81話 友人が居たからね ②
彼女の霊感は不思議なもので、家電を壊したりずらしたりは困ったものだが、
時折、彼女の周りには不思議な現象が起きていた。
学生時代、その子と終電を逃した台風の夜。
とりあえず、近くまでは電車で行こうと総武線が終了していたので山手線に乗る。
本来なら飯田橋なのだが、近くても高田馬場までしか行けない。
そこから歩いて帰る。
台風の夜。
今ならウォーキングで軽く歩ける距離だが、その頃は土地勘もなく結構な距離に感じた。
我の家への予定だが、東京に来て一年未満で道もよく知らなかった。
分からないなりに川沿いに歩けば着くだろうと、彼女を従え歩き出した。
バス停などで確認しながら歩く。
川に出て、コレを辿れば遠回りでも間違いは無いだろうと思ったら彼女が言った。
「あ、そっちの道は私達は怖い思いするかも知れないから、コッチがいいって」
我の行こうとしたのは川沿い。
彼女の指すのは別の道。
・・・・その前に誰と話したん?
「んん~ん、風なのかな~?」
彼女が首をかしげるも、我はもっと分からない。
とりあえず、彼女の言う道を歩く。
季節は冬の少し前。深夜の大雨の中、車も少ない中をただ歩いた。
それでもお互いに健脚な方なので楽しく話しながらだったのだが、大きな通りの反対側を歩いている人を見たときに気づいた。
いや、もっと前から不審に思っていた事が確定した。
通りの反対側を人が歩いている。大雨、大風で傘を前に片向け傘に隠れるように歩いている。
片側2車線の道の反対側とコチラ側。
我等の傘は真上に持っている。
風がないから。
会話も普通にできている。
小雨だから。
そして、濡れそぼっているのに寒くない。
電灯の下に来た時、傘を片向け上を見てみた。
良く分からない。
光のあたる中、前を見ると自分達の2m程先に激しい雨の水しぶきが立っている。
我等は温かい空気に包まれて、沢山話し、笑い、ドーパミン垂れ流したか、妙に足取りも軽く夜の暗い街を歩いた。
1時間以上は歩いただろう。なんとか部屋につく頃には本当の雨も上がっていた。
建物の入り口で、傘を閉じようとしたした瞬間、曇天の夜空なのに青い星が瞬いて消えた。
気のせいだったかもしれないが。
部屋に入って、お互いに着替えて人心地。
なぜかあの時聞けなかったことを口に出す。
「歩いている間、温かい空間にいたよね。アレは何?」
「え~、気づいてたんだ?」(そら、そーだろ!)
「風だよ。風の人が温めてくれたの。この入り口まで居てくれたんだよ」
「雲が厚いのに青い星が瞬いたのを見た気がする」
「あ、〇〇ちゃんにも見えたんだ!」(・・・・見た?我が?)
例えば、幽霊を見る、そーゆーことではなくて、なんと言えばいいか?
想像もしない不思議なことを体験したようだ。
・・・自分を信じる?信じられる?内心葛藤。
彼女が付け加える
「風の人はね、○○ちゃんに子供の頃会っているんだって。「優しい子だよ」って教えてくれた」
もう、何に突っ込めばいいのか分からない。
その風との話しは後ほど。
因みに、「怖いかもしれない」と言われた道を、後日、詳しい人に聞くと川沿いで細く長い公園のようになっていて、浮浪者のテントが延々続いている場所だったそう。
「夜中に女の子だけで歩くのは危険だよ」
と言われる。
思ったよりも助けられていたようだ。
彼女と出会う事で、「霊感」とは何ぞや?
と考える機会をもらった。
しかし、結局判らない。
ただ、対象は幽霊だけでないと知る。




