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異端ノ魔剣士  作者: 如月 恭二
三・五章 滅亡ノ鐘
84/120

一計

岡田以蔵に沖田総司!

人斬り大好き、如月恭二(笑)


……可笑しいな、うちの作品にも人斬りが出てきてるな──二人も(汗)

無意識って怖い((((;゜Д゜)))

 「……で、話ってのは? 若い女が少ない事と、謂れのない襲撃と何か関係あんのか?」


 鶏肉と赤茄子(トマト)のスープを(すす)ると、開口一番。静寂が破られる。赤雷達が地下酒場で町人らを相手に話をしていた。町人は十数人とかなり多いが、先の連中は拘束しておりミシェルとアルシュが張り付いている。素人とは言え、数の差は侮れない。保険も兼ねての処置だ。

 しかし、要心の為とは言え、これではどちらが悪人か分かったものではないな──アルシュは苦笑した。

 視線を動かせば、小洒落(こじゃれ)た内装である事が分かる。椅子は(ひのき)の類で、床には真紅の絨毯(じゅうたん)が敷かれていた。一見して肩が凝りそうな外観ではあるが、品書きに記載されている値段は比較的手頃なものだ。


 (内装(これ)は店主の趣味だろうな、音も外には漏れにくいようだ。内密な話には打ってつけ、という訳か)


 赤雷が町長を威圧すれば、彼はおずおずと口を開く。


 「この町だが、以前はもっと活気があったのだ。ところが前領主様が急逝してからと言うもの、お世継ぎ様は悪政を敷くようになった……」


 話を纏めると、一年半前に前領主。つまりは現領主の父が病に倒れたらしい。私財を(なげう)って治水工事を行うなど、質素倹約にして民を憂れう人格者だっただけに、町をあげての葬儀が営まれた。

 だが、彼の息子は一人だったせいか、かなり甘やかされて育ったようだ。赤雷は町人達の怒りを感じとる。仮にも町の大地主だ。陰口とは言え、罵詈(ばり)雑言のかぎりを口にした彼らの怒りは察するにあまりあった。

 権力を(かさ)狼藉(ろうぜき)を働く不埒(ふらち)者なのだろう。ミシェルの顔には呆れがありありと浮かんでいた。赤雷はと言えば、口の端を(ゆが)めている。


 「『傲岸不遜が服着て歩いてるような奴』、ね。俺はそいつに少し興味がわいた。是非一度お目に掛かりたいもんだ」


 「類友、という奴じゃな。良かったのう──儂以外にお仲間が増えた訳じゃ」


 期せずして、町人の間で笑いが起こる。他意のない──傍目にはそう映る──アルシュの冗句に、心持ち剣呑な空気が和む。

 ──が、赤雷の「茶化すな」という一喝に束の間の沈黙が訪れる。


 「その分だと、まだ何かあるようだな」


 「はい」


 「領主が絡んだ事と、此処(ここ)の内情は無関係ではないのじゃろうな」


 ミシェルと赤雷も同意見だ。そして、おおよその見当が付いた。


 「かつての忠臣は去り、佞人(ねいじん)が幅を利かせ、領主は女を漁る毎日。遊女から町の娘達へと魔手が伸びるのもすぐだった」


 典型的な世襲による腐敗。町人らの顔色は暗い。中には妻を拐われたと嘆き、涙を流す者さえ居た。女遊びが高じるあまりに民草を(もてあそ)ぶ所業は、まさに(けだもの)のそれだ。

 (よこしま)な考えの側近が一人居るらしく、無知な領主に入れ知恵をしているという噂もある。この土地の未来を考えると、先が思いやられるばかりだ。

 赤雷らは頭を抱えた。話を聞く限りでは、妾ということで数十人以上が略取され、城に幽閉されている。領主が相当の好き者だということは、警ら隊がやって来る可能性が高いと言うことを差す。特に美しい娘ばかりを標的としているのだ。ミシェルほどの美貌(びぼう)となると、殊更に警戒を高めなければならない。町人らの驚きは彼女の美しさにあった。彼女を領主に生贄として差し出し、あわよくば自分達の娘や妻を奪還しようという考えに至った。

 ──以上が、事の顛末(てんまつ)である。


 アルシュは微動だにしないが、ミシェルの手は戦慄(わなな)いていた。眉間に皺を寄せており、憤慨(ふんがい)しているのは瞭然だ。彼女が手にした得物が振るわれる事態を懸念する。短剣を弄ばせていたが、ミシェルはそれを握り締めていたからだ。

 拘束した内の一人が上擦った声をあげる。赤雷はそれを一瞥(いちべつ)し、視線を戻した。


 「あんたらのことだ、一度は動いたんだろ」


 「──そうだ。だが、駄目だった」


 領主は愚かだが、兵士への俸給を約束していた。自身の行為に後ろめたさはあるのだろう。忠誠心はともかく、反乱を起こした町人達を鎮圧する際にもよく働いた──或いは腹心の手回しの攻かも知れなかったが。


 「酷い話じゃの。お主らの行動が最適かはさておき、な」


 「……前町長とその家族や友人は、反乱の首謀者として斬首された。懲罰として、美しい女は城へ強制連行──私たちは家族を失ったのだ。税も上がり、生活は困窮している」


 顎に手をやる赤雷。アルシュは見守る傍ら静かに酒を楽しみ、ミシェルの眼光が気持ちばかり鋭くなった。

 ──その時だ。


 「──頼む、私だけはどうなっても構わない! その者らを助けて欲しい。彼らは私の指示で貴方がたにご無礼を働いたに過ぎないのだ!」


 突如、町長が(ひざまず)き頭を垂れる。思わずミシェルが先駆けの首筋に刃を突き付けた。


 「止せ、ミシェル」


 「うるさい! こいつら、あたし達を……」


 「だからといって殺めるのかね? きっと後悔する。どちらにせよ追われる身となるのが関の山じゃて」


 歯噛みしつつも、彼女は離れた。適当な距離を保ち、睨みを利かせる。感情よりも理性が勝ったのだ。そう、ここで彼らを戮殺したとて、領主と町人双方から狙われるかも知れない。更に言えば、仲間も居なければ後ろ楯もない。激情に身を任せても破滅しか訪れないという事実を、彼女はようやく理解したようだった。


 「あんたの首を貰ったところで、俺達に利益があるとでも? 大体、襲っておいて掌を返したところに持ってきた弁解がそれか。虫がよすぎやしねえか、おい。最悪皆殺しにされても、文句は言えねえよなあ?」


 町長は無言を貫く。理由はどうあれ、彼らを襲ったことには違いない。素人にしては手際が良かった事も、これで()に落ちた。


 ──恐らく、初犯じゃねえな。


 今まで流れ者を殺害し、若く美しい女は拉致(らち)して領主との交渉材料にしていたのだろう。家族思いは感動的だが、目に余る行為だ。


  (やれやれ。事情を聞いて多少痛め付けるか、路銀でもかっぱぐつもりだったんだがな。さて、そうであるなら……)


 「おい赤雷、お主まさかとは思うが……」


 「あぁそうさ。こいつらの親玉とその側仕えには消えて貰おうじゃねえか」


 やはりかと、アルシュは束の間天を仰ぐ。かと思いきや、赤雷に駆け寄り小声で話す。呆れた気配がありありと映っている顔に彼は笑った。

 ミシェルも恐らく同じ思いだろう。仄かな殺気が(ふく)れ、肌を苛んでいる。


 「ふざけおって、貴様正気か!」


 「はっは! なに、ちょっとした人助け(・・・)さ」


 半眼となるアルシュだが、赤雷の言葉で不満げながらも大人しく引き下がった。ミシェルはナイフを彼へと投射するも、鞘で防がれてしまう。

 年頃の少女に似つかわしくない形相。更に舌打ちという行動に、アルシュは顔を覆った。

 礼を言う町長らを(さえぎ)り、釘を刺す。


 「おっと、勘違いするなよ。謝礼はきっちり頂くからな?」


 「何にしても有り難い! 出来うる限りのお礼をさせて頂きたい」


 友好的な姿勢を見せる赤雷だが、その目だけは笑っていなかった。既に彼の思考は状況の整理に向けられている。また、アルシュも同様に町人達の挙動へと注視していた。

 気配が物語るのは、「お前達を信用なぞしていない」ということである。

勧善懲悪だと思った?

残念!


──ギブアンドテイクでした(笑)!


赤雷の思惑とは一体?

待て次回!

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