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異端ノ魔剣士  作者: 如月 恭二
三・五章 滅亡ノ鐘
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追跡 弐

 赤雷が近くに待機していたアルシュに合流する。顔を合わせるなり、彼は状況を手短に話した。現段階での想定は、男がミシェルから逃走し城へ向かっているという前提である。


 「やれやれ、今になって手の掛かる! とんだじゃじゃ馬よ」


 「話は後だ。状況を変えんことには、何も始まらん」


 「……お主が逃げるならどうする?」


 「決まってる。裏道を使うだろうよ」


 「成る程。地図を出せ」


 とりあえず入手したはいいが、ほとんど走り書きに近い。地図として最低限、通りと方角。目印になるような建物などしか記入されていない。勿論だが、最北部には領主の居城も記載されている。情報として機能するか怪しかっただけに、活用するのは避けたかった赤雷だが 、贅沢を言っていられないのも確かだ。渋々といった様子で羊皮紙を懐から取り出す。

 それに対して釘を刺すことしか出来ない。現状頼れるものが、実際には頼れないというのはおかしな話だ。


 「目印程度にしておけよ」


 その言葉を聞いていないのか、アルシュは立ち止まりそれに注視した。移動を促す赤雷の一言に対し、


 「彼女らが居たのは?」


 「南西部の露店が並ぶ通りだ。しかし参ったな、あいつらが経由する道なんざ、皆目見当も付かん。城の正規の入り口が正門だけであるとしても厳しいな」


 「待て、奴のようにお主が追われてるとしたらどうする。どこを通ると思う。お主の意見を乞いたい」


 「余所者に注意を引き付けさせてその上で()こうとするから、人通りの多そうな場所を……なるほど。歓楽街か、市場ってところだろうな」


 地図をみれば、町の中心部から東西に歓楽街と市場がある。城までの道のりもやや長く、ある程度迂回するだろうことを考えれば選ぶ道筋としては妥当だ。赤雷の考えでは、夜更けの歓楽街の方が人目があると(にら)んでいる。

 目立つことを嫌う追跡者が諦める可能性も上がる為だ。更に、野次馬が殺到すれば事は大きくなる。彼女の身動きを取りづらくさせるという点では効果的だろう。

 関心する赤雷に対し、アルシュはおどけるように言った。


 「何が流石、じゃ。何処までも都合の良い(たわ)けめ」


 日頃から憎まれ口を叩いている身だが、アルシュの機転と洞察力には目を見張るものがあると、彼は思っていた。咄嗟の一言に救われた場面も数知れない。なんだかんだと面倒見の良いところは、彼の美徳であると赤雷は信じているのだ。

 それを鼻に掛ける様子もなく、これから出来うることまで淡々と示して見せる手腕には、最早脱帽するしかない。


 「そうとなれば話は早い。間に合うかは怪しいが、俺はミシェル達を追って北上する。最短距離を移動し、歓楽街へ向かう」


 「では、儂が市場じゃな。何にしても、不測の事態に際しては備えが必要じゃろうて」


 二人はその言葉を皮切りに、状況を開始した。無常にも、白みかけた東の空が広がっている最中でのことである。

手早く情報交換をした彼らだが、その胸中には焦りがあった。

焦燥に駆られた行動は失敗を招くと自戒しつつ、最善と思われる事を為すべく奔走することに。


次回、ミシェルと男の鬼ごっこが始まる(笑)!

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