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アサシンズ・クアッド~合衆国最凶暗殺者集団、知らない女の子を傷つける『敵』の暗殺を命ぜられて困惑する~  作者: 空戦型
7章 アサシンズ・クアッドの抜錨

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96話 粘る暗殺

 蛇の意匠があるドローン【スネイク】を操作して船内に入り込んだテウメッサとサーペントは、内部の惨状に唸る。


『これは本当に映画だな……』

『宇宙からの侵略生物ものかも』

『段々笑えなくなってきた。可能性のひとつとして考慮しておこう』


 床から壁までにべったりと付着する黄ばんだ液体は一部天井にまで及んでおり、天井からゆっくりと時間をかけてぼとりと床に滴る。一言にクルーズ船と言ってもこの船は最高級だけあってなかなかの広さがあるのに、部屋の一つ一つに至るまで液体の痕跡がある。


 特に収納スペースのある場所は全て例外なく液体の痕跡があり、メンテナンスハッチまでもが隙間から液体を漏らしていた。密閉性の高い場所は一部破損があり、穴をあけたものと思われる。


 サーペントは船のデータを吸い出す為に操縦室に【スネイク】を侵入させる。

 船の操作を補助するコンピュータは主のいなくなった船でずっと指示を待って律儀にモニタを光らせ続けていた。動いているならばとコネクタを見るが、小さな隙間にまで液体が張り付いていてとても使えそうにない。

 もっと別の場所から接続するしかないとメンテナンスハッチを開けて内部を確認する。


『……これは、無理だな』


 ハッチの内部は底に溜まるほどの液体が溜まっており、開けたハッチからだらだらと床に漏れ出すほどだった。液体はコンピュータ部分が収まっているであろう場所から音もなくコード等を伝って落ちている。

 サーペントはそこで、おかしなことに気付く。


『こんなに液体が垂れてるならとっくにコンピュータがイカれている筈のに、まだ動いているな……』


 液体がアスピドケロス由来ならば酸性があるため基盤が腐食する筈だ。

 にも拘わらず動き続けている理由が気になり、外装を【スネイク】の溶断装置で丁寧に剥がす。

 内部まで破壊すれば原因が解らなくなるため構造を計算して慎重に行なう必要がある。

 時間をかけている間にもテウメッサが船内の探索を進める。

 

『外から調べた時点で分かってたけど、生存者はゼロだな。乗客および乗務員全員分の骨がある。体格や歯の治療痕からして今のところ名簿と矛盾はない。気になるのは全員金魚バチの中に落ちてることくらいかな』

『こっちはデータの吸い出し中……』


 物理的に吸い出すのが困難なため、無線通信を通して内部のシステムを誤作動させることでデータは吐き出させた。逆を言えば、それくらいにはコンピュータは正常に作動しているということだ。

 漸く溶断装置が外装を円形に刳り抜く。

 果たして、ライトを中に当てたサーペントの【スネイク】カメラに映し出されたのは画面を埋め尽くすほどの黄色い何かだった。


 ハードや基盤がある筈の空間を埋めるくすんだ黄色は表面にてかりがあり、どろりと穴から漏れ出てくるのを見るにこれまで見かけた液体以上に粘性が高いようだ。これでは内部が確認出来ない。とりあえず未知の液体を採取するためにサンプル採取用のマニュピレータで液体を掬い上げようとしたそのとき――異変は起きた。


 カプセルに収めるために掬い上げられた液体が、重力に逆らってマニュピレータを登り始めた。


『なんだこれは。テウメッサ、操舵室に至急回ってくれないか。妙なものを見つけた』

『ん? ああ、12秒で到着する』


 会話している間にも黄色い液体は登っていく。

 異変はそれだけで終わらなかった。


『サブカメラが見えなくなった? 通信不良、ではない。物理的に塞がれたか?』

『穏やかじゃないな。武装を出すぞ』

『場合によっては【スネイク】を破壊してもらう必要があるかも』


 メインカメラではサブカメラの位置が見えないため、【スネイク】の状態を把握するためにセンサを様々に使うと、動体センサが微かに動くものを捉えていた。なにか、自動で金属に吸着する性質を持った防犯装置――というのは考えづらい。

 様々に推測するが答えが出ないうちにテウメッサの【スネイク】が到着し、その様子が映る。


『わお。なんだこれ。今日はなんだこれのバーゲンセールか?』


 そこには、床に落ちた黄色い液体にほぼ全身を包まれた自らの操作する【スネイク】の姿が映し出されていた。カメラはこれに物理的に塞がれていたようだ。液体はそのままメインカメラまで覆い尽くす。ただの液体ではないのは明白で、もはやサーペントの【スネイク】は動かしても反応しない。

 想定される動作能力を上回る粘性で覆われたことが原因だろう。


『うーん。使い捨てとはいえユニット専用ドローンをこの場に放置はまずい。というか、なんなんだこの液体は? テウメッサ、ミイラ取りがミイラにならないようにね』

『分かってるよ。液体と距離を取る。サーペント、緊急自爆コードは?』

『今回はユニットと離れての仕事だからカスタムが違うんだよなぁ。熱暴走である程度は自壊させられるけど』

『それでいこう』


 最低限の機密保持のための熱暴走コードを入力し、冷却を停止する。

 これで【スネイク】はバッテリーの動力ある限り逃げ場のない熱を発生させ続けて内部が復元不能になるまで破壊されることになる。あれよあれよという間に【スネイク】はショートし、パーツの一部が弾ける。


 その瞬間、弾けた外装に黄色い液体が突如として殺到した。

 意思を持つかのようにずるずると入り込んでいく様に一瞬熱に惹かれる性質があるのかと思った矢先、【スネイク】が想定より早くコントロールを喪失した。

 最低限の証拠隠滅は済んだか、という思いと、何故想定より早かったのか、という二つの思考がサーペントの脳裏を過る。

 念のためにテウメッサの【スネイク】の観測機能を盗み見ようとしたそのとき、異変が起きた。


 機能を停止した筈の【スネイク】が、突如として動き出したのだ。


『あれ? 誤作動かな?』

『いや、違うかもしれない。熱暴走中の筈の内部温度が下がっていく。操作も受け付けない。そうか、そうだったのか。こいつの正体は……テウメッサ、急いで引き上げるんだ! 船の外までは来ない!』

『よく分からんが了解した』


 言うが早いか既にテウメッサは【スネイク】を船外へと向わせる。

 すると、逃走中に床の隙間や壁の隙間から黄色い液体がゆっくりと吹き出してきた。

 まるで【スネイク】を逃すまいとしているかのようだ。


『今まで隙間に隠れていたのか……!』

『これ、触れない方が良いよな!?』

『いや、少し触れてくれ。微量なら問題ない筈だ。あっちが張り付いてくれればサンプル採集の手間が省ける!』

『そう!? なら……!』


 天井から滴る黄色い液体の一部を、テウメッサは【スネイク】を器用に操って一部に触れさせ、そのまま床を跳ねて海の中へと飛び込んだ。

 黄色い液体は船の外まで達しようとしたところで船の中に戻っていく。

 その直後、無人で自動操縦機能も作動していない筈の船はエンジンを回し、移動を開始した。

 まるで、最初から人を食うために船に擬態した生物であったかのように。


『結局ドローン持ち去られちゃったな……サンプルはっと。うわ、張り付いて動いてるぞ。キモイなぁ』

『このまま持ち帰って調べればアスピドケロスの正体が分かる判然とするだろうね』

『怪獣かと思いきやスライムみたいな奴だったな』

『鋭いね、テウメッサ。スライムは架空の生物だけど、生物学的に考えるとある既存の生物と類似しているとされている。そして、その生物は例のバイオラボで研究されていたものだったりするんだ』


 サーペントはこの黄色い何かの正体が何なのか予想がついていた。


『こいつはきっと、人工的に作り出された()()だ。相当な魔改造がされてるだろうけど、ね』


 ――一時間後、その予想は裏付けられることになる。

忙しくしてる間に夏が終わっちゃったよ……

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