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第73話 外で俺たちと遊んでようぜ

「お前は外で俺たちと遊んでようぜ」

「せいぜい可愛がってやるからよ」


 ゲルゼスの取り巻きたち二人が、ニヤニヤ嗤いながらエデルに近づいてくる。

 所詮ただの一年生と思っているのだろう。


 だがエデルの肩に手を置いた瞬間だった。


 ぎゅんっ!


「へ? がっ!?」


 ぐるりと身体が回転し、思い切り地面に叩きつけられる。

 エデルが片手で投げ飛ばしたのだ。


「っ!?」

「い、今、何が起こったんだ……?」


 他の取り巻きたちが絶句する中、エデルは内心で首を傾げる。


「(? 何だったんだろう、今の? つい投げ飛ばしちゃったけど、攻撃って感じじゃなかったし……)」


 魔界の魔族であれば、あんなに緩い空気で近づいてくることなどあり得ないのだ。


「なっ、何をしやがった!?」


 目の前で仲間が投げられたにもかかわらず、もう一人の取り巻きには何が起こったのか見えてすらいなかったようだ。


「て、てめぇの仕業か……っ!」


 彼我の実力差も分からないまま、焦りながらエデルに殴りかかるが、その拳はあっさり受け止められる。


「なっ!?」


 自分よりずっと小さな一年生に拳を防がれて、絶句するのも束の間、そのまま拳を掴まれたかと思うと、


 ぶおんっ!


「~~~~~~~~っ!?」


 凄まじい力で後方に放り投げられ、教室の壁へと激突した。


「(うーん……今度は普通に攻撃してきたけど……あんな見え見えなんてことある? 逆に何かのフェイントかと思ったのに、そんな感じじゃなかったし……)」


 あまりにも中途半端な相手の動きに、かえって混乱してしまうエデルだった。


「…………どうやら、ただの一年じゃないみたいだね」


 取り巻きが容易くやられ、ようやく相手の力量を理解したとばかりに頷くゲルゼス。


「だけど、この僕に喧嘩を売ったこと、死ぬほど後悔することになるよ?」


 ずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずる。


「ほら、行くよ、ガイザー。早く練習の遅れを取り戻さなくちゃ」

「ひ、引き摺らないでほしいっす!」


 しかしエデルはそんなゲルゼスを無視し、すでにガイザーを連れ帰ろうとしていた。


「って、聞けよっ!」


 ゲルゼスは思わず叫ぶ。


「お前っ、この僕を舐めているだろうっ!? 一体この僕を誰だと思っているんだ!? ただのこの学校の五年生じゃない! 生徒会――〝ナインスターズ〟の一員でもあるんだぞ!?」


 聞いたことのない固有名詞に、エデルはキョトンとした。


「生徒会? ナインスターズ?」

「っ、ナインスターズを知らないのか!?」


 驚くゲルゼス。

 ガイザーが教えてくれた。


「あ、兄貴、生徒会っていうのは、この学校の成績優秀者だけが入ることができる組織っす。その数は僅か九人……そのため、ナインスターズとも呼ばれてるっす。兄上はその第八席に位置してるっす」

「ふーん」


 頷きつつも、気にせずガイザーを連れて行こうとするエデル。

 あまりにも薄い反応に、ゲルゼスの額に青筋が走った。


「……どうやら、痛い目を見ないと僕の凄さが分からないようだね? いいだろう。今からその身体に教えてあげようじゃないか」


 そして腰の剣を抜くと、エデルに躍りかかる。


「平民の腕の一本や二本、無くなったところで問題ないだろうしねぇ!」


 その言葉通り、彼の剣はエデルの腕を狙っていた。

 剣技部の元主将というだけあって、迷いの一切ない、鋭く速い斬撃だ。


 ガキィンッ!


「なにっ?」


 だがそれはエデルの剣によってあっさり塞がれてしまう。


「(こいつ、いつの間に剣を……? しかも手を抜いたとはいえ、僕の斬撃をこうも容易く受けるなんて……)」


 息を呑むゲルゼス。

 しかし彼には困惑している暇などなかった。


 ドオオオオオオオンッ――パリィンッ!


「~~~~~~~~~~~~~~っ!?」


 次の瞬間、前方からミノタウロスの突進を喰らったような衝撃を受けて、彼は窓の外まで弾き飛ばされたのだった。


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女神100人3巻
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― 新着の感想 ―
[気になる点] >「平民の腕の一本や二本、無くなったところで問題ないだろうしねぇ!」 ここから >「(こいつ、いつの間に剣を……? しかも手を抜いたとはいえ、僕の斬撃をこうも容易く受けるなんて………
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