小ネタだとか その2
「そういえば山田ぁ? 貴方異世界転生した事あるのぉ?」
「この間も言ったが、あるぞ」
瀬川の質問に即答する俺。
「つまり一回死んで、この世界来たって事なのか?」
陣内の言葉に首を振る。
「いや、中学の時だったかな? 目が覚めたら異世界に居た」
「それ、こないだも聞いたヨー」
ボブが溜息を吐きながら言う。
「いや、待ってくれ! 異世界召喚は、俺や世良の様に今の姿のままで異世界に飛ばされるんだ。異世界転生は俺の身体じゃない状態で異世界に転移されるんだ!」
「ふーん、じゃあ、こないだみたいな話にはならない訳ね?」
芥川が、また珍妙なジュースを飲みながら聞いてくる。
バナナシェイクカボスウーロン茶ってなんだ?
「そうなんだけど、そのジュース美味しい?」
「不味いわ!」
笑顔で答える芥川。もう趣味なんだろうなアレ。
「そんで、山田は何に転生したんだよ?」
「最初は全く分からなかったんだよなぁ」
陣内の言葉に、悩みながら答える。
「流行のモンスター系なのかしらぁ?」
「そうも思ったが動けなかった」
「動けない? 封印されてたとか?」
「意識はあったんだよネー?」
矢継ぎ早に質問されるのにも飽きて、答えを言う。
「俺は気付いたら苗木だった」
部活メンバー全員が言葉を失っていた。
「意識はあるんだよ。でも、別に体が動かせたりするわけじゃない。ただ、自分と言う木の横に立って見守る存在になってた」
「ある意味悪霊よね?」
「正直否定はできん」
そのまま、すくすくと俺の身体は育って行った。
芽を出した後は早かったんじゃないかと思う。
地面に根を張り、幹を伸ばし、葉を生やしていく。
「それで、なんか動いたりできるように……」
「なるわけねえじゃん。木だもん」
芥川の質問に即効で答える俺。
「やがて、長き時が流れ、俺は大きな木となり、花を咲かせ、実を付け、種をまいて過ごしていたわけだ」
「どうやって、この世界に戻ったんですカー?」
「何か木こりみたいなドワーフっぽいのが来て切り倒された」
全員が沈黙に包まれる中、瀬川が半笑いで聞いてくる
「ねぇ? 山田ぁ? 私と最初に会った時、『童貞じゃないから血を吸っても美味しくないぞ!』って言ってたのは……」
俺は力の限り、机を叩いて反論した。
「おしべとめしべが受粉したら、もうそれは童貞じゃないだろう!!!」
芥川がいつもの様にプッスプッス笑いながら続ける。
「でも、処女でもないわよね?」
ボブが腹を抱えて笑う。
「というか、子だくさんネ!」
瀬川が満面の笑みで俺を指差す。
「良かったわねえ……非処女で誰とも分からない子を宿して経産婦の淫乱男子高校生なんて、世界中探しても山田だけよぉ?」
「ちょっと待て! 分かった! 童貞なのは認めるから、その称号は止めてくれ!」
こんな時に限って、陣内が感慨深そうに頷く。
「どこの世界かは知らないが、山田の散らした花がやがて実となり種となり、世界を豊かにしているわけだなあ」
「何かちょっといい話風に纏めてんじゃねえよ!」
俺は芥川の持っていたバナナシェイクカボスウーロン茶を陣内に投げつけた。




