表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

38/124

第38話 人数制限があるみたいだね

「うわっ、本当に魔物だったぞ!?」

「聞いたことがある。高難度のダンジョンには、宝箱に化けた魔物が出現するって……それがまさかこんなところに……」

「ていうか、今、何が起こったんだ? 俺には勝手に壁に向かって飛んでいったように見えたが……」

「はははっ、随分と間抜けな魔物だな!」


 エデルがミミックを倒した瞬間は、ほとんどの部員には見えていなかったらしい。


「(ま、魔物を裏拳で殴り飛ばしたように見えたのだが……? そもそも、宝箱に化けるような知能を持つ魔物が、自分から壁にぶつかって自滅するはずがない。先ほどのトラップのことといい、この一年生、実は途轍もない力を持っているのでは……)」


 そんな中、微かに視認できていたセレナは、エデルの秘めた実力に気づき始めていた。


「だけど、せっかく隠し通路を見つけたのに、ハズレなんてついてないっすね」


 宝箱が偽物だと知って、ガイザーが残念そうに言う。


「ううん、そんなことないよ。今のミミックは、むしろそう思わせるための仕掛けだね」

「? どういうことっすか?」

「こういうことだよ」


 首を傾げるガイザーを余所に、エデルは何もないはずの壁へと歩いていく。

 そのままぶつかってしまう、と思われたときだった。


 するり。


「っ!? あ、兄貴が壁の中に消えてしまったっす!?」


 なんと壁に激突することなく、そのまますり抜けてしまったのだ。


「兄貴! 大丈夫っすか!? って!?」


 慌てて壁に触れようとしたガイザーの腕が、そのまま中にずぼりと埋まってしまう。


「これは……」

「見ての通り、通り抜けができる壁だよ」


 壁を通過してきたガイザーを、エデルが出迎える。


「もちろん物質透過の魔法は使ってないよ。ダンジョンの壁には大抵使えないからね」

「物質透過……?」


 不思議そうな顔をするガイザーに遅れて、セレナが壁を抜けてくる。


「壁にこんな仕掛けがあったとは……」

「びっくりです……」


 さらにリンもそれに続いて姿を見せた。


「なんか面白いっすね! それっ!」


 興奮したガイザーが、再び壁を抜けようと勢いよく突っ込んでいく。


「あ、戻るのは無理だよ」

「へ?」


 エデルの注意は遅かった。

 がんっ、とそのまま壁に思い切り激突し、ガイザーが目を回してその場にひっくり返る。


「この壁は一方通行なんだ」

「なに? ということは、先に進むしかないということか……? くっ、予定が随分と狂ってしまうな……」


 顔を顰めるセレナだが、事態はもっと深刻だった。


「……? おかしいですね……? 誰も続いて来ないのですが……」


 リンが小さな声で指摘する。


「確かに変だな? 少なくとも同じチームの二人はすぐに追ってくるはずなのだが……」


 セレンが率いるこの六人組チームには、あと二人のメンバーがいた。

 基本的にチームで一体となって動くため、四人が壁を通り抜ければそれに続いてくるはずだった。


「どうやら人数制限があるみたいだね」

「人数制限?」

「一度に通れるのが四人までってこと。だから向こうからはこれ以上こっちに来れないんだ」

「な、何だとっ!?」


 エデルの言葉に愕然とするセレナ。


「では一体、どうやって皆と合流するんだっ?」

「それは先に進んでみないと分からないかな」


 エデルは真っ直ぐ伸びている通路を歩き出す。


「な、なぜそんなに冷静なのだ……?」

「魔界のダンジョンじゃ、このくらいの仕掛け、幾らでも経験したからね」


 この手の一方通行の壁が無数に配置されている巨大迷路を、何日も彷徨い続けたこともあったのだ。

 それと比べればこの程度、子供の仕掛けのようなものである。


「その年齢で、どれだけ豊富なダンジョン探索の経験があるというのだ……ん?(今、魔界とか言わなかったか? いや、ただの聞き間違えか……)」


 聞き捨てならない言葉が聞こえたように思えたが、さすがに気のせいだろうと首を振るセレナ。


「(今、魔界って言いましたよね!? どういうことですか!?)」


 一方、リンにははっきりと聞こえていた。


少しでも面白いと思っていただけたら、↓の☆で評価してもらえると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

女神100人3巻
6月14日発売!!!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ