表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あやし百話  作者: くろたえ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

99/101

98話 お社への願を解かなかった人

前の97話で祖母のお兄様の対応が早かったのは、近所での異常死があったと書いたが、その話をここで書こう。

 祖母の兄さまの異常に早く対応できたのは、異常な前例があったからだ。


 前の年に、同じ村に住む遠い親戚の30代の男が死んだ。

健康だが仕事はせずに、毎日ぶらぶらとしていたらしい。

両親が他界してからは、結婚もせずにずっと一人でいたという。


昔の時代なので、結婚をしなければ一人前の男ではないと、周囲の人間が見合いをさせるも、二人きりになった瞬間に、暴行をするような男だった。

なので、すぐに誰も見合いの話もなくなり、女も近づけないように村中で男を監視していた。


時折、街に出ては、翌日に随分殴られた様子で帰ってきていたので、女を買うが、暴力沙汰を起こして店の人間に殴られたのではないか。というのが村での見解だった。


とにかく粗暴な男で、八つ当たりで店の軒を壊したり、祭りの時も女を物陰に引きずり込もうとして、止める男達と殴り合いになったりと、暴力沙汰が多かった。


ある日から突然に、何を食べても吐き続けて、吐き続けて、しまいには血を吐き続けて、

異変が起きてから5日も経たずにミイラのようになり死んだ。


検死では、毒や中毒になるもの、アレルギー反応も出なかった。


余りの異常さに警察だの何だのが出てきて調べたら、自宅から多額の金と百枚単位の沢山の御札が出てきた。

金は今の価値だと10億近くの金額だと思う。

男の一人住まいの平屋に、金とお札が雑然と山となっていたそうだ。


金はその男の持ち物の山が破格の高値で売れたばかりだったと。

男は先祖代々持っていた田んぼを売った金で幾つもの安い山を買い、それがことごとく数年後には開発予定地になり、何十倍の金に化けたそうだ。


男に金がある噂はあったし、ツケはなくなり身なりも良くなったが、壊した物の弁償やらは頑として払わなかったので、村の人も、そこまで金があるとは思わなかった。

壊した物の中には、小さなお稲荷様の祠もあったそうだ。


男に信心深さは全く感じられなかったが、沢山のお札は、神社仏閣に節操無く願をかけたのではないだろうか。

ということになった。


 確かなことは何も分からないが、とした後で祖母は言い加えた。


「昔は神様はもっと近くて、もっと怖かったのだ。

神様にも人と同じ様にいろいろな性格がある。

仏様には心の拠り所として頼るのはいいだろう。

でも、神様に頼ってはいけない。

なにが障って怒らすか分からないから。

力の強い偏屈な隣人だと考えなさい」



今から考えても、かなり意外な神様の解釈だけど、人の心は一つではないから、彼女の言葉は強くて正しい。


だから、お社に参拝する時は、メンドクサイ怖い爺が目を光らせているつもりでいる。


そんな祖母の結婚式は神前だった。


お社で式をあげている時、光のヒトガタがうろうろして神主が祝詞を詠いだすと、神主の後ろに重なったそうだ。

ソレを聞いて我は、「神様からも祝福されたんだ」と興奮したが、

祖母は

「ここの神様は行動をしないから本当は別のお社が良かったのだよ。

先に祝福を受けちゃうと、他の神様に行き難くなるからね。

もっと分かりやすい守りをくれるお社が他にあったのだ。

断るのはできないから、だったら、どう気に留めてもらえるかで悩んだよ」


と。

祖母のクールな目と非現実的な物を現実として利用しようとする強かさに絶句した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] お参りはいいけど、頼み事は気を付けないと、ってことですね。 物凄い説得力があります……! お祖母さますごいですね!
[一言] >仏様には心の拠り所として頼るのはいいだろう。 >でも、神様に頼ってはいけない。 >なにが障って怒らすか分からないから。 >力の強い偏屈な隣人だと考えなさい これすごい好きです。 後書き…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ