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第42話 ダメだ何の参考にもならない

「あれ? 同じような部屋に出たっすね?」


 出現した扉を開けた先にあったのは、またしても広々とした空間だった。


「まさか、同じ場所、というわけではないよな……?」


 思わず後ろを振り返るセレナ。

 だが扉の向こうには、絶命したマンティコアの死体が転がっている。


「同じ場所にループさせられるって場合もあるけど、これは多分、ボスとの連戦だね。よくあるパターンだよ」

「よくあるパターン……? 聞いたことないのだが……?」

「そう? 常識じゃないの?」

「一体どうなっているんだ、君の常識は……」


 呆れた顔でセレンが呟いたときだった。

 部屋の中央に、巨大な影が降ってくる。


 ドオオオオオオオンッ!!


 床に大きな亀裂を生じさせながら着地したのは、身の丈五メートルを超す巨大なゴーレムだった。


「ボスモンスターっ!?」

「本当に連戦ですかっ!?」

「あ、兄貴の言う通りだったっすね……っ!」

「しかもただのゴーレムではない……っ! 見ろ、あの筒状の腕を!」

「み、見たことない形状をしています……っ!」

「恐らく何らかの遠距離攻撃をしてくるのだろうが……くっ、やはり何の前情報もないボスと戦うのは……」


 セレナたちが驚愕する中、すでにエデルは一人そのボスゴーレムへと近づいていく。


「じゃあ、初見の魔物と安全に戦う方法を教えてあげよっか?」

「なっ……そんな方法が!?」


 英雄学校では、様々な魔物について学ぶ。

 あらかじめその弱点や対処法を知っていれば、遭遇した際、有利に戦うことができるからだ。


 だが無数の魔物が存在するこの世界で、すべての魔物を把握するのは至難の業である。

 同種の魔物であっても、特殊な進化を遂げ、誰にも知られていない能力を身に着けているケースも少なくないからだ。


 なので、どんな魔物にも通ずる画期的な戦法があるとするなら、是非とも知りたい。

 一瞬たりとも見逃すまいと、セレナは思い切り目を見開く。


 直後、エデルが地面を蹴って、真正面からゴーレムに躍りかかった。

 そのあまりの速さに、ゴーレムはまったく反応できていない。


 そして次の瞬間、


「せーのっ!」


 ズゴオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!


 先ほどの着地の轟音を遥かに上回る爆音とともに、エデルの拳がゴーレムの頭部を粉砕する。

 散乱する砕片と共に、巨体が背中から床に倒れ込んだ。


「「「しゅ、瞬殺した~~~~っ!?」」」

「攻撃される前に倒す。これなら大抵の魔物は安全に処理できるよ」

「「「いやできるかあああああああああっ!!」」」


 全員の全力ツッコミが響き渡った。


「(? じいちゃんに教えてもらった確かな方法なんだけどなぁ……)」







 その後も次々とボスモンスターが現れては、エデルによってあっさり撃破されていった。


 なお、エデルによる大変親切な解説付きである。


「防御力が異常に高い魔物は、その防御力を超える威力の攻撃を喰らわせればいいよ」


 硬い甲羅を持つ亀に似た魔物を、その甲羅ごと剣で両断してしまうエデル。


「めちゃくちゃ動きが速い魔物は、攻撃してくるときに捕まえるといいよ。ほら、こんな感じで。あとは翅をもいじゃえばこっちのもんだね」


 猛スピードで動き回るトンボの魔物の翅を、突進を躱しながら掴み、ブチブチと引き千切ってしまうエデル。


「時間経過とともに増殖するタイプの魔物は、核となる魔物がいるから、それを見つけ出して倒すのもいいんだけど、広範囲攻撃でまとめて殲滅しちゃうのが手っ取り早いね」


 無限増殖する蟻の魔物を、部屋の中心に出現させた黒い塊へと吸い寄せ、ぐしゃぐしゃと潰していくエデル。


「姿を消す魔物も同じだね。この手の魔物は大抵、耐久力が低いから広範囲攻撃で一発だよ。まぁ、この程度なら位置を特定するのも難しくないけどね」


 突然、エデルが何もない空間を殴りつけたかと思うと、頭部を失った黒豹の魔物がどさりと地面に倒れ込んだ。


「ほら、簡単でしょ?」

「「「(……ダメだ何の参考にもならない)」」」


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― 新着の感想 ―
[一言] 必要条件が十分条件になるところが面白い… テスト受ければ合格するよ~みたいなw サンドイッチマンの「ちょっと何言ってるか分からない」って声が聴こえてきそうだ。
[一言] 爺ちゃんただの脳筋だったか レベルを上げて物理で殴ればいいクラス
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