真の戦場 壱
あの時1600字だと、そう言ったな。
アレはマジだ。
筆が進むから不思議です。
因みに、多分この後が一番面倒です。
急いで更新だけしたので、ルビ振りはもう少し後にします。
「あいつら、出て来る気配がまるでないな。」
アバンツァータの兵が逃げ込んだ林を睨みながら、スブニールは唇を噛んだ。
撤退からおよそ半日。夜明けが近付いており、肌寒い風が疲弊した身体を震わせる。
今にして思えば、敵ながら見事と言う他にない。一時期は混乱に陥ったとは言え、撤退時には迷いひとつなかった。その上、地形上では攻めるに難いのである。それは国境沿いにあるこの林が、深く広いことに起因する。
地理上の関係で攻防それぞれに不利をもたらす──それは生い茂る木々の弊害で満足な行動が取れないからだ──が、逆にその事実が敵の足を阻むのだ。相手方はそれを良く知っているらしい。加えて、水や食糧の心配もない。
新兵には事態を楽観視する声が多いが、古強者に言わせれば甘い夢想に過ぎない。兵糧は無尽蔵ではなく、実戦がもたらす疲労と精神的摩耗は尋常ではないのだから。稽古や模擬戦とは格が違う。スブニールは彼らの希望的観測に鼻白んだ。
「面倒なことになってきたものだ……」
「俺もレミーの意見に同意するね。俺達が疲れるのを待てばいいだけのことだから。大体、あいつらが消耗戦に持ち込もうとするとは俺達も思っていなかった。そうだろう、スブニール?」
「考えてることが筒抜けていると考えると、嬉しくもあるが少しばかり気分悪いな」
すかさず二人して、『長い付き合いだからな』と返す。敵わねえな。舌打ちしつつも、スブニールは口角を上げる。
部下達の手前、余裕を見せ付けてはいるが、実際のところを言えばお手上げだった。おびき出すと言う方策がない訳ではないが、じり貧の可能性の方が高い。仮に敵の本隊が出張って来るとなると、ただでさえ低い勝算は限りなく零へと近付いてしまう。
少数を囮にしたとて、叩き潰されては元も子もない。敵に冷静になる時間を与えたくないスブニールとしては、頭が痛い問題だ。
「スブニールさん、どうしましょうか」
手持ち無沙汰になったシガールが問い掛ける。
「さてな。こう言うことは、案外なるようにしかならねえってこった。世の中はな、頭を捻ったところでどうしようもねえこともあるのさ」
「……成る程、分かります」
「どうするかね、レミーよ。ジルベールは、何か妙案はないのか?」
「俺もそう言うのが在るのなら、是非お披露目したいところだ。しかし、生憎と時間だけが過ぎている。即断即決がお前の矜持だろう。ここはひとつ大将の意向を聞きたい」
「いい考えならあるぞ。スブニールが俺の想いを受け止め──」
「──分かった、分かったよ。受け止めてやるとも……来世でな」
「俺からも頼みますよ、スブニールさん!」
「──レミさん、アンタは黙ってていいんだ」
レミーの言葉にスブニールは押し黙る。最善手が思い浮かばないのは、現状では対処のしようがないからだ。
予想外の状況において、レミーは融通が効かない。故に頭目であるスブニールに尋ねているのだ。事実として、彼がレミーの命を救ったことは、最早両の手で勘定出来ない程だ。レミーがスブニールを頼りとするのは詮方なきことではあるが、今回に限って言えばそれは裏目に出てしまった。答えようがないのだから無理もない。気休めを言ったとしてもすぐに察してしまう。それ程長い関係である為に、誤魔化しは効かないのだ。
困惑の気配が漂う仲間らを横目に、彼は思考を掻き乱してしまう。
──くそ、食糧を確保されるのはまずいな。相手もこちらが攻めあぐねているのは承知のはずだが、それにしたって後手に回っている。何とかしなくては……!
その時、シガールはデポトワールでの日々を思い返していた。
元より治安の悪い彼の街では、人質、見せしめに焼き討ちと何でもござれだ。中でもよく目にした手段が放火である。
赤雷も、過去に立て籠もっていた敵の隠れ家を焼き払い、難なく殲滅している。曰く、「やはり──立て籠もっている奴は──この手に限る」とのことだった。
恐る恐る、シガールは口を開く。
「林に火を放てば……」
「──!? シガール、今の言葉をもう一度頼む!」
「林に火を付ければ慌てて出て来るかも、と」
「──それだ。誰か、火打ち石を持て! これから、敵をあぶり出す。各自、迎撃の準備でもしておけ!」
何気ない一言で再び事態が動き始めたものの、シガールは自身がとんでもないことを宣ったのではないかと緊張してしまった。
斥候の数は……ええと、そして林の大きさがアレだから……まず包囲は出来ない。
討ち入るのは数と、地形上で難しいから別の手段を考えねばならない。
シエル側が210程度と見越して、アバンツァータが600弱。
そうなると難しい。つまり何が言いたいかと言うと…………何の話をしてましたっけ(笑)?




