表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【電子書籍化】恋の予言によると騎士団長様とモフモフ好きなギルド受付嬢は最高の相性らしいです。  作者: 氷雨そら
電子書籍化記念 後日談

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/67

赤い狼と魔法薬 2



「思うがまま……か」


 ジャン・リドニックは、基本的には思うがままに行動する。

 それでも、レイの婚約者になったエレナの、自称護衛騎士になってからは、騎士としての品性だって大切にしているつもりだ。


 受付嬢を続けている、しっかり者のフィルに、いつも口を酸っぱく注意されていることを差し引いても。


 ふと、フィルの怒った顔や、悲しげな顔、笑顔がジャンの思考を埋め尽くす。

 思うがままに行動すると言うことは、たいていフィルに悲しい顔をさせることではないだろうか。


「……でも」


 現れた予言師は、ジャンにどちらにしてもトラブルが起こると言った。

 思うがままに行動した方がいいとも。


 背中に背負っていたリュックは、フィルが、狼姿でもアイテムを使うことができるように作ってくれた。

 人間姿の時には、ウエストポーチのように使うことができる一見ただの茶色い鞄……。


 しかし、通常狼になったときは、服も、装備もすべてどこかに消えてしまう。

 それが当たり前だったから、今まで不思議にも思わなかったが、この鞄だけはいつでも手元に残る。

 不思議に思ってフィルに尋ねてみたところ、魔術師ギルドの最高機密を漏洩することになるから、原理は教えられないと返答があった。


 ――――最高機密を、俺なんかのために、使っていいものなのか?


 フィルの隠しきれない愛情を感じて、狼姿のまま口元を緩めたジャンは、一つ頷いて、鞄を咥えると逆さまにする。

 体力と魔力の回復薬。そして、小瓶に入った燃えるマグマのように見える液体。


 以前のジャンであれば、迷うことなく使っていただろう魔法薬。

 それは、魔術師ギルドの上級魔術師兄妹、ピットとペティが、半年かけて作り上げたという。


 次の瞬間、いつもの小高い丘の上にいた赤みを帯びた薄茶色の狼は、同じ色合いの騎士に姿を変えていた。

 どちらかといえば、小柄な騎士は、少しの力不足を補うため、魔法剣士としての戦い方を好む。

 実は、不死鳥との戦い後に起こった事件以来、ジャンの魔力は不安定になっていた。


 それは、限界まで魔力を使ったせいなのか。

 夜になると魔力を吸い取ってしまう存在である、新たな上司であるローグウェイ。

 どうにも彼の、捨て身な行動が放っておけずに、断られるのも気にせずに、共闘しているせいなのか。


「どちらにしても、このままでは、予言師殿が告げていたトラブルが発生しても、参戦できない……。フィル殿にもしも何かあったとき、本気を出せないなんて……ダメだ」


 それだけつぶやくと口の端をあげ、消しきれないフィルの顔を脳裏に描きながらも、ジャンは赤い魔法薬を一息にあおったのだった。


 

最後までご覧いただきありがとうございます。『☆☆☆☆☆』からの評価やブクマいただけるとうれしいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ