22話 呪いの防波堤
親戚の家をいくつか回ったが、それなりに辛い思いもした。
その中では苦しすぎて、殺しつくしたい家もあった。
何年か前の5月5日の夜に夢を見た。
なんだか考えてしまったが、とりあえずは記録に残そうと思う。
白いもやの中で祖母が着替えを済ませたところだった。
初夏に合う涼やかな着物を着ている。
生前には見たことがない着物である。
と思ったら、祖母ではあるが今の我と同じくらいの年恰好だった。
生前は話しかけるのは禁止されていたが、同じ歳の頃の姿への気安さだろうか思わず声をかけた。
「…どこかへ出かけるのですか?」
「ああ。やっと務めが終わってね、上がれるのさ」
「今までドコにいらしたのです」
「○○のところだよ」
本気でムカつく。
○○とは祖母の長男であり、我の母親の兄であるが、この男もこの男の家族も最悪な人間達だ。
我は祖母が他界してから、10歳からの4年をこの家族の居候として生きた。
いつ死のうと、腹が冷たく腐っていくのを感じたし、いつ殺そうかと、目と頭が沸騰するのを感じ続けた。
コノ男は我が実母に、やっかいになってからも金を取り上げに来た。
その金で海外に、子供を買春旅行をするのだ。
ソノ男も随分前にミンチになって死んだ。
しかし息子二人も最悪で、数年前にやっと断り関係を切れた。
その家族を守っていたのか
今まで。
睨んでいたと思う。
「なぜ」
「お前が恨みで呪い殺さないようにだよ」
若い祖母はニヤリと笑い、軽い足取りで消えた。
関係があるのか不明だが、5月5日の旧暦の日付は我の誕生日である。
夢は夢でしかないが。
最近まで人を殺しかねないほど憎んでいたのかもしれない。
この家は、本当に苦しくて、事件を起こして逃げるしかなかった。
しかし、そのせいで、高校生になってバイトが出来るようになってから金を無心されるようになった。
殺したかった。殺したかった。殺したかった。
本気で殺したかった。
それを、守りたかったのは、あの家族か、壊れそうだった我か。




