冒険55km
泥人形に投げ飛ばされて少々時間が経った後何とか立ち上がるまでに精神が回復した俺は取り敢えず今後の行動について考えるため比較的安全な木の上に登っていた。
まず先に行うことは現在位置の把握である。
木の天辺まで登って確認したところ岩山からそこまで離れていない地点だった様だ。
それでもkm単位で離れている場所であり、落下ダメージが0だったとはいえよくもまあ生き残ることができたと感心する。
これも新調した防具のおかげだなと、製作者の2人に感謝を捧げておくことにしよう。
何れ直接会って御礼を言うのも忘れないようにしないとな。
因みにこちら側から見える岩山は比較的緩やかな坂が多く、俺が登ってきたように崖を無理やり登るような事はしなくても良いようだった。
畜生め!
なんで気がつかなかったんだ俺は!
そうしたらあんなに苦労する事もなかったのに。
まぁいい、話を戻そう。
現在地点は把握できたので次はHPの回復について考えることにしよう。
一応降りてすぐに自作のクソまずい傷薬を飲んである程度はHPを回復できたのだが未だにワンパンで沈みかねないHPしかないのだ。
まぁ、いつもの事だが。
それでもこのHPはかすり傷程度でも死に戻りかねないので最低でもかすり傷程度では死なない程度に回復させなければならない。
そうと決まれば考えられる方法は、HPが回復するまで此処で待機するか現在持ち合わせているアイテムを利用して回復させるかの2択だな。
自然回復でも問題はないのだが、此処は<調薬>スキルの為にも薬草系のアイテムを使用して効能を調べるついでにHPの回復を図った方がいいだろう。
その方が効率がいいし。
それでは第1回大野草試食大会を開催します!
目的はHPを回復させる効果を持つ野草を発見することです。
それでは今回試食する野草はこちら!
エントリーナンバー1番<ニガヨモギ>。
言わずと知れた傷薬の材料にもなる野草で大体の採取ポイントで気軽に取れる事から誰もが最初はお世話になる野草でもあります。既に傷薬を作製しているので確実に目的の効果を持っているでしょう。
エントリーナンバー2番<ヤロー>
説明文にもあるように西洋では昔からよく効く薬草として知られていた野草です。生命力も強く何処にでも育ち根から分泌される成分には周りの植物を病気等から守るなどかなり有用です。別名から目的の効果を期待できる野草であります。
エントリーナンバー3番<ダンデライオン>
言わずと知れたタンポポですが実は乾燥させたものが「蒲公英」という漢方の材料になっています。さらには乾燥させた根を焙煎すれば珈琲の代用品となり、葉は食用でお浸しやサラダとして美味しくいただけます。こちらは目的の効果とは少し違ったものが発現しそうであります。
エントリーナンバー4番<コモンバターバー>
西洋では2000年も昔から利用されてきたよく効く薬草の一つです。薬効自体は科学的にも証明されているため調薬次第では良い薬になると思われますがどちらかと言えば病気に効く効能が多いため今回の目的には繋がらないかも?
エントリーナンバー番外<殺人蜜蜂の蜂蜜>
栄養豊富、滋養強壮、そして甘味、その全てが揃っているのが蜂蜜です。ただし今回は大野草試食大会なので残念ながら番外とさせていただきます。
さあ、メンバーが揃いましたので早速試食大会を開催しましょう。
まずはエントリーナンバー1番の<ニガヨモギ>から行ってみましょう。
インベントリから取り出した一本の<ニガヨモギ>から葉を千切り試食する。
口の中に広がったのはなんとも言えない苦味とその奥にひっそりと感じるヨモギの豊かな風味であった。
噛めば噛むほど多くの苦味が出てくるため最終的には舌が痺れるほどの苦味の塊となる。
苦味を我慢してしっかりと飲み込んだ後<ニガヨモギ>の説明文を読む。
<ニガヨモギ>
重量0、レア度1、品質D+
効能:「HP回復速度上昇微」「」「」「」
かなり苦いヨモギ。だが、苦味に薬の効能がある。
取り敢えず効能が一つだけわかった。
確か効能は確率で判明するはずだから全部出るまで食べ続けないといけないな。
俺は意を決して2枚目、3枚目の<ニガヨモギ>を食べ続ける。
願うはなるべく早く全ての効能が出て欲しいものだ。
<ニガヨモギ>
重量0、レア度1、品質D+
効能:「HP回復速度上昇微」「止血(塗布時)」「整腸」「麻痺微小」
かなり苦いヨモギ。だが、苦味に薬の効能がある。
判明した効果はこんな感じだ。
全ての効果がわかるまでそれなりの枚数の<ニガヨモギ>を食すことになってしまった。
塗布時の効果も食べてわかるんだな。
さて次にエントリーナンバー2番<ヤロー>!
張り切っていきましょう。
では早速一口。
まず鼻を抜けたのは少し甘みのあるスパイシーな独特で何処と無く胡椒に似た感じの香りだった。
次に口の中に広がったのはハーブのような爽やかな辛味では無く香辛料のようなピリッとした辛味で、肉との相性がそれなりに良さそうな感じである。
そして最後に広がったのがまるで薬のような苦味だった。
<ニガヨモギ>程ではないがそれなりに苦い。
でもこれ調べてみるとハーブティーにあるんだよな。
これ単体だと飲めない人もいそうだ。
爽やか系なハーブと合わせてアクセントにするのがいいのか?
<ヤロー>
重量1、品質D+、レア度1
効能:「止血」「HP回復速度上昇微」「SP回復速度上昇微」「眩暈」
キク科の多年草。古くからハーブとして使われ、若葉には軽やかな風味が、大きくなると胡椒のような風味が特徴。別名「兵士の傷薬」
これはあれだな、眩暈さえなければこれ食ってるだけでなんとかなりそうな勢いの効能だな。
初心者救済用か何かか?
まぁいい、次だ次。
エントリーナンバー3番<ダンデライオン>。
なんと言うかそこら中の道端に生えているイメージがあるせいかちょっと食すのを戸惑うが意を決していっちゃいましょう!
と言うわけで一口。
おおぅ、青臭さと苦味がそこはかとないハーモニーを醸し出している。
あれだな雑草の味だな。
誰だよタンポポが生食できるって言ったやつ。
この味は生食に向かないと思うぞ俺は。
<ダンテライオン>
重量1、品質D+、レア度1
効能:「SP回復速度上昇微」「整腸」「対風邪」「朦朧」
キク科の多年草。古くから食用に供されているが、薬や染料としても使われる。
HPの回復効果は無いようだがSPの回復はできるようだ。
でも生食だけは勘弁な。
後から知ったのだがタンポポの生食に適しているのは花が咲く前の若葉なのだそうだ。
その他の葉は湯掻けば苦味が緩和されて食べやすくなるのだとか。
さぁ、この大会最後の野草であるエントリーナンバー4番<コモンバターバー>。
和名はセイヨウフキと言い食べられない味ではなさそうな名前だ。
これ以上地獄を見たく無いのでどうか食べられる味であって欲しいものだ。
では一口。
少し強めの苦味の中に豊かな旨味がフワッと広がる。
なんとなくだが蕗の薹の苦味を少し強めにした感じだ。
天婦羅にしたら旨そうだ。
<コモンバターバー>
重量1、品質D+、レア度1
効能:「対風邪」「整腸」「抗菌」「毒軽微」
キク科の多年草。古くから薬として使われてきた。気温の高い夏場等はこの植物の葉でバターを包んでいた。
おいちょっと待て!
こいつ毒持ちかよ!
取り敢えず今の所毒状態にはなってないようだがこいつは食べるのを控えないとな。
今の所解毒剤に当たる薬草を見つけてないからな。
味は良かったけどまさかのパターンだよ。
さて、最後になったがエントリーナンバー番外の蜂蜜でも食べようかな。
さっきから色々と食べたせいで口の中が酷い事になってるし口直しにちょうどいいだろう。
早速食べようとインベントリから取り出すと蜂蜜は何か得体の知れない膜のようなものに包まれていた。
まぁ、蜂蜜がそのままの形で出てきてもらっても困るだけだし、ありがたいといえばありがたいんだがいかんせん見た目がアレすぎて少々食欲が失せる。
取り合えず食べることには変わりないので食べようと思うのだが、これ膜を下手に切ると丸々一個食べないといけないのだろうか。
ずっしりとした重みを感じるほどの量があるのでちょっと全部食べるのは遠慮したいのだが。
でもどうすることも出来ないのでクリスでなるべく小さな穴を開けて食べることにする。
クリスの先端で小さな穴を開けると琥珀色をした粘度の高い液体がトロッと出てきた。
零してはもったいないので慌ててその琥珀色の液体をぺろりとなめ取る。
口の中に甘い蜂蜜の味が広がる。
とても濃厚でコクのある深い味わいなのにまったくしつこくなく上品な甘さで、これまで散々な目にあってきた俺の舌を優しく癒してくれる。
これならばたとえインベントリに収まらなくても食べきれないということは無いだろう。
<殺人蜜蜂の蜂蜜>
重量1、レア度3、品質C-
効能:「SP回復速度上昇小」「沈静」「鎮痛」「中毒軽微」
殺人蜜蜂が集めた蜂蜜。蜂にとって重要なエネルギー源。栄養豊富なほかに貴重な甘味である。
今度は中毒かよ!
確かに中毒性のある味だったけど状態異常にする必要ないだろう。
取り敢えずHPもいい感じに回復したし拠点に戻るか。
ネーム〈銀狐〉Lv.13
種族 〈エルフ〉
ジョブ〈弓使い Lv.16〉〈労働者 Lv.7〉
ステータス
HP :37/80
MP :10/74
SP :60/60
STR:18
SIZ:12
DEX:42
VIT:5
INT:13
AGI:26
MND:13
LUK:10
LP :0
スキル
〈弓術初級 Lv.3〉〈鷹の目 Lv.11〉〈木工 Lv.4〉〈簡易調理Lv.6〉〈視野探索 Lv.10〉〈隠密行動初級 Lv.1〉〈暗殺見習い Lv.19〉〈簡易マッピング Lv.7〉〈跳躍 Lv.9〉〈嵐属性初級 Lv.3〉〈回避 Lv.5〉〈調薬見習い Lv.1〉
武器
メイン:〈ノーマーディッシュ・ボウゲン>
├クリバー:〈イェイガー・カルヒャー〉
└アロー:〈石の矢×0〉〈黒熊の矢×1〉〈緻密な石の矢 ×5〉
〈緻密な石の矢(劣化2) ×0〉
サブ1:〈ツインクロスボウ Mk-Ⅱ〉
├クリバー:〈ボルトストッカー〉
└ボルト:〈鉄のボルト×28〉<石のボルト×50>
サブ2:〈クリス・オブ・ホーク〉
サブ3:〈鉄のダガー〉
その他:〈初心者のナイフ〉〈木の銛〉
防具
頭:〈皮の帽子〉
体:〈イェイガー・レーダーブルストン〉
腕:〈イェイガー・レーダーアルムシュッツ〉
手:〈鹿の騎射がけ〉
足:〈イェイガー・レーダーホーゼ〉
靴:〈イェイガー・レーダーシュティーフェル〉
装飾品
無し
その他
〈初心者の鍋〉〈初心者の鑢〉〈石の斧〉 〈鉄の鋸〉 〈鉄のつるはし〉 〈鉄の鑿〉 〈鉄の斧〉 〈粗悪な松明 ×3〉〈初心者の調薬セット〉〈初級グリーンポーション ×2〉〈初級ブルーポーション〉




