た。下品な面貌(めんぼう)で鼻がひしゃげており、肌は(あぶら)ぎって鈍い光沢すら放っている。

 彼女には、それに対して答える言葉を持たない。窮地(きゅうち)において名乗りなど、何の役にもならないからだ。返答の代わりに、得物を抜き様に詰め寄る。


 彼が下がろうと、その勢いはまさに電光石火。彼岸の距離を隔てるものは何もない。為す術なく(おび)える彼の喉笛を、流れるような動作でもって裂きに掛かった。


 「──ぁがッ!?」


 その時だ、ミシェルの後頭部に衝撃が走る。

 意識が暗転しかかっていたが、気力で耐えそちらへと振り向こうとした。

 ──が、それこそが悪手であると痛感することになる。

 剣の鞘が頭上まで振り上げられていたのだ。考えるまでもない、追撃であろう。そこには優男が立っている。暗殺を遂行することで、思考は精一杯だったのだろうか。背後には柱がある。人一人が苦もなく隠れられる大きさだ。今になって気が付いた己に、彼女は落胆した。


 ──あやつらは恐らく用心深い。

 アルシュの言葉、その真意に至り愕然(がくぜん)とする。


 歪んだ笑みはミシェルの怖気(おぞけ)を掻き立てるが、それも一瞬の事だった。


 反応する間もなく、頭頂部に一撃を受け、倒れ伏す。

 これから自身に訪れる得も言われぬ出来事が浮かび、吐き気を催す暇なくミシェルは意識を手放した。

梁の上に立った事ってありますか?

あれ、見た目はそうでもないですが、結構危ないです。

命綱をしていないと骨折は勿論、最悪ポックリ逝ってしまいます。


……その上でよく考えると、この時代。命綱とかないですよね。

仮に巨大な城の屋根や尖塔から足を踏み外せば、落差は二十間じゃききませんね、恐らく(汗)

下でミートソース宜しく、エグいことになると思います( ; ゜Д゜)


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