86話 勝手に肝試し
肝試しには行きたくない。
だいたい、失礼だろう。
しかし、強引に連れていかれることもある
今回のように、勝手に肝試しになったこともあった。
昔、友人宅に遊びに行った。
女3人で夜通し話し笑い、なんとなくテレビを見て、お風呂にも入って。
そしてまた話し。
夜の遅い時間だったが、小腹が空いたのでコンビニに行く事になった。
徒歩10分はかからない距離だった。
3人で出かける。
しばらく歩ていたら
「そーいえば、アソコの家で自殺があって今空き家なんだよね。しかも幽霊が出るって噂なんだ」
へ~などと言いながら見るも、暗く塀や木で隠れて家の感じが分からない。
T字路で真っ直ぐがソノ家。
でもコンビニは曲がる。
買い物をして帰り道。
同じ道を通る。近くまで行ってみようと誰かが言い出した。
二人が先にいくも我は買いそびれたタバコを自販機で買うのを先にした。
多分、コンビニでは我は金を出さなかったのだろう。
その自販機で自分の分を含め3人分を2箱ずつ買った。
少し時間がかかる。
カシャンカシャンと金が落ち、拾い、また入れ・・・としていたら
「ぎゃあ~~~!!!」
友人二人の悲鳴が上がり、見やったらダッシュで駆けて来る。
「どうし・・・」
我の掛ける声を無視して、そのまま後ろを通り過ぎ、走り去る。
タバコを持ったまま立ち尽くす。
置いてきぼりにされました。
まあ、迷う場所ではないので友人の部屋まで行くとドアに鍵がかかっている。
ドアをノックすると中で彼女等の悲鳴があがる。
「私だよ。開けてくれ。」
何度か声をかけてやっと開けてもらえる。
細く扉を開け
「誰も居ない?後ろとか誰も居ない?」
執拗に聞かれ後ろを見るが我1人。
やっと入れてもらえる。
開けてくれた友人は毛布を頭から被っていました。部屋の友人は布団を被ってました。
「大丈夫だった?」
聞かれるが全く分からない。
と、玄関から部屋に入ったとき、ドアを開けた友人が背後の窓を指差しヒ~~っと声にならない悲鳴をあげた。
先に部屋にいた友人も振り返ると悲鳴を上げる。
さっきまで「星が出てるね~」などと言って見ていた腰窓である。
「何が居るんだ?」と聞いても怯えて首を振るばかり。
仕方がないので、窓の鍵を確認してカーテンを閉めTVをつけた。
「大丈夫だよ。入ってこないよ。とりあえず、TVを見よう」
深夜番組を適当に見て、映画を観て・・・
電気を点けたまま、寝た、ような寝てないような。
翌朝、外で朝ごはん。
2人は昨夜の事を話しだした。
あの家の門は壊れていたので少し庭に入ってみた。
暗い一階の大きな窓(リビング?)が気になって覗いたら、家の中に白い男が立っている。
と思った瞬間、男は窓からすり抜けて彼女等を睨みながら近づく。
悲鳴を上げ、逃げ出した後ろから「待て~」と男の声が追いそのまま部屋まで走り続けた。
我を部屋に入れた後、後ろを振り返り窓を見たら男が両手をガラスについて外で睨んでいた。と。
1人は克明に男の姿を見えていたようだが、もう1人は空き家では何も見えなかったが声は聞こえた。
そして、窓にはガラスについた両手しか見えなかったと。
そして、我は何も聞こえなかった見えなかった。
自分に霊感があるのか無いのか判らない。
1人の時に不思議なものを見る事、感じるとこがある。
しかし、複数が見たものなどは、我一人が見えてない事が多々あるのだ。
4人で行って我だけが見えない。
5人で行って我だけが見えない。
もっとも、肝試しは嫌いなので、知らずに連れて行かされたのばかりだ。
今回は、行ったことになるのだろうか?
とりあえず、一人だけ見えなかったのは確かだ。
少しだけ寂しい。




