小ネタだとか その6
「実は先日誕生日を迎えたんだ」
「「「おめでとー」」」
俺の言葉にパチパチと拍手しながら祝ってくれる部活メンバー達。
瀬川が食べていたスナック菓子のいくつかをティッシュに乗せて渡してくれた。
「プレゼントよぉ」
「ありがとう」
芥川が嬉しそうにジュースを渡してくれた。
「はいプレゼント」
「パイナップルカフェオレって普通に不味そうだな」
ボブが笑顔でアニメ特典のクリアファイルをくれた。
「使い所がないので困ってマシター」
「俺も困るんだが」
陣内が雑誌を一冊渡してくれた。
「読み終わったジョンプやるよ」
「ゴミ押しつけてるだけじゃねェか! しかも先週の奴かよ!」
流石にこれは陣内に投げ返した。
「いや、本題はそこではなくてだな」
「なぁに?」
「俺異世界で三年過ごしてるから肉体的に言うと20歳なんだよな」
部活メンバーは顔を見合わせると声を揃えて言った。
「「「山田さん」」」
「うるさいわ! 大体ボブと瀬川は年上だろうが!」
「私は書類上は16歳デス。……が、まあ三十台とだけ言っておきマース」
「案外あっさり答えたな」
「今までの経歴を逆算すれば何となく分かりマスシー」
「瀬川は」
「16歳よぉ? 文句あるぅ?」
食い気味に返答してきた。
「ございません。すみません」
とりあえず謝っておいた。
「本題に戻ろう。更に天界での1年と木として生活したおよそ50年を足すと精神的には71歳分生きてるわけだ」
「もうお爺ちゃんね」
「体は大事にしなさぁい?」
クスクス笑う女子二人はとりあえず放置する。
「これだけ長生きしてるのに、人生に3度あると言われるモテ期が一度も来ないのは何故だ!?」
芥川が笑いながら答える。
「イルガとサハギンと聖杯で三度じゃない」
「二人とも男な上に最後無機物じゃねェか!」
「じゃあ、イルガとサハギンと受粉?」
「いい加減、イルガとサハギンから離れろ!」
陣内がポンと手を叩く。
「夏休みの狐のお姉さんは?」
「逆ナンって奴デスネー」
「逆ナンじゃなくて神隠しだろうが!」
瀬川が片手を上げて答える。
「博士とぉ校長とぉ無能神!」
「全部ジジイじゃねえェか!」
突っ込み疲れてぜぇぜぇ言っている横でボブが不思議そうに聞いてきた。
「つまり、モテたいって事デスカー?」
「その通りです!」
ズビシとボブを指差す。
欲望丸出しの俺に陣内が呆れた目で言ってくる。
「犬飼みたいにか?」
「アレは何か違うだろ怖いし……」
芥川が腕を組んで悩んでいる。
「でも、山田って交友範囲広いし、過去に会った女の子に再会して……とか」
「欠片もねェな……」
と返答したところで一つ思い辺りが……。
「ああ、そういえば昔田舎の祖母の家に遊びに行った時、良く遊んでた女の子がいたな」
「それっぽいわね」
「ただ、その後祖母に近所にそんな子居ないって言われてな……」
「単なる恐怖体験じゃない!」
ふと横を見ると瀬川が耳を抑えて震えている。
「瀬川って怖い話苦手なのか? 悪霊とかバシバシ倒してるのに」
「怖い話とぉ、実体は全然違うでしょぅ!」
意外な弱点を発見してしまった。
日頃の恨みだ! いじり倒してやる!
「実はだ」
ドゴッと音がして俺の体がくの字に曲がった。
呼吸ができねぇ……。
飛び込みすら見えないとは……。
そのまま膝を着く俺。
「そんなんだからぁ、モテないのよぅ?」
フンッと鼻息を鳴らしながら瀬川が見下ろしてくる。
「べ、勉強に……なり……ました……」
「ちなみに、ボブの好感度は膝枕二回で現在2ポイントデース」
「い、いらねぇ……」
その流れに瀬川がニヤリと笑った。
「そんなに恋人が欲しいならぁ、紹介してあげるわよぉ?」
「猫田はいらねぇからな!」
「あらぁ? 何で分かったのぉ?」
瀬川が不思議そうな顔をしている。
さすがに分かるわ!
おずおずと芥川が瀬川に問いかける。
「で、でも生徒会ハーレムエンドに山田は……」
「愛? 部長がこれだけモテたいって言ってるのよぉ? 協力してあげなきゃ駄目でしょう?」
「そ、そうよね……お世話になってるもんね……」
「おい、止めろ! 何か渋々了承された上に腐った道を歩ませようとするな! どんな嫌がらせだチクショウ!」
事の発端は自分だった事を思い出し、これからは余計な事は言うまいと心に誓ったのだった。




