ラストの前の閑話休題 卑しくはないか?それがばれないかが怖い。
母方の実家は400年以上の歴史のある元武家の大地主である。
しかし、我自身にはお金の回らない環境で育った。
周りに躾を教えてくれる人も居なかったので、未だに自分が粗相をしているのではないかと不安になる。
卑しさ、意地汚さが出てはいないか。
育った環境が普通でないのなら、歪みが出ているのではないか、出ていなくても、どんな歪みを腹に抱えているのだろうか。
お腹がすいて身体が冷たくなっていったのを覚えている。
熱が出て熱いのか凍り付くのか、身体が苦しく意識が真っ暗な中に落ちていったこともあった。
怪我をして、釣り針の返しを潰して自分で縫った。
化繊の釣り糸を使わないと、抜糸の際に糸が皮膚の中で膨らみ激痛が伴うのを知っている。
栄養不足で肌がいつもひび割れていた。
靴が合わなくなり、校門に入る時に靴を踵を踏んで履き、いつも裸足だった。
割れた瓶を踏み、数日血が滲み、びっこをひいても誰も何も言わなかかった。
穴は柿の葉で蓋をした。抗菌にはなったが、止血の作用はなかったようだ。
小学生にはいってからも暫くは丸坊主頭だった。
「髪を切る」が「神との縁を切る」となぞらえられていた。
バリカンに髪が挟まるのが痛くて逃げたら、蹴られて踏まれた。
その夜は血のおしっこが出ていた。
いつか自分は死ぬのだろうと思っていた。
それがまだ生きている。
歪みがないわけはないだろう。
私は穏やかだと言われる。優しそうだとも聞く。
本当か?
いつか自分が裏返り、歪みの獣が吠え暴れだすのではないかと怯えている。
裏側の獣がいるのだよ。
私には。




