第96話 いきなり大差がついちゃったわねぇ
「さあ、最初の競技、残り時間は十分となりました! 現在の状況を簡単に整理いたしましょう! まずは討伐数ですが、一位がA組! そして僅差の二位にC組がつけております! さらに少し離されてB組、D組、F組、E組と続いています! しかもE組とF組は、すでに全滅! もはや逆転の目はありません! 一方、二位のC組は五名全員が健在! 二人減って、三名となった逃げるA組を追い抜く可能性は十分にあります! おおっと!? ここでC組、なんとオークを避けて、一気にA組に迫っていくぅぅぅっ! どうやら先に相手を全滅させてしまおうという作戦だぁぁぁっ!」
実況がハイテンションで叫ぶ中、シャルティア率いるF組の生徒たちは、五位が確定して肩を落としていた。
「うちのクラス、残念だったっすね。まぁでも、まだ緒戦っすから!」
「というか、そもそも端から不利なのよね。だって他のクラスは三十人いるのに、うちは二十六人しかいないもの」
アリスが言う通り、F組はそもそもディスアドバンテージがあった。
他のクラスより人数が少ないのである。
「何で少ないの?」
「……もしかして忘れたの? 退学者が出たでしょうが」
きょとんとするエデルに、アリスが呆れた様子で教える。
「そうなんだ。道理で何人かいなくなってると思った」
「あんたもう少し周りのことに興味を持ちなさいよ……」
先日のハイゼンの事件を受けて、数人が学校を退学処分となったのだ。
第一種目でも、他のクラスの大半が出場者を六人出してきたのに対し、F組は五人だった。
これはハイゼンが担任をしていたE組も同様で、この二組が最下位を争ったのも偶然ではない。
「C組がA組を全滅させたぁぁぁっ! 代償として一人失ったが、これは大きなチャンスです! C組、オーク討伐を再開! 一体、二体、三体っ……ついに討伐数でのA組を逆転~~~~っ! よっしゃあああああっ!」
大盛り上がりの実況に、アリスが怪訝な顔で呟く。
「よっしゃあって……なんかあの実況、やたらC組を贔屓してない?」
一方、C組の優勢を受けて、ぐぬぬぬと奥歯を噛み締めて唸り、悔しそうにしているのはシャルティアである。
「ここで時間終了! 討伐数一位は……やはりC組だぁぁぁぁぁぁっ! さすが、ラーナ先生のクラス! 緒戦を素晴らしい結果で終えましたっ! そしてそして、二位はラストに逆転したB組っ! A組は惜しくも三位に転落してしまいました!」
この実況、C組担任の女教師に気があるんだろうな……と誰もが推測する中、最初の種目が終了した。
「あはは、いきなり大差がついちゃったわねぇ?」
わざわざシャルティアのところへやってきたラーナが、勝ち誇るように嗤う。
シャルティアはイラつきながらも、努めて冷静に応じた。
「……もしかして、もう勝った気でいるのですか? まだ四種目もありますから。勝負はこれからです」
「うふふ、いつまでそう言ってられるかしらねぇ?」
生徒のもとへ戻っていったラーナは、ちょうどフィールドから帰ってきた男子生徒に近づいて、そのままハグしてしまった。
豊満な胸を、男子生徒の身体にぎゅっと押し付けながらラーナは耳元で囁く。
「よく頑張ったわねぇ。後でた~~っぷり、褒めて、あ、げ、る♡」
「~~~~~~っ! は、はひぃっ!」
その様子を見た他の男子生徒たちが、興奮したように叫ぶ。
「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおっ! 俺たちも勝つぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」」」
凄まじく気合いが入っている。
もちろん女子たちは白けた顔をしているが、元より英雄学校は男子の割合が多く、女子は少数派だった。
女子を斬り捨ててでも、男子のモチベーションを上げようというラーナの作戦だろう。
「……今からでもあっちのクラスに入れてもらえないっすかね?」
ガイザーがぼそりと呟くと、C組の全女子たちが一斉に「最低」と吐き捨てた。
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