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異端ノ魔剣士  作者: 如月 恭二
三章 剣ノ勲
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序章 肆

オッサンとの戦闘回。

テンポ重視、術理も少々含ませてあります。


オッサンというけど、人生経験豊富で戦闘狂みたいな人間って、やたら強いですよね。

同胞の死を、己の危難を乗り越えるとどうしたって強くなりますよね?

スブニールという男は、そう言うオッサンです(*`・ω・)ゞ

実はアルシュと並んで好きかも(笑)

 シガールは広場で素振りをする。打刀でもなく長剣(形見)でもない、ただの木剣だ。

 赤雷曰く、剣士は得物を選ぶということは、性分だとか(こだわ)りから来るものらしい。切れ味、耐久性、鍛造であるか否か。果ては柄の具合ひとつに到るまで。命を預けるべき得物(相棒)に対する矜恃(きょうじ)は人それぞれである。シガールはそれを好意的に見ていた。

 だが、今の彼はやや否定的に考えている。

 軽く降り下ろして、感想をこぼす。


 (問題ない、これなら充分扱える。握り心地も悪くないな)


 ──使えればいい。

 それが彼の信条だ。

 とは言え、得物を愛していないという訳ではない。手入れは怠らず、保守管理も徹底している。ただ、相手を斬れば刃が欠ける。そして、打ち合えば刀身を損うことも弁えているのだ。

 勿論切れ味がいいに越したことはない。頑丈であることは何よりも頼もしいだろう。

 だからと言って得物を過信せず、己の身で振るう。赤雷の口癖であった。


 遣い手が最善を尽くし、刀身の負担を減らすことが最良だと信じているからこその思想である。それは武器の性能で力量が変動にすることがないという、経験から裏打ちされたものだ。

 八間先で、団長が剣を抜く。荒くれ連中もこの時ばかりは野次馬根性を遺憾なく発揮している。団長相手と言えど、遠慮の欠片も感じられない見事な野次である。


 「おい、坊主。いい加減準備は出来たか~」


 「あ、あの俺にはシガールって名前が……」


 「あ? 尻の青さが抜けねえうちはまだ小僧──ッ!?」


 口上の途中、シガールが滑らかに間合いを詰め、肉薄。二人の間で硬い音が発生し、互いに競り合う。

 シガールは団長の勢いを左側に受け流すと、切り上げを繰り出す。そのまま降り下ろしを死に刀とし、続く逆袈裟で決着を狙う。

 ──が、


 「あぶねえ、危うくやられるところだった。まったく……師匠の顔が見たいぜ」


 軽口を叩くだけはある。

 団長(かれ)は、足を開いて打撃の瞬間、腰の脱力をしている。肩幅でも足を開けば、衝撃の威力を殺すことが出来るのだ。

 柔軟な対応で損耗はないに等しいだろう。手応えを感じていないことからも、それは間違いないとシガールは判断した。


 (この人、ひと筋縄じゃいかないな)


 縮地(しゅくち)で意表を突き、即座に畳み掛けるまでは良かった。

 そもそも縮地とは、彼我距離を一足跳びする歩方ではない。筋力の動きを最小限とすることで、相手に技の初動(起こり)を悟らせない技術である。相手の認識──その遅延が、勝ちをもたらす。後の先は絶対の優位性を発揮するが、油断したところを叩く、先の先を取ることもまた(しか)り。それが剣術の真理だ。

 勿論、歩方の意図するところに気が付かず、この男は隙をさらした。当然だ、見たこともない技術であるからこそ、彼は面食らったのだから。

 にも関わらず、勝機を逃した。それが差すところは、いっそ軽薄とも思えるこの男が、尋常な遣い手ではないということだ。不意の事態に際し、何事もないかのように立ち回る様は正しく歴戦の兵である。

 結果、計算の限りを尽くして打ち込んだ二〇合余りは、彼に届くことなく阻まれてしまった。牽制、交差方まで交えたというのに、この男の剣は曇り知らずである。


 「これでも全然届かない……俺はまだまだのようです」


 「そうかい? 中々悪くねえ逸材だと思うぜ。現に今までの新参は、どいつもこいつも一〇合と持たなかったんだ。お前さん、胸を張ってもいい。今まで会った餓鬼の中じゃ最強だ!」


 「子供の中で最強だろうと、何も為し得ない。誰よりも強くなって見せる……」


 呆気に取られた後、男は呵々大笑(かかたいしょう)する。それも、攻撃を(さば)きながらだ。


 「いい気概をしている。餓鬼なのが惜しいくらいだ」


 話していくうちに、男の殺気が(ふく)れ上がる。


 「俺の名前はスブニールってんだ。……さて、死んでくれるなよ?」


 対峙していた状態から、スブニールが猛進。シガールに突撃を敢行した。木剣であることを疑う程の剛撃に、腕が痺れてしまう。受け流すのが精々である。


 ──このっ、馬鹿力め!?


 動揺を顔に出さないようにするので精一杯だ。危うく防御ごと持っていかれるところだった。それも、たったの一撃でこの有様である。

 その事実を認識するに当たり、背中には嫌な汗が伝い、眉根にしわが刻まれる。


 「やるな、シガール!」


 「嬉しくねえよ、バケモンかあんたは……」


 得物が触れ合う度、互いのそれは目に見えて消耗していく。何もシガールの得物の扱いが雑なのではない。スブニールの猛攻の前に、木剣が耐えきれないのである。

 荒々しい剛の剣。迷いひとつない太刀筋。

 そこまで考えてシガールは、防戦を強いられている理由に辿り着く。


 ──動きは自己流。でも、無駄はない。……経験から術理を知った? まさか、相手にどう映るかまで計算に入れている!?


 それは衝撃であった。

 膂力(りょりょく)に物を言わせれば、対手の切り込み方はそれと知れる。技の起こりを見極め、不可避の機で決定打となす。それすなわち、剣術の極意──後の先である。

 それを目の前の男は、それを高い水準で修得しているのだ。『経験は知識に優る』という言葉に、シガールは心当たりがあった。赤雷との話の中に、そんな話題があがっていたからだ。

 幾度となく死線を潜り抜けた末、その境地に至った稀有な例なのかも知れない。そうでなければ説明がつかない。そもそも膂力と術理は共存し得ないのだから。

 しかも力の制御が巧妙であり、身体で剣を振るっていることも相まって、一撃が非常に重いのだ。ともすれば、赤雷より一枚上手と思わせるほど手練れの剣士だ。

 そして、不安定な体勢から更に三合切り結ぶ。シガールは、磐石とは言いがたい格好からスブニールの横薙ぎを受けてしまう。木剣は、あえなく弾き飛ばされる。


 「──ッ!」


 「……やっと、決着か。シガール……だったか? お前さんも大概のバケモンだろうが」


 組み伏せて逆転を狙うも、スブニールの剣が一拍早かった。油断なく突き付けられた棒切れ──もとい木剣を前に、シガールは已む無く降伏の姿勢を見せる。或いは、スブニールはシガールが取るであろう行動まで予測した上で機先を制したのだろうか。

 試合が終わると同時、競技場の熱量にも劣らぬ喝采(かっさい)がその場を支配した。

 シガールを笑う者は、最早誰も居なくなっていたのだ。

因みに、完全な余談ですが、私は某世界蛇のレームのオッサンが好きです。

後、DMC4のオッサンダンテです。


人生経験豊富な人間って憧れます。

飄々として掴みどころがなく、でもふとした時にそれとなく弱みを見せる。

そんな人生の哀愁漂う人間って大好きです(*`・ω・)ゞ


では、また次回。

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