第97話 いつもの二倍ね
「さあ、二つ目の種目です! 最初の種目はオークの討伐数を競うものでしたが、今度はフィールドのあちこちにばら撒かれた、こちらのトロフィーを集める競技となります! 先ほどと大きく違うのは、このトロフィー、敵クラスから奪うことが可能ということ! つまり、より大逆転が可能になる競技なのです! もちろん全滅したらトロフィーはゼロ! そして一クラスだけが残った場合、二位は最後に退場になった生徒のいるクラスとなります! 制限時間はこれも三十分!」
次の競技に向けて、各クラスが出場者をフィールドに送り込んでいく。
「おおっと、これは……? なんとF組、出場者がたったの三人です! これはこの種目を捨てにきたようだっ! 確かにそもそも人数が少ないF組は不利! あえて人数を偏らせるという手は決して悪くないでしょう! さすがシャルティア先生! あ、いや、わたくしは、あくまでラーナ先生派ですが……」
どうやら実況はシャルティアにも気があるようだ。
ラーナに軽く睨まれて、ぼそぼそ言い訳じみたことを口にしているところを見るに、裏でラーナに篭絡されているのかもしれない。
「と、とにかく、競技スタートぉぉぉぉぉっ!」
誤魔化すように実況が叫ぶと、それに合わせて競技開始のブザーが鳴り、各クラスが動き出す。
すぐにトロフィーを集めようとするクラスもあれば、あとで他のクラスから奪おうと考えているのか、防御を固めるクラスもあった。
「おおっ? F組、少ない人数を活かして、遮蔽物に身を隠しながらトロフィーを集めているぞ! そして敵を見かけると、すぐに逃げて距離を取っている! なるほど! そうやって上手く立ち回って、確実にトロフィー数を積み上げていく作戦でしょう! さらにそうした隠密行動が得意な生徒を集めている様子!」
もちろんこの実況の声は、フィールド内では聞こえない仕組みになっている。
いったん競技が始まってしまえば、外から指示を出すこともできないため、フィールドの中のプレイヤーたちが、状況に合わせて自分たちの判断で動かなければならないのだ。
しかしそんな中、ラーナは余裕の笑みを浮かべていた。
「ふふっ、上手く作戦を立てたわねぇ? でも、あたしの生徒たちにそれが通じるかしらぁ?」
直後、戦況が一気に動いた。
「ああっと! ここまで大きな動きを見せていなかったC組が、執拗にF組のプレイヤーを狙いだしたぁぁぁっ!? 五つのトロフィーを集めていたF組の生徒が倒され、退場! トロフィーを奪われました! さらにC組はF組を狙うっ!」
そうしてC組は、F組の残る二人も撃破。
これでF組が脱落し、ラーナは高らかに哄笑を響かせる。
実は彼女はあらかじめ生徒たちに、F組を狙うように指示していたのだ。
「あははははっ! だって最悪、F組さえ叩き潰しちゃえば、あたしの勝ちだもの! わざわざ単独行動させてくれて、すっごく助かったわぁ!」
だがその後は、C組も苦戦することとなった。
「先ほど一位を取ったこともあり、C組が他のクラスから狙われているようです! トロフィーもなかなか集められていないっ! くぅっ、頑張れ、C組っ!」
もはや贔屓を隠すこともなくなった実況の声が響く中、辛うじて制限時間いっぱいまで耐え抜いたようで、最後に残ったのは四人のA組と二人のC組だった。
「そしてトロフィーの数は……A組が十八! C組が十三! ああっ、惜しくもC組は二位! 残念! でもよく頑張りました! さあこれで、二種目が終わった時点で、トップはC組の十五ポイント! 二位がA組の十ポイント! そして三位はB組で五ポイント! 残る三クラスはまだ獲得ポイントゼロです!」
この結果を受けて、F組の生徒たちが残念そうに天を仰ぐ。
「でも、勝負はこれからよ。ここまで八人しか出場してないから、残りは十八人。六人ずつ参加できる状態になったわ」
「その通りっす! ここから挽回っすよ!」
アリスの言葉に頷き、クラスメイトたちを鼓舞するガイザー。
「大事なのは次の競技っす! 無論、目指すは一位! やってやれないことはないっす! なぜって……次はオレが出るっすから! 兄貴、オレの活躍を見ててくださいっす!」
「うん。訓練の成果を見せてきてよ。ちなみに、もし負けたらしばらく朝練メニュー、いつもの二倍ね」
「ぜ、絶対負けられないっすうううううっ!」
一方、シャルティアは。
「ここまで私のクラスはゼロポイント。対して、C組は十五ポイント。これ以上離されてしまうと追いつけなくなってしまうでしょう。つまり、この種目、絶対に落とせません。……勝負に出るしかありませんね」
ある賭けに出ることを決意していた。
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