閑話 壱
邂逅シーン。
この先の閑話で、戦闘成分は一割か二割もあれば良い方です(笑)
如月お馴染みの人間模様です(;^ω^)
そりゃ、バトルものとか書けませんわf(^_^;
──一月半ほど前、デポトワール南西部にて。
「赤雷さん、何か食べましょうよ。俺、少し持ち合わせあるんで出しますから」
街の往来で、シガールは前を行く赤雷に声をかけた。
それというのも、彼らは未だ朝食を摂っておらず、そろそろ昼になろうかという頃合いだからである。朝からこっち、言い掛かりからちょっとした襲撃にまで発展していた為、食い損ねたのだ。
「ああ、なんでお前が出すんだ? 餓鬼が要らん心配してんじゃねえ。……ほらよ」
そう言って彼は、シガールへ金子を渡す。やや困惑する彼に対し、こう続けた。
「いつものこった。お前が頼んでくれなきゃ、俺はろくでもないものを食わされかねないんでな。頼んだぜ」
シガールとしては、赤雷の配慮こそが心痛の元であった。それは彼が、赤雷の実子ではないからだ。温情で居候させて貰っているものの、「何かしなければ」という気持ちが先立って気を使わずには居れないのだ。
それに、顔を合わせる度とまでは行かなくとも喧嘩した回数も多い。これで気にするなと言う方が無理である。
──赤雷さんは、俺のことをどう思ってるんだろう? 本当の子供じゃないし、果たして必要とされているんだろうか。
躊躇われる問い掛けだが、シガールは好奇心には勝てなかった。
「赤雷さん。あれ?」
「あ? なんだ。……うん?」
二人はそれぞれ固まる。視線の先には、見窄らしいぼろを着ている少女が居た。教会の近くに倒れており、微動だにしない。
背格好から察するに、少なくともシガールより三つは年下だろうか。
顔立ちこそ整っているが、煤と泥で台無しだ。顔色も良くはなく、心持ち土気色気味だ。袖や脚絆の裾から覗く肢体は傷だらけで、青紫色の痣が浮かんでいる。
痩せ細っている状態から、路上生活を余儀なくされていることが分かった。こんな人間は別段珍しくもない。何もこの街に限らず存在している人種だからだ。路地裏に入れば数人と言わず目につくし、冬になればひしめくように身を寄せ合う姿がある。
女の、それも子供の路上生活者は珍しかった。大体、女の路上生活者は顔立ちが良ければ娼館へ売られるか、金を持て余した変態の玩具になるかのどちらかだ。この場合は年が若すぎることと、汚ならしい見た目が幸いしたのだろう。
視線を逸らし、彼女を目に入れまいとする赤雷は、通り過ぎたところで振り向くことになる。
「ちょっと、君! 大丈夫かい!?」
シガールが、少女に声を掛けていたからだ。赤雷は、彼の気を引こうとしてみる。
「おい、シガール。さっきの話はなんだよ、おい! よせ、そいつらに深入りするなとあれほど……くそっ、聞きやしねえ!?」
一瞬止まるが、それでも彼は見ず知らずの少女を助け起こす。
赤雷が止せと言っても、頑として受け付けない。日頃は昼行灯と言っても過言ではないが、いざという時はけして物怖じしない質なのだ。
頑固なところは嫌いではない。寧ろ好ましく思っている節はあるのだが。
──ちっ。騎士に見られでもしたら面倒なのによ……。
周囲を見回すが、通行人は無頓着を決め込んでいた。人気が少ない、というよりは赤雷を敬遠しているのだろう。
だが、腐っても治安維持組織だ。発見されれば、一体何をされるのか知れたものではないからだ。
騎士と思われる姿もなく、一安心といきたいがそうも行かない。
「シガール、そいつは下ろしていけ」
しかし、懇願するような視線で見詰められては赤雷も折れるしかなかった。
──そう言えば……。
赤雷は、以前シガールの言葉を小耳に挟んだのだが、「妹か弟が欲しい」と言っていたことを思い出す。
アルシュは当時、鼻を鳴らしながら「妹や弟なぞ欲しがる者の気が知れん!」と喚いていたような気がした。何があったか聞くほど野暮でもない為、詮索はせずに流したきりだ。
考えれば、マジーと言いミシェルと言い、シガールの身辺には年上の少女しかいないのだ。兄という立場に憧れているかも知れない。
認めたい反面、赤雷は悩んでいた。
(認めてやりたいが……むむむ)
渡航して来た当初、彼らは彼女と同じような路上生活者を助けたことがある。丁度こんな年頃の子供だ。助けたは良いが、恩を仇で返されたのだ。なにも珍しい話でもない。お陰で赤雷は路銀や生活資金としていた貴金属の殆どを喪失した──そう、盗まれたのだ。結果、慣れぬ土地で死物狂いで働く羽目になったのである。
今更その事で恨めしく思っていない。情けは人の為ならずという教えもある。だが、この件が元で仲間が悲しむことなどはどうしても避けたい。もし万が一そうなった時、彼は堪えることが出来ないだろうと思ってさえ居たからだ。
結局彼は、どっち付かずの道を選ぶしかなかった。
「赤雷さん、先生のところへ行こう」
「……お前正気かよ」
「でも、この子は早くしないと……!」
見れば、少女の呼吸が荒く、そして浅い事に気が付く。処置が施されなければ遠からず天命を全うすることだろう。
赤雷の言葉を待たずして、シガールは移動を開始した。
制止する声すら無視し、駆け出す。一直線に診療所を目指しているらしい。重ねて忠告する赤雷だが、やがて諦めることにした。
──ああ、くそ。どうにでもなれってンだ!
基本的に赤雷とシガールは二人一組で行動。
ミシェルは非力と……。
アルシュは搦め手しか使えないので、きっと頭使って護っているんでしょうね。
でも、彼女は気が強いので、暴漢とサシであれば金的で勝てそうなのが何とも……(笑)
あれ、もしかして武闘派しかいない?




