表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異端ノ魔剣士  作者: 如月 恭二
二章 異国之剣客
48/120

死闘の行方

死闘の果てに相討ちとか浪漫ですよね?

今回は割りとテンポ重視にしました。

描写もそれとなく織り交ぜているので、「長いのなんてだれるだけ」という方もご安心を。


 荒涼たる廃墟の建ち並ぶ中、蘭と令月が切り結んでいた。刀身が閃く度に響く快音が、辺りを支配している。

 夜の帳は最早静寂ではなく、剣戟の音色──その独壇場だ。


 「中々やりおるわ。これほどまで強くなろうとは……それでこそ倒し甲斐があるというもの!」


 蘭の挑発的な言動に、赤雷は応じない。

 ひたすら無言を貫きながらも、下段にて迎撃の機を窺う。


 ──気取ってやがる。何処までもいけすかねぇ野郎だ。

 

 内心で毒づく赤雷。

 およそ一〇〇合にもわたる死合いで、彼も(いささ)かばかり疲弊していた。それは蘭とて同じことだろうが、如何せん分の悪い状態が続いていた。

 蘭は着物が数ヵ所切れている程度だが、彼は所々に生傷を拵えていたのだ。白刃は肩口を裂き、頬を掠め黒装束を赤く染めあげる。

 無論、好機がなかったという訳ではない。

 ある時は横薙ぎの一閃を掻い潜り、またある時は首筋を捉えんとした場面もあった。

 だが、赤雷は未だに攻めあぐねていた。

 蘭は存外に勘が働くらしく、彼の剣から幾度も逃れているのだ。

 募る焦燥感と、時が経つほどに膨れ上がる憎悪とで、赤雷の技の()えは(おとろ)えている。それは事実だが、彼自身ではけして知覚し得ないもの。

 知らずして、彼は窮地にあった。

 迷い、怒り、そして悲哀。

 ──これら戦場で最も忌むべき感情を抱いている彼は、付け入り易い存在に他ならないからだ。

 

 蘭の放つ裂帛の一撃。

 疲弊し、技が曇った赤雷は完全にいなしきれず、彼は大腿部を浅く斬られた。


 ──くそ、こんな野郎に負ける訳にはいかねぇ。父上の為にも、こいつを潰す!


 意気込みとは裏腹に、赤雷の振るう得物は蘭を捉えきれない。逆袈裟に切り上げ、受け止められたところを横に薙ぐも鍔迫り合いにもつれ込む。本来であれば、それから腕を狙い、止めを刺す一連である。ところが、拮抗したまま切り返しが出来ずにいた。

 ただ生傷が増えていくような泥沼で、煩わしさが蓄積されていく。


 「しかし、そろそろ飽いてきたな。ここらで趣向を変えようではないか」


 蘭はそう言うと、腰に差した血染めの鞘から一振りを抜いた。匂い立つような乱れ刃の刃紋と刀身が露となる。それはさながら霹靂(へきれき)とも、業火とも形容される荒々しいものだ。

 ──そしてそれは、


 「さあ、第二戦といこう」


 「てめぇ如きが……それを──《千鳥》を抜くんじゃねぇ!」


 師であり、父でもある者の形見。それが憎むべき怨敵の手中にある。彼の怒りは頂点に達した。

 怒号の後、二歩一撃にて赤雷は地を蹴る。

 両の足で一息に間合いを詰める歩方で彼は肉薄。突撃の勢いそのままに袈裟で振り下ろす。一拍子とないほどの速度で繰り出される渾身の一撃。


 「──っ!?」


 余裕を浮かべた笑みが一瞬凍る。回避した直後、真一文字に切り払い。追撃で逆袈裟で切りつけ、止めに刺突。勢いと(ことわり)を個々に利用した連撃で、蘭は思わずたたらを踏んだ。彼の得物がわずかに(きし)む。

 最後の刺突が彼の胸を抉りかけ──そして切っ先が離れる。

 届きはしたが、傷は浅い。僅かに肉を裂く程度でしかなかった。

 相手に呑まれない為に、彼は強がりを(のたま)って見せる。


 「少しは饒舌が治ったか?」


 「油断しておったわ……。遊びはこれで終わりよ。俺の全力をもって──お前を殺す」


 胸から血を流しながら、二刀を構える蘭。完全に目が据わっていた。

 彼の反撃がそこから始まった。

 赤雷の一撃を難なく《千鳥》で受け止め、意趣返しに刺突を見舞う。それだけに留まらず、それを用いて二連撃。

 あっという間に赤雷は腋下(えきか)と胸部に、浅くない傷を負う。それぞれ二寸以上ある手傷。じわりと(にじ)む鮮血が激情に拍車をかけていく。


 力強い打ち込みの蘭に若干押され、防戦気味となっていた感は否めない。それが今では、受けに回って尚この状況である。

 師であり、父である蘭月の愛刀《千鳥》を使用されている負い目もあるのか。赤雷は瞬く間に追い詰められていった。まさしくじり貧である。


 ──くそ……一体どうしたというんだ、俺は!?


 (はや)る心に思考は掻き乱され、より一層深みに()まる。普段であれば(さば)き切れるはずの攻撃も、いつしか対処しきれなくなっていた。

 更に、増える刀傷と流血で徐々に冷静さを失っていく──負の連鎖だ。

 負けじと打ち込むものの手応えはなく、精々薄皮一枚を傷付けるに終始していた。

 とんだ醜態である。


 長引く攻防に決着が迫る中、蘭は路傍の石を然り気無く蹴り飛ばした。そしてそれは赤雷の顔めがけて飛来。思わぬ急襲に反応を余儀なくされ、刀の柄で弾く。勿論、砂利も同様ではあったが全てに対処していては詰みが見えてくる。

 ──しかし、非情なるかな。結果は最悪の形で訪れた。

 

 即応可能となった折に、蘭は既に赤雷の懐まで侵入していた。状況を把握した時には刃が滑り、赤雷へと強襲。回避行動すらままならない状態に陥っていたのだ。

 真一文字の一撃を避けようと、身体を無理矢理に(ひね)る。


 「ぐあっ!?」


 瞬間、赤雷の右目──その視界が闇に取って替わる。

 激痛に悶える彼は、眼窩(がんか)から流れる熱いものを認識するにあたり、右目を斬られたことを知る。

 そうして朧気に知覚したところで、左目が蘭の動きの片鱗を捉える。うまく見えないが、どうやら唐竹の斬り下ろしで(つい)とするらしい。

 反射的に強引に上体を傾げさせ、倒れ込むように逃避。

 更に走る熱感。

 鍜冶師の焼鏝(やきごて)でも当てられたような感覚に、脳髄の中で火花が散るような錯覚すらあった。

 右目の残骸と血液で濡れた左目は、ゆっくりと自身の身体を検分し──左腕の肘から先が飛んでいることに気が付く。

 あがる絶叫。それが誰の物か、彼には最早判然としない。それほどのことも些細な問題に思えた。卒倒しないことが不思議に思えるほど劇烈な痛み。

 それに悶える赤雷に蘭は近付いていく。


 「これで俺にも(はく)が付き、復讐は果たされる。悪く思うな」


 苦もなく距離は縮まっていき、蘭は刃を彼の喉へと向けて振り下ろそうとして──殺気に気付き、手を止める。次いで足音も耳に入ったからだ。

 殺気の主を探すべく確認をすると、紺色の短髪を風に(もてあそ)ばせる者を一〇間先に確認した。


 「貴様は、確か令月の子だったか?」


 蘭の声に身動ぎはおろか、声ひとつたてずにいる。外套の裏にはどうやら部分装甲(ポイントアーマー)の類を装着しているらしい。不自然な膨らみがそれを如実に物語っていた。腰や(わき)の動きを阻害しない、こなれた出で立ちである。

 ──静かに長剣(デモン)を携えた、シガールの姿だ。

今のは前座。

ようやく真打ちの登場です!

キャーシガールサーン(棒

あ、阿呆なこと言ってたら修正箇所を思い出しました(泣)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ