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異端ノ魔剣士  作者: 如月 恭二
二章 異国之剣客
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情報戦 壱

遅くなりましたが、異端ノ魔剣士最新話です。

 赤雷とアルシュはそれぞれ街を周り、一刻半を費やした後近場の安宿にて合流を果たしていた。小綺麗な診療所とは違い、やや埃っぽい空気だ。

 やはりというべきか、顔合わせをしても全員の表情が晴れることはない。

 奇襲に際してその場しのぎの手しか打てず、一人を確保することさえままならない始末だ。あの場では、情報源として一人を生け捕りにすることが望ましかった。


 それが蓋を開ければ、焼け出された挙げ句逃げ出したという実状だ。唯一果たせているのは、“非常時であっても恐慌をきたさない”という最低限のことだけである。「余裕がなかった」といえばそれまでだが、状況は何一つとして好転する兆しを見せない。率直に言って、今の今まで収穫がない状態であり、後手に回っていることから気落ちするのも仕方のないことだった。

 気まずい沈黙だけが流れる。暫し続いた静寂を破ったのは赤雷だ。


 「なあ、先生」


 「何じゃ赤雷、つまらぬことを言うならおおらかな儂も怒るぞ」


 誰がおおらかなのかと思いつつも、面倒になりそうなので誰一人として口には出さない。だが、全員の目が赤雷に向いた。


 「……いっそ情報屋に頼むってのはどうだ?」


 情報屋という言葉に、またしても沈黙が訪れた。

 言わずと知れた街の情報通たちの事なのだが、癖のある人物が殆んどである上に用心深く、人間を嫌う(たち)の者がいる。人前に姿を見せることを(いと)う者さえいるのだ。もし機嫌でも損ねようものなら最悪の場合、偽情報に翻弄されてお陀仏という事態にもなりかねない。

 いつの時代も戦闘においては、情報こそが物を言う。古今東西あらゆる闘いにおいて、情報や地の利が趨勢(すうせい)を決めるとさえ言われている為だ。赤雷らはその事実を承知した上で、尚億劫に思っている。

 出来ることなら会うことすら避けたい──そんな雰囲気だ。

 神経質そうな眉根にしわを寄せ、アルシュが(うな)る。


 「……それにしても情報屋か──面倒じゃのう」


 「まあ、そう言ってくれるな。 現状では(らち)が明かん。 何より、先生は他に何か宛てでもあるというのか?」


 不遜な態度の赤雷に気持ち憤然としながらも、アルシュは大人しく引き下がる。


 「して、お前さんが頼りとするのは誰なんじゃ? セシールは接触が難しいし、ジョルジュは徹底した人間嫌いだぞ」


 「そうだな、ことは一刻を争う。 俺はピエールに頼もうかと考えているんだが……」


 それを聞いたアルシュは渋面をつくって見せる。変り種揃いの情報屋にあって、ピエールという人物は一番の変わり者だという評判が付いて回る男だ。

 その噂は雇い主を平気で裏切っただの、契約の際に股の下を潜らせるだとか悪辣極まりないものが殆んどである。仮にそれが真実ではない、尾ひれの付随した与太話としても信用ならないものだ。噂とは往々にして幾ばくかの真実を含んでいるから、なおのことである。


 アルシュは頭を抱えるのをやめて、顔を上げる。


 「ならば依頼の折に、お主は引っ込んでおれよ──」


 「おい、引っ込んでろってさ──シガール」


 「──赤雷、お前じゃ」


 「ああ?」


 瞬間、低音でアルシュを恫喝する赤雷は、そこらの破落戸が裸足で逃げ出しそうな威圧感を纏っていた。


 「仕方ないじゃろう、あやつは異邦人を毛嫌いしておる。 そんなところにお前が行ってみろ、それを好機とばかりに思って、それこそあの手この手で殺しに来るぞ」


 「……うるせえなあ、そんな奴なら刀突き付けて脅せば良いだろう」


 「そらみろ、どだいまともな交渉なぞ無理じゃ。 『生殺与奪は我が手にあり』として、対等な関係と(のたま)うことの何処が交渉か。 まあ、お主の場合は仕方ないとも言えるが……」


 「じゃあ、先生一人で行くのか。 餓鬼共は俺と留守番でいいのか?」


 「……ぬ」


 「おいこら。 あいつが子供好きなのは知ってるが、そりゃあ幾ら何でも危なくねぇか」


 「なに、いざとなれば子供達だけは逃がす算段くらい付くじゃろうて」


 赤雷、シガールらも唐突に放たれた言葉で硬直する。


 「何時ものことよ、安穏に事が運ぶならそれに越したことはないがの。 幾度となくお主にも危ない橋を渡らせた。 なあに、お互い様じゃて」


 たまには儂にも格好くらい付けさせろ。アルシュはそうやって笑ってこそいるが、雰囲気には有無を言わさぬ迫力がある。覚悟は充分と受け取ったのか、赤雷が口を開く。


 「……分かった。 しかし、近くに待機はしておく。 危なくなれば、すぐにでも駆け付けられるようにする──いいな」


 「ふん、へまをして見つかってみろ。 ただでは済まさぬからな」


 二人は朗らかに、かつ僅かばかりの獰猛さを以て嗤い合う。それはお互いに全幅の信頼を寄せた者へ向けた笑顔である。その空気に触発されたシガールが、割って入る。


 「俺も皆の為に頑張るよ!」


 「「──お前は無茶しなくていい」」


 「あぅ」


 重なる二人の声。それは子供達を危険に晒したくないことと、もうひとつ。武装して面会することを危惧してのことだ。話し合いの場に相応しくないとして、一体幾人の猛者が正論……もとい言い掛かりの下に消されたのかを知っているからだ。


 束の間消沈するシガールに、誰からともなく笑う。暗澹とした面持ちは何時しか消え、気概に満ちた熱気が場を支配していた。


 「では赤雷、いざというときは頼むぞ」


 「ああ、任せろ」


 だが、この時シガールは皆と違う闘志を抱えていることに、誰一人気が付くことが出来なかった。


 ──いざという時は、俺が皆を守る……いや、守って見せる‼


 彼の気持ちに逸る心はない。ひたすら冷静に物事を見据える、鋼とも、氷とも取れる自制心があった。そして彼の眼には今、空しく散っていった仲間の死が去来する。その惨状が甦る度に、シガールの心は引き締められるのだ。

 ──守らねば。喩えこの身が朽ちるとも、決して屈することはない。そう、何に替えても守り抜く!


 表面上は笑いながらも、彼の頭は守ることに占められていた。(たっと)き想いと評されるべきそれは、ともすればひとつの地獄めいた、忌まわしい信念であった。

大体、今回のシナリオ、会話だけのパートが多くてやり取りで時間食ってたりするんですよね。

行動面を頑張って書いても、下手すると描写で埋まってしまうんですよね。


その辺りの調整、まだ苦手です。

数日置けば、「これ要らないだろ」だとか、「表現短くすれば済むな」と言ったことに気が付けるんですがね。


書き上げ当初はとりあえず、ざっとした校正だけに留めようかと思います。

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