第23話 奴の剣が真っ二つだぜ
「おい、見ろよ! 編入生とガイザーが試合うみたいだぜ!」
「マジか! 見に行こうぜ!」
「可哀想だな、編入生。いきなりガイザーに目を付けられるなんてよ」
エデルとガイザーが戦うと知って、帰りかけていたクラスメイトたちが再び訓練場へと戻ってきた。
興奮した様子で野次馬ばりに集まる彼らが見たのは、両者の獲物の圧倒的な差だ。
「おいおい、ガイザーの剣、どう見てもミスリル製じゃねぇか! 相手が支給品の剣なのに容赦ねぇな!」
「あれじゃ逆にハンデを与えてるようなものじゃないの! せめて武器ぐらい揃えて戦わないと!」
「いや、それがあいつのやり口だよ。ああやって格下を完膚なきまでに叩き潰して、心を折るんだ。それで剣技部の新人が何人もやめたらしいぜ」
そんな外野の心配をよそに、エデルはまったく動じていなかった。
「(何でみんなそんなに騒いでるんだろ? ミスリルと鋼くらいじゃ大した差じゃないよね。魔剣とか聖剣を持ってきたらまた話は別だろうけど)」
その程度は使い手の実力で容易く覆すことが可能だというのが、彼の見解である。
ちなみに彼が想定している魔剣というのは、一振りで軽く山ごと吹き飛ばすようなレベルのものだ。
「(まずは一撃でこいつの剣を折ってやる! そして呆然としたところで、喉を蹴り上げて潰す! そしたら後はお楽しみの半殺しタイムだ! 二度とオレに逆らう気が起きねぇようにしてやらァ!)」
そうした相手の内心など知らず、ガイザーは威勢よくエデルに斬りかかっていく。
「(つーか、ド田舎の平民ごときを、貴族であるこのオレが相手してやるんだから、むしろ泣いて感謝してもらいたいもんだぜっ!)」
彼は最初の一撃で勝負が決まると確信していた。
なにせ彼の手には、剣の名門である実家から持ってきたミスリル製の名剣が握られているのである。
彼の剣の腕も加味すれば、支給された量産品の鋼の剣など、もはや木剣と大差ない。
「喰らえぇぇぇっ!」
ガイザーが勢いよく斬撃を繰り出す。
それを馬鹿正直に支給品の剣で受けようとするエデルに、ガイザーは自らの勝利を疑うことはなかった。
パキイイイインッ!
「(ほら見ろ! オレの予想通りだ! 奴の剣が真っ二つだぜっ!)」
クルクルと折れた刀身が宙を舞う。
すかさず彼は足を振り上げ、エデルの喉首を狙った。
彼が修めた剣技の中には、こうした打撃技も含まれているのだ。
剣が折れて無防備になったエデルの喉へ、ガイザーの足の爪先が突き刺さる――
ガンッ!!
しかし鈍い音と共に防がれてしまった。
彼の爪先を止めていたのは、鋼でできた刀身だ。
「……え?」
一瞬、何が起こったのか、ガイザーには理解できなかった。
というのもエデルが手にし、ガイザーの蹴りを凌いだその剣は、元の姿そのままの刀身を有していたのである。
確かに先ほど折ったはず。
いつの間に新しい剣と取り換えたのだろうか……いや、どう考えてもそんな時間はなかったはずだ。
と、そこでようやく彼は気づいた。
自身が手にする剣の刀身、その根元付近から先が綺麗さっぱり無くなっていることに。
「ば、馬鹿な……」
折れたのはガイザーの剣の方だった。
よくよく見てみれば、先ほど宙を舞い、地面へと突き刺さった刀身が、明らかに鋼とは違う、ミスリルの輝きを放っている。
「「「おおおおおおおおおおおおおっ!?」」」
野次馬たちが湧いた。
「マジかよ!? あの編入生、量産品の剣でガイザーの剣を折りやがった!」
「てっきりあっちの剣が折れると思ってたのによ!」
「し、信じられないわ!」
わなわなと唇を震わせ、ガイザーはふらふらと後ずさりする。
「う、嘘だろ……? 親父から貰った、大事な剣が……」
「(うーん、それなりの実力者だって話だったから、もうちょっとやれるかと思ってたんだけど……。やっぱりこっちから攻撃しなくてよかったなぁ)」
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